ヤマハの小型EVはホンダのバッテリーで動く!?【東京オートサロン2024×バイクのコラム】

■初出展の東京オートサロンで電動コンセプトカーをお披露目

開発中の、小型低速EVの汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」に基づくデザインスタディモデル「コンセプト580」
開発中の、小型低速EV汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」に基づくデザインスタディモデル「コンセプト580」

意外かもしれませんが、ヤマハ発動機は東京オートサロン2024が初出展でした。そのせいでしょうか、ブーステーマは「小さなEVを、社会を変える力に。」というマジメなもの。

また、ヤマハ発動機といえばバイクのイメージが強いわけですが、東京オートサロンという四輪イベントに合わせたのか、小型低速EVの汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」を使った共創パートナーによるコンセプトカー展示がメインとなっていました。

「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」とは、ヤマハ発動機による電動モビリティの汎用プラットフォームのことです。

基本構成としては、ヤマハ発動機による電動パワートレインに、交換式バッテリー(Honda Mobile Power Pack e:)を組み合わせることを前提に設計されているのが特徴といえます。

そうです、ヤマハ発動機の電動プラットフォームは、ホンダの交換式バッテリーを使うのです。

●共通フォーマットにしてこそ交換式バッテリーのメリットは活きる

「コンセプト580」は不整地走行も考慮した2人乗りの小型EV。交換式バッテリー2個を使う想定。
「コンセプト580」は不整地走行も考慮した2人乗りの小型EV。交換式バッテリー2個を使う想定

ヤマハ発動機がホンダの交換式バッテリーを使うこと自体は驚く話ではありません。すでに、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキといった国内4大二輪メーカーは、共通規格の交換式バッテリーを進めることで合意し、コンソーシアムを組んでいます。

基本的にはホンダの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」が先行していますし、そのバッテリーを使った交換ステーションインフラの整備も始まっていますから、ホンダ主導で共通規格化は進んでいくのだろうという風に見ている人が多かったのは事実です。

とはいえ、4社から交換式バッテリーを使うモビリティが出てくる段では、ホンダの名を冠したバッテリーをそのまま他社を使うことにはならないのでは?という見方もありました。

国内4大二輪メーカーは交換式バッテリーのコンソーシアムを組んでいる。今回の展示を見る限り、ホンダ「モバイルパワーパックe:」をそのまま使うようだ。
国内4大二輪メーカーは交換式バッテリーのコンソーシアムを組んでいる。今回の展示を見る限り、ホンダ「モバイルパワーパックe:」をそのまま使うようだ

今回、東京オートサロン2024にてヤマハ発動機が、Honda Mobile Power Pack e:というロゴの入った充電ステーションやバッテリー単体を展示したことで、国内バイクメーカーはホンダの名を冠したまま共通規格として使うことを決めたであろうことが予想されるというわけです。

サラリと展示されていたので、最終決定事項ではないのかもしれませんが、ホンダが交換式バッテリーのサプライヤー的ポジションにつくというのは、二輪の電動化に向けても無視できないファクターといえそうです。

4社の電動二輪の共通仕様として、Honda Mobile Power Pack e:をそのまま使うというのであれば、現在進んでいる交換式バッテリーインフラは、4社の電動二輪に乗るユーザーなら誰でも利用できることが期待されます。ユーザーにとっては利便性が確保される、うれしいニュースといえるかもしれません。

●ヤマハ発動機もマルチパスウェイ。水素エンジンの研究も進む

ジャパンモビリティショー2023にも出展したROV(四輪バギー)「YXZ1000R」は水素エンジン仕様。
ジャパンモビリティショー2023にも出展したROV(四輪バギー)「YXZ1000R」は水素エンジン仕様

もちろん、今回の東京オートサロン2024でヤマハ発動機が展示した電動コンセプトカーに二輪はなく、電動プラットフォームでHonda Mobile Power Pack e:を使うことが、ヤマハ発動機の国内ラインナップ全体に共通する話と断言はできません。

ジャパンモビリティショー2023につづいて、水素エンジンを搭載した四輪バギーを展示していたように、ヤマハ発動機のゼロエミッション化・カーボンニュートラル化は電動化一本に絞っているわけでもありません。

再生可能エネルギーによる発電は、需要に合わせることが難しく、場合によっては余ってしまうこともあります。

水素エンジンを搭載するコンセプトという点だけでなく、モビリティとしての佇まいも魅力あふれる。
水素エンジンを搭載するコンセプトという点だけでなく、モビリティとしての佇まいも魅力あふれる

そうした電力を、電気のまま溜めておくためには多量のバッテリーを用意しなくてはいけないので、水を電気分解していったん「水素にしてエネルギーを保存しておく」というのは、コストや効率面から優位性があるという見方もできます。

モビリティだけに限定して再生可能エネルギーの利用を単純化すると「太陽光発電・風力発電→交換式バッテリーを充電→あまった電力は水を電気分解して水素にして保存」といったフローになります。

こうして生まれた水素を、小型モビリティを走らせるために利用するテクノロジーとして、水素エンジンはコストバランスに優れたソリューションといえます。

カーボンニュートラルに向けた次世代パワーユニット戦略として、ヤマハ発動機は電動化一本ではなく、マルチパスウェイ(全方位)戦略をとっていることを、東京オートサロン2024であらためてアピールしたともいえそうです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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