超人気のスーパーカブシリーズに「スーパーカブDX(デラックス)」を追加。今なお累計生産・世界記録驀進中【今日は何の日?1月6日】

■スーパーカブシリーズにより豪華な仕様のDXグレード追加

1971年にデビューしたスーパーカブ デラックス (C50DX)
1971年にデビューしたスーパーカブ デラックス (C50DX)

1971(昭和46)年1月6日、ホンダはすでに世界145ヶ国に700万台を超える販売を記録(当時)していたスーパーカブシリーズに「スーパーカブDX」を追加しました。

スーパーカブの仕様をいっそう豪華にするとともに、さらに扱いやすい、乗って疲れない設計が特徴です。


●スーパーカブの源流はカブF

初代スーパーカブが誕生したのは1958年ですが、その源流となる「カブF」は1952年に誕生しました。

戦後間もない1948年にホンダがまず取り組んだのは、自転車補助用エンジンの製造でしたが、その直後から自社で2輪車の製造に取り組み、1949年に「ドリームD型号」を発売、その後、より扱いやすくして大衆向けに開発していったのが「カブF」でした。

1952年にデビューしたカブF型
1952年にデビューしたカブF型

カブFは、白いガソリンタンクに赤いエンジンカバーという、当時としては斬新なカラーリングが特徴。そのイメージから英語で「ライオンやクマなど猛獣の子ども」を意味する「Cub(カブ)」というペットネームが付けられました。

当時のバイクは、熟成度の低い2ストロークエンジンを股下に搭載していたため、オイルや煤でズボンの裾が汚れるという問題がありました。カブFは、空冷50ccの2ストロークエンジンをリアタイヤ側に移動することでその問題を解決。その結果、汚れない、火傷しない、扱いやすいバイクとして、月産1万台を超えるヒット商品になったのです。

●歴史的大ヒットとなったスーパーカブの誕生

カブF誕生から6年後、1958年にコミューターバイクのスーパーカブ(C100)が誕生。スーパーカブは、エンジンから車体まですべてが革新的でした。

1958年にデビューしたスーパーカブC100
1958年にデビューしたスーパーカブC100

エンジンは、50ccエンジンとしては異例の空冷4ストローク単気筒エンジンで、最高出力は一般的な2ストロークの約2倍の4.5PS、最高速度は70km/hに達し、車体についても高強度なプレスバックボーンフレームを採用し、軽量化のためのレッグシールやフェンダーにポリエチレンを使うなど最新技術が盛り込まれました。

スーパーカブは、4ストロークエンジンなので静かで燃費が良い、さらに自動遠心クラッチを備えることで、初心者でもすぐ乗りこなすことができるものとしたことが、他車とは異なる大きなメリットでした。

スーパーカブC100の価格は5.5万円、発売と同時に爆発的な人気を集め、1960年の月間生産台数は2万7000台に達しました。これは、それまでの日本製バイクの年間販売台数の2/3に相当します。

●いっそう豪華に、軽快になって登場したスーパーカブDX

スーパーカブシリーズは、発売から13年を迎えた1971年には、日本をはじめとして世界145ヵ国にわたって合計700万台を販売する超ベストセラーとなっていました。

そして、この年の1月6日、スーパーカブを一段とデラックスにしたスーパーカブDXがデビュー。空冷4ストロークエンジンの最高出力は4.8PSに向上し、フェンダーやレッグシールドも細身にしてスマートになり、さらにメタリック塗装で豪華なフォルムに仕上げられました。

装備としては、ポジションライトとサイドリフレクターに加えて、前後輪どちらの制動でも点灯するブレーキランプ、ハンドルはカモメの羽のような形をして人気を集めたカモメハンドル、その他にもスイッチ類、シート、ステップなど、人間工学にかなった扱いやすく疲れない設計が特徴でした。

排気量50ccのC50DXの他、70ccのC70DX、90ccのC90DXも用意され、C50DXの価格は6.8万円。ちなみに、当時の大卒の初任給は7.4万円程度(現在は23万円)、単純計算で現在の価値なら21万円に相当します。


1958年の発売から65年が経った現在も「スーパーカブ」の人気は衰えることなく、2017年には世界生産累計台数1億台(二輪/四輪含む世界記録)という驚異的な記録を達成し、現在も更新中。スーパーカブDXもその一端を担ったのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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