タイヤが減ると増えるのは危険だけでない!「騒音」も大きくなるって知ってますか?

■なかなかできない「減ったタイヤ試乗」してきました!

●タイヤが減るとどうなるか、わかる人〜?

クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553
クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553

普段なにげなく車に乗っていると、ついついそのありがたみを忘れてしまうタイヤ。しかし、実は車の印象や周囲の状況を刻々とドライバーに伝え、運転を快適にも危険にも変えてしまうことがあるのがタイヤなのです。

そんなタイヤの宿命はなんでしょう。そうです。減っちゃうことですね。

減っちゃうとどうなるか? 溝がなくなって、排水性が悪くなって雨で滑っちゃう。すり減りすぎると、表面のゴムがなくなり、中の構造物が見えてきて……と、ここまで来たらもう危険すぎですので、その前に絶対交換してください。

クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553
クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553

それ以外の減ったタイヤのデメリットとして、「音がうるさくなる」という項目が挙げられます。

さて、ボク自身もタイヤが減ると起きる現象のひとつに、「音が大きくなる」というのは知識として知っていましたが、どれほどのものかは実感した記憶がありません。

当たり前ながらタイヤは徐々に減っていくもの。どこかを境に急に音が大きくなったりすることはありません。

それにもし、減ったタイヤとまったく同じ新しいタイヤに替えるのでなければ、おおよそ進化したタイヤの伸びしろで静かになった分を差し引いて感じるのはかなり難しい作業です。

今回、横浜ゴムさんのご協力の下、そういった体験が可能となりました。

●うわー、ホントに減ったタイヤは音が大きくなるんだ!

まず、新しいタイヤ、ADVAN dB(アドバン・デシベル) V553を装着したクラウンスポーツに乗ります。

クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553
クラウンスポーツに装着された新製品のアドバンdB V553

アドバンは以前はバリバリのスポーツタイヤの代名詞でしたが、現在ではヨコハマタイヤのオンロード系での上級タイヤ全般のブランド。デシベルは音の大きさである音圧を表現する単位。その名の通り、音には自信があるシリーズであり、古くはヨコハマタイヤの最上級車種向けブランド「アスペック」に使用されていたものが、現在ではアドバンシリーズに統一されたものというと、ある一定のおじさん以上にはわかりやすいでしょう。

さて、そんな最新のdBであるV553を履いたクラウンスポーツはハイブリッド。走り出しはモーターで転がり始めます。が、聞こえてくるのはどちらかと言えばモーター音。ゼロスタートから30km/hくらいまで僅かな駆動モーター(あるいはインバータ?)のヒュ~という小さな音が聞こえてからロードノイズが聞こえてきました。これは静かですよ。

クラウンスポーツに装着された半分摩耗した新製品のアドバンdB V553
クラウンスポーツに装着された半分摩耗した新製品のアドバンdB V553

次に、およそ50%と半分すり減った同じくV553を装着した同じくクラウンスポーツを走らせます。耳を済ませながら同じようにゆっくりと転がりだすと、わずかにコトコト音が聞こえながらモーター(あるいはインバータ)音が同時に入ってくるのがわかります。

クラウンスポーツに装着された半分摩耗した従来品のアドバンdB V552
クラウンスポーツに装着された半分摩耗した従来品のアドバンdB V552

最後に、一世代前のADVAN dB(アドバン・デシベル) V552でやはり同じクラウンスポーツに装着したものを走らせてみます。V552も「dB」の名に恥じない静かなタイヤとされています。が、今回やや意地悪にも、意図的におよそ50%ほどすり減った状態のV552での試走です。

先程の新品、あるいは半分すり減ったV553と比べると、明らかに走り出しから路面をタイヤが転がっている音が伝わってきます。と言っても、うるさいレベルとかじゃないですよ。純エンジン車だとエンジンのノイズで確実にかき消されるレベルです。それでもクラウンスポーツの走り出しがモーターで静かな領域では、ロードノイズが身体あるいは耳から伝わってきます。

その後、速度域が30km/hほどを超えたあたりからはエンジン音も入ってくるし、微妙な違いには感じますが、それでも同じ日に同一車両、同一路面という同条件で、同じ半分すり減ったV553と比較すれば、すり減ったV552のほうがロードノイズ、パターンノイズともに大きく感じられます。

まとめると、新品のV553は明らかに静か。半分すり減ったV553は、新品時よりも多少ノイズが入ってくる。半分すり減ったV552は、すり減った553よりも微妙ながら明らかにノイズが大きく感じられる、ですね。

なぜ、このような試走を行っているかというと、まさに、新しいV553は「すり減ってきたときのノイズを軽減させたかった」からに他なりません。

聞くところによると、ヨコハマ「アドバン」ブランドは言うまでもなく古くからの車好きに愛されてきた歴史を持ちますが、なかでもプロフェッショナルであり、車好きも多くいると思われる「個タク(個人タクシー)」ユーザーからも指示されてきたのだそうです。

毎日のように車に乗り、走行距離も長く、自分のドライビング感覚に適うのはもちろんですが、後席のカスタマーにも快適を提供したいと思う、好き者の個タク運転手さんからの要望が「すり減ったときもノイズが大きくならないでほしい」といったものだったそうです。

それにヨコハマが答えたのが今回のアドバンdB V553というわけです。なるほど、それでクラウンが試乗車になっていたんですね。テスト走行を終え、狙いに対する納得の出来栄えと、「へー、ホントにタイヤってすり減るとノイズが大きくなるんですね」というのを体感させていただいた、貴重な経験となりました。

●豊富なサイズとどんな車にも安心してオススメできます

トヨタ・アルファード+アドバンdB V553
トヨタ・アルファード+アドバンdB V553

それらを踏まえさらに、短時間ではありますが、ホンダN-BOX、トヨタ・プリウス、三菱イクリプスクロスPHEV、トヨタ・アルファードに一般道、自動車専用道路で試乗することができました。

ホンダN-BOX+アドバンdB V553
ホンダN-BOX+アドバンdB V553

これら試乗車が大から小まで揃っているということは、サイズラインアップがそれだけ豊富であるということを意味しますし……。

三菱イクリプスクロスPHEV+アドバンdB V553
三菱イクリプスクロスPHEV+アドバンdB V553

ボク個人の印象では、イクリプスクロスとの相性が特にいいように感じられました。電動車両専用タイヤもリリースするヨコハマだからでしょうか。重量があって、エンジン音などが最小限のPHEV車に向いているのでは?と感じられました。

逆に純ガソリンのN-BOXは、軽自動車ということもあるからか、タイヤが静かな分、ほかからのノイズが目立つ結果となった気がします。もちろん、それでも走りの安心感は変わりませんし、タイヤ自身は静かなのでいいのですが。せっかく静かなタイヤなんだから、静かな車に向いているというのは当たり前かもしれません。

トヨタ・プリウス+アドバンdB V553
トヨタ・プリウス+アドバンdB V553

ただし、いずれの試乗車に乗っても、基本的に静かなタイヤであることが実感できます。ウェット性能などは試していませんが、V553はすベてにおいてV552と同等以上または大きく上回る性能を持っているといいます。静かさだけでなく、走らせての自然な感覚、適度な手応え、乗り心地の良さなどは、アドバンの中でも最上級のプレミアムをうたうだけの実力を感じられました。

それもそのはず、アドバンdBのdBの名は、古くは1998年登場のアスペックdBから継承されたもの。アスペックといえば、ヨコハマの最上級プレミアムブランドでした。いま、頭の中に寺尾聰さんの「トゥットゥルル〜」と浮かんだ人も多いでしょう。アスペックはブランド名の整理とともにアスペックの名は消えたものの、キチンとそのDNAは受け継がれているのです。あ、DNAもヨコハマのブランドですね。

横浜ゴムの新製品「アドバンdB V553」
横浜ゴムの新製品「アドバンdB V553」

多くのタイヤ、そのブランドを生み出し、毎年のように旧モデルをどこか上回る性能の新製品がリリースされるタイヤ業界。すり減ったときの静かさにまで気を配るようになったとは恐れ入ります。裏を返せば、そのほかの基本性能にはかなりの自身があってのこととも言えるかもしれません。

豊富なラインアップもあり、超ハードに走るためのスポーツタイヤを求めるのでなければ、どんな車種でも選んで間違いない、新品の最初から最後の使い切るまで安心、快適に使えるのがアドバンdB V553と言えるのではないでしょうか。

(文:小林和久/写真:前田惠介)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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