目次
■ドイツ系「インフィニオン」も尽力した7-in-1 eアクスル
マツダから、ロータリーエンジンを搭載した市販車「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」が登場したことが話題となっています。
大まかなメカニズムの構成としては、エンジンで発電用モーターを回すハイブリッドカーで、バッテリーは外部充電に対応したプラグイン仕様。
アルファベットの略称でいうと「PHEV」と略されることの多い、プラグインハイブリッドのエンジンとしてロータリーが蘇ったというわけです。
MX-30にはバッテリーだけで走行するBEV(電気自動車)バージョンもありますが、ロータリーPHEVとBEV仕様では駆動モーターなどが異なるといいます。
それほどロータリーエンジンに最適化されたモーター駆動系を与えられているのです。
しかも、MX-30 e-SKYACTIV R-EVの電動駆動系は、モーター・トランスミッション・発電機・インバーター・DC/DCコンバーター・AC/DCコンバーター・ジャンクションボックスなどが高度に統合され、モジュールとなった「7-in-1 eアクスル」となっています。こちらも、電動モデルに注目している自動車ファンの注目を集めています。
とはいえ、「7-in-1 eアクスル」はマツダ内製というわけではありません。台湾にて1988年に創業した工業用モーターの老舗企業「富田電機(FUKUTA ELEC&MECH))」が製造しているということです。
また「7-in-1 eアクスル」の開発においては、ドイツ系の半導体企業であるインフィニオンも力を尽くしているといいます。じつに150以上のコンポーネントにインフィニオンの半導体コンポーネントが使われているということです。
●シングルローターエンジンは従来より燃費改善したという
このように、専用の「7-in-1 eアクスル」を開発することで復活を遂げたロータリーエンジンですが、PHEVにロータリーエンジンを搭載する意義については、賛否両論といえる状況です。
「とにかくマツダのアイデンティティであるロータリーエンジンを復活させたことに意義がある」という意見もありますが、「15.4km/Lというハイブリッド走行燃費(≒外部充電が切れた後の燃費)を見ると、けっしてロータリーエンジンの熱効率はよいとは思えない」という見方もあります。
筆者がオンラインで取材した際に、新開発したロータリーエンジンの熱効率について質問したところ、「従来のロータリーエンジンよりはかなり燃費がよくなっています」という回答でした。
●発電用ロータリーエンジンの最高出力は71馬力
従来のロータリーエンジンという表現が何を指しているのか、明確な回答は得られていないのですが、RX-8が積んでいた13B型ロータリーエンジンが比較対象だとすれば、排気量が小さくなって、ローターの数も2個から1個に減った8C型ロータリーエンジンのほうが燃費が改善しているのは当たり前であって、ロータリーエンジンとしての熱効率がどれほど進化したのかは残念ながら不明です。
参考までに、MX-30に搭載されるロータリーエンジンの単体スペックは、最高出力53kW(71PS)/4500rpm・最大トルク112Nm/4500rpmと発表されています。最高出力と最大トルクを同じ回転数で発生するというのは、いかにも発電用に特化したセッティングであることが感じられるのではないでしょうか。
ちなみに、RX-8が積んでいた2ローターエンジンのスペック(6速AT仕様)は、最高出力158kW(215PS)/7450rpm・最大トルク216Nm/5500rpmというもの。この時代は現在と燃費測定モードが異なるのですが、当時の10・15モードでの燃費性能は9.0km/Lでした。
たしかに、この数字と比べると、発電に特化したシングルローターエンジンの燃費性能は、かつてのロータリーエンジンより”格段に”改善したのは間違いなさそうです。比較することが妥当かどうかの議論はあるかもしれませんが…。