どこのメディアもやらなかった!? ステップワゴンの凝りに凝ったメーター表示をすべて見せます【新車リアル試乗 9-5 ホンダステップワゴン メーター表示編】

■ステップワゴンのメーター表示を見てみよう

今回はメーターのお話・・・
今回はメーターのお話・・・

ステップワゴンリアル試乗の第5回目にして、第1回で予告したハジさらし回。

いつもならここで「ライト編」に突入するところですが、今回は「Honda SENSING実践編」の延長戦でメーターのお話をひとつ・・・

●「10.2インチデジタルグラフィックメーター」に同居する、「へぇ~」と「おおっ」と遊び心と実用性

最近の風潮に則り、新型ステップワゴンのメーターは、全面液晶タイプに変わりました。

10.2インチデジタルグラフィックメーター。全機種に備わる
10.2インチデジタルグラフィックメーター。全機種に備わる

カタログ名称「10.2インチデジタルグラフィックメーター」。

全面液晶と書きましたが、正確には左の水温計、右の燃料計が10点のLEDドットで示すバーグラフ式になっており、e:HEV車になると水温計がバッテリーの残量計に変わります。

先代ステップワゴンの計器盤。ハンドルグリップの上にメーターを見るので、表示の一部が輪っかに蹴られない良さがあった
先代ステップワゴンの計器盤。ハンドルグリップの上にメーターを見るので、表示の一部が輪っかに蹴られない良さがあった

第1回で、「先々代、先代よりも計器盤がオーソドックスになった」と書きましたが、それはメーターレイアウトが起因しています。先代はメーターがフロントガラス寄りの遠方にあり、ドライバー視線ではハンドル輪っかの上方に位置していました。

今回は昔ながらに、ハンドル内にすべて収める配置に回帰。従来の上方配置のメーターは見やすかったし、インパネ上面のメーター盛り上がりが運転視界を阻害していたとは思わず、メーターデザインの華やかさもあって筆者は従来型のほうが好みでしたが、結果的に新型のインパネ上面は現行フィット同様、まるで机の前に座っているような気になるほどフラットな仕上げになって視界はすっきり。できるだけ直線で仕上げる考え方がここにもおよんでいます。

前回採りあげたマツダCX-60
前回採りあげたマツダCX-60

ところで、前回のリアル試乗で採りあげたマツダCX-60も同じ全面液晶のメーターを起用していました。

ヘンに遊ぶグラフィックのメーターが多いので筆者はこの手のメーターを好まない中、CX-60は、自車レーンの先をきちんとカーブで描くこと、隣接車線の車両をも表示・・・変幻自在な液晶式であることを活かしに活かした表示に手放しで「へぇ~」と感嘆するとともに、「高速路も時間帯によっては周囲はトラック、バスばかりになることが多いので、いまは白い四角のざぶとんみたいに描かれている周辺車両の絵も、次期2代目CX-60では乗用車やトラックやバスになることだろう」「高速走行では多くの表示は不要だから、速度計と燃料計以外を消した『高速モード』があるといい」「昔のクルマのような、横バーグラフで速度を表示する『Classicモード』を作るとおもしろいかも知れない」と、CX-60試乗の第6回で好き勝手なことを書いたものです。

ステップワゴンがCX-60以前に同じことをしていたとも知らず、「へぇ~」と感心した、前回のリアル試乗・CX-60記事。なーにが「へぇ~」だ、なにが。
ステップワゴンがCX-60以前に同じことをしていたとも知らず、「へぇ~」と感心した、前回のリアル試乗・CX-60記事。なーにが「へぇ~」だ、なにが

ここからがハジさらし。

CX-60の国内発売は昨年2022年9月。こちらステップワゴンはその前の5月・・・採りあげる順序を逆にすりゃあよかった。CX-60のメーターで述べた要望が、このステップワゴンではほぼ採り入れられていました。つまり、CX-60を見て筆者が思いついたことは、ホンダがすでに織り込んでいたわけ。知らずに書いていた筆者の不勉強ぶりを世にさらした格好です。なーにが「へぇ~」だ、なにが。

というわけで、ステップワゴンの10.2インチデジタルグラフィックメーターはCX-60同様、ちっとも遊んでおらず、それでいて現状をきちんとまじめに示すために凝った造りになっていたので、わざわざメーターの話を1本掲載することに決めました。

●メーター表示は4種

ステップワゴンのメーター表示は全部で4とおりで、下記のとおりです。

ライトセレクターホイールについては、後のユーティリティ編で説明する
ライトセレクターホイールについては、後のユーティリティ編で説明する
種類は4つ。選択&決定は、ハンドルスポーク右のライトセレクターホイールで行う
種類は4つ。選択&決定は、ハンドルスポーク右のライトセレクターホイールで行う

・2眼
・バー
・2眼/シンプル
・バー/シンプル

「メーター表示を変える」のひと言で説明するのは怠慢。

正確には「ACC使用時には煩雑になりがちなACC表示をどのようにするかを選ぶ」というのが主旨のようで、「2眼」「バー」ではACC使用時のACC状況をそのまま追加表示、「2眼/シンプル」「バー/シンプル」は、ACC未使用時は「2眼」「バー」と同じまま、ACC使用時はその状況をシンプル表示にするというものです。

【2眼】

「2眼」モード、ACC表示時
「2眼」モード、ACC表示時
「2眼」モード
「2眼」モード

標準の表示で、右に速度計、左に回転計。中央上部でも速度をデジタル表示する。
ACC使用時は、自車マーク&レーン他情報が速度計、回転計の間に表示される。間に分け入るように表示されるので、2眼はわずかに縮小される。

【バー】

「バー」モード、ACC表示時
「バー」モード、ACC表示時
「バー」モード。中央上のデジタル速度計はそのままに、2眼だった速度計と回転計は、両脇のバー式表示となる
「バー」モード。中央上のデジタル速度計はそのままに、2眼だった速度計と回転計は、両脇のバー式表示となる

中央上部のデジタル速度計はそのままに、2眼が液晶両脇で横・・・ではなく、縦バー表示になり、白の水平指針(の絵)の上昇・下降でエンジン回転・車速を示す。ACC使用時は空白ならぬ空黒面にACC状況を追加表示。

【2眼/シンプル】 

「2眼/シンプル」モードのACC使用時。車速がデジタルのみとなり、回転計もなくなる。CX-60で提案した「高速モード」はこれがいちばん近い
「2眼/シンプル」モードのACC使用時。車速がデジタルのみとなり、回転計もなくなる。CX-60で提案した「高速モード」はこれがいちばん近い
「2眼/シンプル」モード。ACC未使用時は「2眼」と同じ
「2眼/シンプル」モード。ACC未使用時は「2眼」と同じ

通常=ACC未使用時は2眼表示。ACC使用時は2眼が消え、速度計は中央上部のデジタル表示になるとともに中央にACC状況が示される。エンジン回転はなくなる。

【バー/シンプル】 

「バー/シンプル」のACC使用時。両脇のバーが消える。2眼のACC使用時と同じ
「バー/シンプル」のACC使用時。両脇のバーが消える。2眼のACC使用時と同じ
「バー/シンプル」モード。ACC未使用時は「バー」モードと同じ。
「バー/シンプル」モード。ACC未使用時は「バー」モードと同じ

通常=ACC未使用時はバー表示。ACC使用時は両脇バーが消え、速度計は中央上部のデジタル表示になるとともに中央にACC状況が示される。

要するに、「2眼/シンプル」「バー/シンプル」は、「シンプルな2眼表示」「シンプルなバー表示」なのではなく、通常が「2眼」であろうと「バー」であろうと、ACC使用時の表示がデジタル速度計になり、回転計が消え、ACC表示をメーンにするという内容は同じです。

筆者が「おおっ、いっていたとおりのことが」と思ったのが、CX-60で提案した「高速モード」表示にいちばん近い「バー/シンプル」のACC使用時の表示で、右の燃料計はもちろん、左の水温計は液晶ではないLEDドットなので表示されたままですが、このふたつ以外は必要最低限の内容になっています。

●凝ったACC表示

ACC表示そのものも凝っています。

【カーブ表示】

CX-60に乗るなり、筆者が「へぇ~」と最初にうなったレーンのカーブ表示がステップワゴンでも採り入れられています。CX-60のものほどカーブの曲率は大きくありませんが、カメラで捉えた先のカーブ形状を、液晶できちんとドライバーに知らせることに努めています。

【周辺車両表示】

ここでも「おおっ!」と思ったのが、CX-60では「ベルトコンベアを流れる白い四角のざぶとんも次期型ではクルマやトラック、バスの絵になるだろう」と評した周辺車両の絵が、バスはともかく、きちんと「乗用車」「トラック」の絵になっていたことです。

これは先行車であれ両脇車線であれ同じで、相手が乗用車なら「乗用車」の絵を、トラックなら「コンテナトラック」の絵を表示。

「もしや」と思って旧ステップワゴンやフリード、N-VANやN-ONEといったホンダ車が見えるときに表示を観察しましたが、さすがに身内のクルマの絵にはなりませんでした。

実際にはバイクや自転車の絵も表示される。これはホンダ資料掲載の写真
実際にはバイクや自転車の絵も表示される。これはホンダ資料掲載の写真

ほんとうはCX-60同様、バイクの絵もあるのですが、うまいシチュエーションにぶつからなかったためにバイクの絵だけは撮れませんでした。

もしバイクまたは自転車が付近に表れると写真のような絵が表示されるはずです。


【自車&周辺車両の挙動表示】

先行車のキャッチは、先行車イラストの緑の縁取りで表示される
先行車のキャッチは、先行車イラストの緑の縁取りで表示される

ACC使用時、先行車をキャッチするとその輪郭が緑色になるのがわかりやすくていいところです。

またも「おおっ!」と思ったのは、クルマの絵を単純にレーン内外に表示するのではなく、その動きまでアニメ風に表示することです。

先行車の自車レーン離脱、隣接車線からの自車レーン流入は他車も行っていますが、自車にしても先行車にしても、実車がレーンの右ラインに寄ればメーターでも右ラインに寄せ、左に近づけば絵でも左に近づけるまで再現・・・ここまで表示する例は思い当たりません。

【ステップワゴン表示】

低価格寄りのクルマでは自車をシンプルにシルエット表示にしたり、もっと簡便なものではボンネットの絵にとどめるものがありますが、ステップワゴンでは自車を緻密なステップワゴンのリヤビューの絵で示しています。

先々代、先代あたりのメーターデザインにあったエンターテイメント性が薄れ、どちらかといえば無愛想になったデザインの中で、唯一「クスッ」と微笑ませてくれるステップワゴンのイラスト。中央下にちょこんと鎮座している様は、ステップワゴンなのにまるでN-BOXのチョロQのようです。

ただ表示しているだけではない。これは他社でも行っていることですが、リヤランプの点消灯の様子もきちんと表現しています。

スモール/テールランプを点ければメーター内でもうっすら点灯。「ライト編」でも書きますが、ブレーキペダルを踏めばテールのほかにストップランプが追加点灯。ハイマウントストップランプまで点灯します。ターンシグナルを灯せばこちらも点滅。インパネの赤い三角ボタンを押せば、ちゃんと両方点滅するんだぜ! ・・・でもさすがにリバースまでは光らないのはご愛敬。

ライトを点ければ前方(イラストではステップワゴンの上部)でライトの光が表れますが、ステップワゴンスパーダ・Premium LINEだけに備わるアダプティブドライビングビームが作動すると光の形も変わるのか、興味が湧きます。

 

・・・・・・・・・。

このクルマのメーターデザインを担当したひとは、まずは必要な情報をわかりやすく示すことに徹し、決して遊ぶことはしていません。しかしプラスアルファの要素として、わずかな遊び心を加味してくれました。ただ遊んで満足し、わかりにくくして勘違いさせ、危険を誘発してしまわないことを前提に、小さい子が見たら「クスッ」と肩をすくめるような遊び心なら悪くはありません。

というわけで、さらりと流してしまうにはもったいない内容だったので、わざわざメーターを1本記事にした異例の「メーター編」でした。

次回、ステップワゴンリアル試乗「ライト編」でまた。

(文:山口尚志(身長176cm) 写真:山口尚志/本田技研工業)

【試乗車主要諸元】

■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕

●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)