トヨタ車体「X-VAN GEAR CONCEPT」はZ世代ファミリーに向けたギア感あふれる新提案ミニバン【これだけは見逃すなジャパンモビリティショー2023×デザインインタビュー】

■ミニバンにSUV的なアクティブさを加えた新しいスタイリング

次世代キャブワゴンの提案としたクロスギアコンセプト。Z世代ファミリーを意識したスタイリングが新鮮
次世代キャブワゴンの提案としたクロスギアコンセプト。Z世代ファミリーを意識したスタイリングが新鮮だ

4年ぶりにリニューアル開催となったジャパンモビリティショー2023(Japan Mobility Show 2023)。

EVをメインに数多く出展されたコンセプトカーから、気になる1台のデザインについて担当デザイナーさんの話を聞いてみました。

今回はトヨタ車体ブースから、「X-VAN GEAR CONCEPT」を取り上げます!


●3つのシリーズの第一弾として提案

トヨタグループの中で、主にミニバンを担当・開発するトヨタ車体。今回もユニークなミニバンを提案していますが、その中で次世代のキャブワゴンを提示したのがX-VAN GEAR CONCEPT(クロスバン ギア コンセプト)です。今回は担当デザイナーの江菅さんと芳形さんに話を聞きました。

お話を聞いたトヨタ車体株式会社デザイン部 デザイン戦略室 主査の江菅誠氏と室長の芳形伸也氏
お話を聞いたトヨタ車体株式会社デザイン部 デザイン戦略室 主査の江菅誠氏(写真右)と室長の芳形伸也氏(同左)

── まず最初に、商品コンセプトについて教えてください。

「価値観やライフスタイルの多様性が進む中で、次世代のミニバンはどのような可能性があるかを考えました。実は、X-VANはこの他に『コア』と『ツー』の3台のシリーズで考えており、今回の『ギア』はその最初の1台として、室内の大空間とSUV的でアクティブな外観を組み合わせた提案となります」

── パッケージには独特のプロポーションを感じるのですが、ベース車はあるのですか?

「具体的なベース車はないのですが、サイズ的にはノア・ヴォクシーとほぼ同等で、ホイールベースも同じです。キャビンはヘッド部を前方に400mmほど延ばし、Aピラーを立てることで大幅に室内空間を広げています。これによって、プロポーションに特徴を感じるのかもしれませんね」

素材色の樹脂を積極的に使ったフロント部。ランプからつながるラインは要素を整理するとともにフェンダーの存在感を強めている
素材色の樹脂を積極的に使ったフロント部。ランプからつながるラインは要素を整理するとともに、フェンダーの存在感を強めている

── 高さもノア・ヴォクシーと同等でしょうか?

「そうですね。今回は大径タイヤを採用しているのでフロアは若干高くなっているのですが、その分ガラスルーフとすることで室内高を確保しています。そこもミニバンの使い勝手とアクティブさの両立を探っている部分ですね」

── リアピラーより後ろ側が別体のように見えるのですが、何を狙ったものですか?

「リアを別に見せるというより、Cピラーをアイコン的に強調しているということですね。これは外形だけではなく、ピラーの室内側にもさまざまな機能を持たせているんです」

リアピラーをアイコンとして演出することでキャビン後半に変化をもたらしている。フェンダーはフロントと同様によく整理されている
リアピラーをアイコンとして演出することでキャビン後半に変化をもたらしている。フェンダーのラインはスライドドアのレール部を兼ねている

── ボディ全体に使われた素材色の樹脂パネルが特徴的です。特にフロント部は大半が素材色で覆われていますが、これはEVを想定したためですか?

「トヨタの基本スタンスとしては、ユーザーが期待する動力源をその都度提供するとしています。なので、EVなのかハイブリッドなのか、そこはこのショーの反響を見て考えて行くことになると思います。樹脂素材に関しては、想定のZ世代ファミリーを初め、若年層に向けてあまり高価にならないことを意識したものですね」

●ノイズの少ないスッキリとしたデザイン

── サイド面では前後フェンダー部の太いラインが特徴的ですね。

「フロントはランプから継続しており、リアではスライドドアのレール部分と合わせるなど、できるだけ要素を整理することでシンプルに見せています。また、限られたサイズの中でフェンダーの張り出しを強調する目的もあるんです」

ボディに比べると柔らかな印象のキャビン。とくにリア部は丸みを持ったガラスエリアが軽快だ
ボディに比べると柔らかな印象のキャビン。とくにリア部は丸みを持ったガラスエリアが軽快だ

── そのフェンダー部も含め、従来のミニバンに比べると直線的でスッキリした表情が印象的です。

「将来のミニバンのスタイルを模索する中、先のZ世代が持つ価値観を見ると、こうしたノイズのないスッキリしたデザインを好む傾向があるんですね。当社のデザイン部にも同じ世代がいますが、よく『ピュア』『ノイズレス』といった話をしています」

── 観音開きのドアを採用したのはなぜですか?

「従来のミニバンはあくまで移動を中心に考えていたのに対し、この車は止まっているときの活用や積み下ろし、あるいは乗降性も考えた結果なんですね」

── なるほど、そういう意味でもSUV的なアクティブさが表現されているワケですね。本日はありがとうございました。

(インタビュー:すぎもと たかよし

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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