すぎもと たかよし 
■5台のハイパーシリーズを展開した日産ブース
4年ぶりにリニューアル開催となったJapan Mobility Show 2023（ジャパンモビリティショー2023）。EVをメインに数多く出展されたコンセプトカーの中から、気になる1台のデザインについて担当デザイナーさんに会場インタビューを敢行！
今回は日産ブースから「ニッサン ハイパーツアラー」を取り上げます。
●リニアモーターカーのように疾走するミニバンを
今回、5台が展示されたハイパーシリーズのうち、第3弾とされたプレミアムEVミニバンがハイパーツアラーです。もしかしたら次期エルグランド？とも言われる同車について、担当デザイナーの佐藤氏に会場で話を聞きました。
── 今回出展のハイパーシリーズはどれも似たテイストがありますが、何か共通したデザインコンセプトがあったのでしょうか？
「いえ、特段新しい共通コンセプトというものはなく、いま日産が提示している『タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム』の次の段階を模索しているということですね。今回のショーを通じて、いろいろな意見を聞きたいと考えています」
── では、このハイパーツアラー自体のデザインコンセプト教えてください。
「私たちは『プライベートマグレブ・オーバー・ザ・ロード』と呼んでいるのですが、リニアモーターカーのようなフリクションレスのエクステリアと、プライベートジェットのようにラグジュアリーなインテリアの融合を考えました」
── キャビンとボディを1本のラインでスパッと明快に分けた構成がユニークですね。
「はい、このラインは360度車の周囲を回っているのですが、直線的でシャープなボディと、ツルンとしたキャビンの対比を表現した感じですね。ただ、とくに上下を分断するといった意図ではありませんでした」
── リアフェンダーに向けたシャープなラインや、絞り込まれたリアセクションが特徴的です。
「サイド面は、まさにリニアモーターカーのように高速で進むイメージで、過剰な抑揚を付けずスパッと流しています。その中で、フロントフェンダーからリアドアに向けた流れで面の表情やドラマも打ち出した。リアの絞り込みは、シャープな箱の中でどのような抑揚が作れるかを考えたものですね」
── ホイールアーチも、丸い抑揚は付けずにスパッと切り落としたかのようにシャープです。
「はい。日本らしいモダンな表現を目指す中で、大きな面と細かなディテールのコントラストを意識しました。フェンダーは非常にフラットな面ですが、その下のホイールには緻密で深いキューブ模様を組み合わせています。これは、フロントやリアの文様表現も同じですね」
── 大型のミニバンでは、ライバルが非常にわかりやすい迫力や高級感を打ち出して成功しています。
「まあ、あくまでコンセプトカーなので、とくにライバルを意識してはいません。ただ、日産としてはより知的でモダン、かつシンプルな中で、どうすればこの大きさのミニバンに独自の高級感を与えることができるかを考えているところですね」
── このボディカラーはアリアに似ていますが、既存色ですか？
「いえ、新色です。アリアでもカッパー色を使っていますが、より日本らしく高級な色を探す中で、このサテン調のカッパーゴールドとしました。あまりギラギラさせずしっとりした色を目指し、マット塗装としたところが特徴ですね。これはデザイナー陣も気に入っているんですよ」
── 大型ミニバンに必要な高級感の打ち出し方のヒントが見える気がしますね。本日はありがとうございました。
（インタビュー：すぎもと たかよし）
