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■後輪駆動を採用し走りにこだわったミドルサイズSUV
2022年から販売開始したマツダ・CX-60。新世代ラージ商品群第1弾として、新開発した後輪駆動のプラットフォームを採用し、走りへのこだわりをアピールしています。
一方、2018年に登場したアルファ ロメオ・ステルヴィオも、当時ニュルブルクリンク北コースで量産最速ラップタイムを記録するほど走りを追求したモデルでした。
ここでは、同じ後輪駆動のプラットフォームを採用したマツダ・CX-60とアルファ ロメオ・ステルヴィオの比較試乗を行い、どちらが真のドライビングSUVなのかを検証してみました。
●【外装比較】ボディサイズはほぼ同じだが、マツダ・CX-60が取り回しの良さで上回る
まず、マツダ・CX-60とアルファ ロメオ・ステルヴィオの外観から見てみましょう。
ボディサイズは、マツダ・CX-60は全長4,740mm×全幅1,890mm×全高1,685mm。対してアルファ ロメオ・ステルヴィオは全長4,690mm×全幅1,905mm×全高1,680mmです。
全長は50mmマツダ・CX-60のほうが長くなっていますが、全幅、全高はほぼ同じサイズとなっています。
装着しているタイヤサイズは、マツダ・CX-60は235/60R18〜235/50R20。アルファ ロメオ・ステルヴィオは、255/45R20〜255/40R21。
最小回転半径はマツダ・CX-60が5.4m。一方のアルファ ロメオ・ステルヴィオは6.0mと、取り回しの良さはマツダ・CX-60が上回っています。
●【内装比較】アルファ ロメオ・ステルヴィオは全グレードでレザーシートを採用し豪華さで差を付ける
続いてはインテリアを比較します。マツダ・CX-60のインテリアデザインは、幅広なインストルメントパネル、サイドルーバーからドアトリムへと連続する造形により、ワイドでリッチな空間を表現しています。
前後に貫くコンソールによって,後輪駆動車らしい強力なトランスミッションと、その先にある縦置きエンジンの存在感を表現しています。
マツダ・CX-60のシートは、前後左右のGに対して乗員がバランスを取りやすいよう、骨盤を立たせるサポート構造を採用。バネとウレタンも車からのフィードバックを感じやすい特性を進化させています。
一方のアルファ ロメオ・ステルヴィオは、2022年5月に行ったマイナーチェンジで、12.3インチのデジタルクラスターメーターを標準装備しています。また、「Connectシステム」と呼ばれる8.8インチディスプレイの車載インフォテインメントシステムを採用。ロータリースイッチによって直感的に操作可能です。
アルファ ロメオ・ステルヴィオは、全グレードで電動レザーシートを標準装備。上級グレードのヴェローチェには、ホールド性の高いスポーツシートを標準装備しています。さらに、ヴェローチェには高級オーディオのハーマンカードンを標準装備するなど装備が充実しています。
ラゲッジルームの容量はマツダ・CX-60が5人乗車時で570L(サブトランク93Lを含む)。
対してアルファ ロメオ・ステルヴィオは525Lとマツダ・CX-60のほうが上回っています。
●【パワートレイン比較】エンジン排気量はマツダ・CX-60が大きいが燃費性能は優秀
搭載されているパワートレインは、マツダ・CX-60が4種類、アルファ ロメオ・ステルヴィオは現在2種類となっています。
マツダ・CX-60は最高出力188ps・最大トルク250Nmを発生する2.5L直列4気筒ガソリンエンジンをはじめ、このガソリンエンジンに最高出力175ps・最大トルク270Nmを発生するモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載。さらに、最高出力231ps・最大トルク500Nmを発生する3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジン。このディーゼルターエンジンにマイルドハイブリッドシステム(PHEV)を組み合わせた4種類となっています。
組み合わされるトランスミッションは、トルコンレスの8速ATで、駆動方式は4WDを中心に、2.5Lガソリンエンジンと3.3L直列6気筒ディーゼルエンジン搭載車に2WDを設定しています。燃費性能はWLTCモードで2.5Lガソリンが13.0〜14.1km/L。3.3Lディーゼルが18.5〜19.8km/L。ディーゼルハイブリッドが21.0〜21.1km/L。そしてPHEVが14.6km/Lとなっています。
一方のアルファ ロメオ・ステルヴィオは、最高出力210ps・最大トルク470Nmを発生する2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジン。そして最高出力280ps・最大トルク400Nmを発生する2L直列4気筒ガソリンターボエンジンの2種類です。
組み合わされるトランスミッションは8速ATで、駆動方式は全グレード4WDのみとなっています。燃費性能はガソリン車が10.9km/L。ディーゼル車が15.4km/Lと、マツダ・CX-60と比べるとやや厳しい印象です。
●【走り・乗り心地比較】ドライビングSUVに相応しいのはステルヴィオだが価格差が難点
マツダ・CX-60は、3.3L直6ディーゼルターボのマイルドハイブリッドを搭載したXD-ハイブリッドとPHEVの2モデルに試乗しています。個人的に印象が良かったのは圧倒的にPHEVでした。
XD-ハイブリッドは箱根で試乗しましたが、自分の操作量に合わせて車が動いてくれるステアリングフィールは抜群でした。しかし、荒れた路面に対して、車の動きがダイレクトすぎだったことや、リアシートでの乗り心地が硬めに感じました。
一方PHEVは、バッテリーを搭載したことで、XD-ハイブリッドより約150kgも車両重量が重くなったこともあり、硬めのサスペンションがマッチしてスッキリとした無駄のない乗り味を実現しています。フロントに搭載されたエンジンも軽くなったこともあり、さらにステアリングフィールは鋭くなっており、ドライビングSUVとしての本領発揮といったところではないでしょうか。
左右のロールや前後方向のピッチといった無駄な動きが抑えられているので、ロングドライブしても疲れにくいのが特徴です。
アルファ ロメオ・ステルヴィオもガソリン車、ディーゼル車とも試乗しています。名前の由来となった峠を疾走するのであれば、気持ち良く高回転まで廻る2Lガソリン車がオススメです。
ステルヴィオ2.0ターボQ4 ヴェローチェの車両重量は1,810kg。マツダ・CX-60 XD-ハイブリッドより130kg、PHEVより280kgも軽いため、SUVとは思えないほど身のこなしは軽やかです。パンチのある直4ガソリンエンジンは最大トルク400Nmを発生するため、非常にスムーズな加速が楽しめます。
ワインディングを走行しても、やや硬めにセッティングされたサスペンションにより、フラット感のある乗り心地を実現。ステアリングから手を離さずにシフトチェンジが行えるパドルシフトにより、ステアリング操作にドライバーは集中できるのもマルです。
ボディサイズもほぼ同じで、ドライビングSUVを謳うマツダ・CX-60とアルファ ロメオ・ステルヴィオ。車両本体価格はマツダ・CX-60が322万3000円〜646万2500円。アルファ ロメオ・ステルヴィオが736万〜828万円です。
軽快な走りのステルヴィオは魅力ですが、価格差が大きいのが難点と言えます。
【Specification】
■マツダ・CX-60 PHEVプレミアムモダン:全長4,740×全幅1,890×全高1685mm、ホイールベース:2,870mm、車両重量:2,090kg、エンジン種類:直列4気筒DOHC、総排気量:2,488cc、最高出力:188ps/6,000rpm、最大トルク:250Nm/4,000rpm、モーター種類:交流同期電動機、最高出力:175ps、最大トルク:270Nm、WLTCモード燃費:14.6km/L、タイヤサイズ:235/50R20、車両本体価格:646万2500円
■アルファ ロメオ・ステルヴィオ2.0ターボQ4ベローチェ:全長4,690×全幅1,905×全高1,680mm、ホイールベース:2,820mm、車両重量:1,810kg、エンジン種類:直列4気筒DOHCターボ、総排気量:1,995cc、最高出力:280ps/5,250rpm、最大トルク:400Nm/2,250rpm、WLTCモード燃費:10.9km/L、タイヤサイズ:255/40R21、車両本体価格:828万円
(文・写真:萩原 文博)