日産「3代目フェアレディZ(Z31型)」に世界初のセラミックターボ搭載。ターボラグを低減して圧巻の走りを披露【今日は何の日?10月2日】

■世界初のセラミックターボエンジンで国内では敵なし

1985年にデビューした3代目フェアレディZ(セラミックターボ RB20DETエンジン)
1985年にデビューした3代目フェアレディZ(セラミックターボ RB20DETエンジン)

1985(昭和60)年10月2日、日産自動車は1983年にモデルチェンジで登場した3代目「フェアレディZ」に、世界初のセラミックターボエンジンを搭載したモデルを追加しました。

これにより、当時のターボの課題であったターボラグを低減し、優れたレスポンスで圧巻の走りを達成したのです。


●トヨタ2000GTに対抗して登場した初代フェアレディZ(S30型)

初代フェアレディZは、「トヨタ2000GT」に対抗する低価格なスポーツカーとして、1969年にデビューしました。

1969年にデビューし、大ヒットした初代フェアレディZ
1969年にデビューし、大ヒットした初代フェアレディZ

スポーツカーらしい流麗なスタイリングと、高性能2.0L直6 SOHCエンジン&DOHCエンジンによるパワフルな走り、リーズナブルな価格設定によって日米で大ヒット。歴史を飾るスポーツカーとなりました。

1978年にデビューした2代目フェアレディZ
1978年にデビューした2代目フェアレディZ

1978年に2代目(S130型)に移行、当時は排ガス規制が強化され、速さよりも環境性能や快適さが求められた時期でした。その影響もあって、2代目フェアレディZは速さを追求するスポーツカーでなく、快適性や豪華さを重視したスポーティなGTモデルへと変貌したのです。

●世界レベルの走りを誇った3代目フェアレディZ(Z31型)

1983年にデビューした3代目フェアレディZは、排ガス規制やオイルショックを乗り越えたという時代背景もあり、高性能化とハイテク化を追求。“較べることの無意味さを教えてあげよう”という自信のキャッチコピーで登場しました。

1983年発売の3代目フェアレディZ
1983年発売の3代目フェアレディZ

初代から続くロングノーズ/ショートデッキの基本スタイルは踏襲しつつも、パラレルライジング式リトラクタブルヘッドライトや、バンパーとエアダムスカートの一体化など、空力性能を向上したフォルムを採用。エンジンは、当時国内最高の230PSを発揮する3.0L V6 SOHCターボ(VG30ET型)と2.0L V6 SOHCターボ(VG20ET型)の2種、ちなみにV6エンジンのターボ搭載は日本初です。

最高出力230PSの走りは、ライバルの「セリカXX」を圧倒して国内では敵なし、ポルシェ911に迫るほどでした。

●ターボラグ改善のために世界初のセラミックターボ搭載

フェアレディZ(セラミックターボ)リアビュー (T Bar Roof)
フェアレディZ(セラミックターボ)リアビュー (T Bar Roof)

3.0L V6 OHCターボモデルが高性能で高い評価を得た一方で、2.0Lのターボ(VG20ET型)モデルは走りがおとなしいと評価されていました。

その評判を覆すために、2年後の1985年に2.0L直6 DOHC にセラミックターボを搭載したモデルを追加、車両価格は244.3万~292.0万円(2シーター)/252.4万~300.1万円(2by2)。ちなみに、当時の大卒の初任給は14万円(現在は、23万円)程度でした。

RB20DETセラミックターボエンジン
RB20DETセラミックターボエンジン

当時は、ターボによって高回転域の出力は上げられましたが、ターボラグがあり、この問題をどうするかが課題でした。加速時にアクセルを踏み込んでも一瞬応答せず、その後遅れて急加速するので“ドッカンターボ”と揶揄され、特に高出力を目指した大型ターボほど、ターボラグが目立ったのです。

そしてこれを解消するには、ターボのタービン回転部の慣性重量を減らすことが効果的で、軽量かつ耐熱性に優れたセラミックが選ばれたのです。タービンローターをセラミック化したセラミックターボによって、低速からでも過給圧が立ち上がるようになり、加速性能が30%以上も改善されました。


最近は、ターボラグが問題となることはほとんどありません。その理由のひとつは、材料やコンプレッサ/タービン形状の最適化によってターボ技術が進化したこと。もうひとつは、最近のターボの使い方がダウンサイジングターボのように、燃費や排ガスを低減する手段であり、大型ターボや高過給を求めないためです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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