■他社から譲受する「サステナ車両」
西武鉄道は、他社から譲受する環境負荷が少ないVVVFインバータ車「サステナ車両」の授受について、東急電鉄・小田急電鉄と連携する事に合意。東急9000系と小田急8000形を譲受すると発表しました。
西武鉄道は池袋線、西武有楽町線、豊島線、および新宿線、拝島線の本線系統のほか、狭山線、西武秩父線、多摩湖線、国分寺線、西武園線、多摩川線、山口線という支線を有しています。
本線系統には、交流モーター駆動のVVVFインバータ制御の新造車両を導入して、直流モーター駆動の旧型車両である2000系(1977〜1988年製造)・新2000系(1988〜1992年製造)の置き換えを進めています。
また、新交通システムの山口線(多摩湖〜西武球場前)は全車両がVVVFインバータ車です。
一方、支線系統については、2000系・新2000系のほか、1979〜1984年に製造された新101系・101系の電気機器を流用して、1988〜1992年に製造された4000系といった旧型車両を使用していて、VVVFインバータ車への置き換えによる省エネルギー化の加速が必須となっていました。
●「サステナ車両」導入のメリット
西武鉄道は、他社から譲受するVVVFインバータ車を「サステナ車両」と呼称し、譲渡元となる鉄道事業者と交渉を行い、東急電鉄・小田急電鉄から合計100両を2024〜2029年度にかけて順次導入。これにより、西武鉄道は2030年度までにVVVFインバータ車両化100%を達成する見込みです。
中古車である「サステナ車」を導入することで、西武鉄道は新車製造時に排出するCO2排出量を約9400t削減(約94t✕100両)し、旧型車両をVVVFインバータ車に置き換えることによりCO2を約5700t(約2000世帯の年間排出量)削減するとともに、使用電力量を旧型車両の約50%に削減することができます。これはSDGs的にも合理的だと言えます。
また、東急電鉄・小田急電鉄にとっても、車両を廃棄する際に排出するCO2を約70t(約0.7t✕100両)削減することができます。つまりウイン・ウインの関係なのです。
「サステナ車両」の第1陣は小田急8000形で、2024年度から国分寺線に導入を開始する予定です。8000形は1983〜1987年に製造されました。つまり、西武2000系・新101系とほぼ同期で、新2000系よりも古い車両です。しかし、2003〜2013年度にほとんどの編成がVVVFインバータ制御装置に更新しています。
8000形は6両編成と4両編成が在籍していますが、国分寺線に導入される予定ということなので、6両編成が譲渡されると思われます。
東急9000系は2025年度から狭山線、西武秩父線、多摩湖線、多摩川線に順次導入される予定です。9000系は1986〜1991年に製造された車両で、西武新2000系と同期です。ただし、9000系はVVVFインバータ車として新造され、車体もステンレス製なので省メンテナンス性にも優れています。
東急9000系は現在5両編成で大井町線を運用していますが、西武鉄道への導入時は4両編成化されると思われます。また、大井町線には田園都市線用2000系を転用した9020系が3編成在籍していて、こちらも西武に譲渡されるのか気になるところです。
なお、プレスリリースでは西武園線について触れられていません。現在、多摩湖線を中心に運用している西武9000系はVVVFインバータ車なので、もしかすると西武9000系を転用するのかもしれません。
西武9000系は1993〜1999年に製造。新2000系に準じた車体を新造し、101系の機器を流用して登場しましたが、2003〜2007年度にVVVFインバータ制御に更新しています。「サステナ車両」導入後の西武9000系の動向にも注目です。
大手私鉄間での車両の譲渡は、戦時中や終戦直後で行われた例を除けば、非常に珍しい事例だと思います。
ステンレス無塗装車体の東急9000系、普通鋼製塗装車体の小田急8000形がどのような形式となり、車体カラーがどうなるのかも注目です。
(ぬまっち)