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■フラッグシップ「YZF-R1」の技術を投入
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、近年人気が上昇中の原付二種クラスに、フルカウルの125cc・ギア付きモデル「YZF-R125 ABS(以下、YZF-R125)」を国内販売することを発表しました。
ヤマハのスーパースポーツ「YZF-R」シリーズのDNAを受け継ぐこのモデルは、フラッグシップの1000ccマシン「YZF-R1」で培った技術を投入。シリーズ共通のアグレッシブなスタイルに124ccの新開発エンジンを搭載することで、バイク免許を取得したばかりの初心者ライダーなどでも、スポーティな走りが楽しめるモデルです。
同じ原付二種クラスのフルカウルモデルには、スズキの「GSX-R125 ABS(以下、GSX-R125)」もあり、リーズナブルな価格や扱いやすいエンジン特性などで、人気を誇っています。
そこで、ここでは新型YZF-R125の特徴を紹介すると共に、ライバル車といえるGSX-R125との比較も紹介しましょう。
●YZF-Rシリーズのエントリーモデル
YZF-R125は、近年増加している若い層のバイク免許取得者に向けたエントリーモデルとして、国内導入されるモデルです。
ヤマハのYZF-Rといえば、前述の通りフラッグシップの1000ccマシンであるYZF-R1を筆頭に、700ccの「YZF-R7」、320ccの「YZF-R3」、250ccの「YZF-R25」といった豊富なラインアップを誇るシリーズ。
ちなみに、今回ヤマハは、YZF-R125と同時に155ccの新型「YZF-R15」も発表。YZF-R125と同様の装備を持つ軽二輪モデルで、こちらも若い層をターゲットとしたヤマハの新戦略モデルです。
元々このモデルは、欧州、インド、アセアンを中心にロングセラーとして人気があるのですが、今回の新型はそれをベースに、日本向けに開発された仕様。若いライダーなどに、スポーツライディングの醍醐味を思う存分味わえる本格装備を持つことが特徴です。
外観は、YZF-Rシリーズを彷彿とさせるフェイスデザインやテールカウルなどを採用。
特に顔付きは、YZF-R1の特徴ともいえる、フロントカウル中央のM字ダクトを踏襲。その中に、ひとつのLEDでハイ/ローを切り替えられるバイ・ファンクションタイプのヘッドランプを採用することで、コンパクトで特徴的なデザインを実現します。
また、この新しいLEDヘッドランプは、明瞭な明るさと、広くムラの少ない照射範囲を確保。左右にある2眼ポジションランプなどと相まって、スポーティなフェイスデザインを演出すると共に、夜間の走行に寄与するという、機能とデザインの両立を図っています。
●全域で優れたトルク特性を発揮するエンジン
エンジンには、新開発の124cc・水冷SOHC4バルブ単気筒を搭載。最高出力11kW(15PS)を発揮するエンジンは、低速向けと中高速向けのカム(吸気側)が7400rpmで切り替わる「VVA(可変バルブ)」機構も採用することで、全域で優れたトルク特性を発揮。良好な加速性能と加速感に貢献します。
さらに、クラッチの操作感を軽くし、急激なシフトダウン時に後輪のホッピングなどを防ぐ「アシスト&スリッパークラッチ」、滑りやすい路面でも安定した走りをもたらす「トラクションコントロールシステム」なども採用。オプションには、クラッチレバーやアクセル操作なしでシフトアップが可能な「クイックシフター」も用意し、ライダーの疲労軽減に貢献します。
一方、車体では、軽さと強度剛性のバランスを図ったデルタボックス型フレームを採用。左右ピボットの軸間を209mmとワイドにし、強化部材を織り込むことで、優れた走行性を支えています。
また、高い高速安定性を実現するフロントカウル、MotoGPマシン「YZR-M1」スタイルのバブルスクリーンなどにより、走行時の快適性やレーシーなスタイルに貢献します。
さらに、強度剛性バランスに長けたインナーチューブ径37mmの倒立式フロントサスペンション、軽量化とマス集中に貢献する軽量アルミ製リアアームなどにより、軽快な走りも実現。
伏せ気味なポジションのセパレートハンドル、肉抜き加工したトップブリッジなども、レーシングマシンをイメージさせるスタイルに貢献。さまざまな情報が一目で分かるマルチファンクションLCDメーターなど、高機能な装備も満載です。
なお、車体色は「ブルー」「ブラック」「ダークグレー」の3色を用意。価格(税込)は51万7000円で、2023年10月16日の発売予定です。
●GSX-R125とは何が違う?
そんなYZF-R125ですが、ライバルといえるスズキのGSX-R125とは、主にどういった点が異なり、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?
まず、車体です。
●YZF-R125
・全長2030mm×全幅725mm×全高1135mm、ホイールベース1325mm
・シート高815mm
・車両重量141kg
●GSX-R125
・全長2000mm×全幅700mm×全高1070mm、ホイールベース1300mm
・シート高785mm
・車両重量137kg
GSX-R125の方が、全体的にややコンパクトですね。シート高も30mm低いことで、やや足着き性はいいようです。また、車両重量もGSX-R125の方が4kgほど軽くなっています。
ただし、これら程度の差であれば、細い路地や駐車場などでの取り回しなどは、ほぼ互角であることがうかがえます。どちらも、バイク免許を取ったばかりの初心者でも扱いやすい車体を持つといえます。
次に、エンジンの性能。スペックの比較は以下のようになります。
●YZF-R15
・エンジン形式:124cc・水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
・最高出力:11kW(15PS)/10000rpm
・最大トルク:12N・m(1.2kgf・m)/8000rpm
・ミッション:6速
・燃料タンク容量:11L
・燃費:WMTCモード値49.4km/L
一方、GSX-R125は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒を搭載。スペックは以下のようになります。
●GSX-R125
・エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
・最高出力:11kW(15PS)/10500rpm
・最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/8500rpm
・ミッション:6速
・燃料タンク容量:11L
・燃費:WMTCモード値43.5km/L
最高出力はほぼ互角で、トルクはややYZF-R125の方が上ですが、実際に乗ってもさほど差は感じないかもしれません。なお、両モデルともに6速ミッション搭載ですから、どちらもスポーツライディングを楽しむことができそうです。
燃費はYZF-R125の方がややいいですね。燃料タンク容量が同じ11Lですから、カタログ上の数値で見れば、1回の満タンで可能な航続距離はYZF-R125が543.4kmなのに対し、GSX-R125は478.5kmと、YZF-R125の方がより長い距離を走れそうです。
ほかにも、YZF-R125では、前述のようにトラクションコントロール、アシスト&スリッパークラッチ、クイックシフター(オプション)など最新装備もあることで、走行時の安定性や安心感がより高そうですね。また、長距離走行では、より疲れにくいことが予想できます。
タイヤサイズでは、YZF-R125が前100/80-17、後140/70-17、GSX-R125は前90/80-17、後130/70-17。前後タイヤともに、YZF-R125の方が太く、見た目のレーシーさだけでなく、グリップ性能も高そうなイメージですね。
さらに、フロントフォークも、YZF-R125は倒立タイプ、GSX-R125は正立タイプを採用。この点でも、よりスポーティな装備を持つのはYZF-R125といえるでしょう。
●価格で選ぶか? 装備の充実度で選ぶか?
なお、価格(税込)は、YZF-R125の51万7000円に対し、GSX-R125は45万3200円と6万3800円安くなっています。
特に、バイク購入費用が少ない若いライダーなどにとっては、リーズナブルなGSX-R125の価格は魅力的。ただし、これまで紹介した通り、YZF-R125の方が、最新型である分、トラクションコントロールなど、より最新の装備を備えていることは確か。
この価格差で、より充実した装備のYZF-R125を選ぶか、かなりリーズナブルなGSX-R125の方を選ぶかは、ユーザーにとって迷いどころであるのは間違いないですね。
実際に選ぶ際は、できればショップなどに試乗車があれば、両モデルを乗り比べてみた方がいいでしょう。2モデルをそれぞれ乗ってみれば、カタログ数値などでは分からなかった点も分かりますから。そして、その上で、自分の予算やスタイル、使い方などにどちらが合っているのかで選択することをオススメします。
(文:平塚 直樹)