ホンダが欧州専用車「シビックツアラー」を公開。英国生産の最上級グレードは26,140ポンド(約470万円)で登場【今日は何の日?8月11日】

■欧州専用に開発されたスポーティワゴン

2013年に公開された欧州専用車シビックツアラーのフロントマスク
2013年に公開された欧州専用車シビックツアラーのフロントマスク

2013(平成25)年8月11日、ホンダの英国現地法人「ホンダモーターヨーロッパ・リミテッド」が、翌9月に開催されるフランクフルトモーターショーに先駆け、シビックツアラーを公開しました。

日本では投入されない欧州専用に開発されたシビックのスポーティワゴンで、翌年から欧州で発売が始まりました。


●ホンダの欧米進出

ホンダ初の米国生産車のベースとなった2代目アコード
ホンダ初の米国生産車のベースとなった2代目アコード

ホンダは、米国については1978年にオハイオ州に「ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチャリング(HAM)」を設立して、1979年に2輪、1982年には「アコード」の第1号車の生産を開始。日本の自動車メーカーとして初めて、米国での乗用車生産を開始しました。

一方で欧州の4輪については、1979年に英国のブリティッシュ・レイランド社(現・ローバー社)との技術提携を行うことで、欧州での4輪生産の第一歩を踏み出し、1985年に英国スウィンドンで英国工場「ホンダ・ザ・UK・マニュファクチャリング(HUM)」を設立して、1992年にアコードの生産を開始しています。

●スポーティなワゴンスタイルの欧州専用車として開発

2013年の今日、発表されたシビックツアラーは、HUMで生産されて翌2014年から欧州で販売が始まりました。

シビックツアラーの流麗なスタイリング
シビックツアラーの流麗なスタイリング

シビックハッチバックをベースに、Bピラーから後ろのオーバーハングを235mm延長して、広い荷室を確保したツーリングワゴン。基本的には、ワイド&ローのロングなフォルムで、ボンネットからAピラー、ルーフにかけて流れるようなラインをもった、スポーティなスタイリングが特徴です。

シビックツアラーの広いバッゲイジスペース
シビックツアラーの広いバッゲイジスペース

エンジンは、ガソリンの1.8L直4 i-VTECと、クリーンディーゼルの1.6L直4 i-DTECの2機種が用意され、足回りについては、日本の国内とは異なる欧州車専用のサスペンションがセッティングされました。

上級グレードのリアサスペンションには、量産車初の「アダプティブ・ダンパーシステム」を採用し、“ダイナミック/ノーマル/コンフォート”の3段階の調整が可能でした。

ちなみに、シビックツアラーの最上級グレードは26,140ポンド(2014年レート:180円/£で、日本円にして約470万円)で、堅調な販売を記録しました。

●2021年英国工場HUMを閉鎖、30年超の歴史に幕を下ろす

1985年に設立されたHUMは、アコードの生産以降、約30年間「シビック」「シビックタイプR」「ジャズ(日本名:シティ)」「CR-V」などを生産しましたが、2021年に生産を終了し工場を閉鎖しました。

HUMの生産終了という英断に至った理由は、ホンダの欧州のシェアは1%程度で稼働率が悪いことが上げられます。2020年当時のHUMは、シビックハッチバック1機種だけを年間16万台生産。しかし、その55%は北米向け、10%は日本向けで、さらにシビック以外のモデルは日本からの輸出であり、現地生産のメリットを生かせてなかったのです。

工場閉鎖後は、欧州向けのシビックハッチバックは米国からの輸出となり、今後、欧州で進める予定の電動車は、中国、米国、日本でカバーすることになりそうです。


日本に投入して欲しいという話もあったと言われているシビックツアラーですが、2014年当時の日本ではステーションワゴンブームは去っており、例え日本に輸入しても人気を獲得するには厳しかったかもしれません。ともあれ、車然としたスタイリングと走りは魅力的でした。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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