今、泉北高速鉄道が面白い! 新型車両9300系が8月上旬にデビュー

■泉北9300系は南海8300系の兄弟車

大阪府の泉北高速鉄道が、新型通勤車両9300系を導入。8月上旬から営業運転を開始する予定です。

泉北高速鉄道の新型通勤車両9300系
泉北高速鉄道の新型通勤車両9300系

泉北高速鉄道は、中百舌鳥〜和泉中央間を結んでいる準大手私鉄で、大手私鉄の南海電気鉄道の子会社です。中百舌鳥からは南海高野線に乗り入れて、なんばまで直通。大阪府南部の通勤路線として重要な役割を果たしています。

9300系は、親会社の南海8300系をベースとして開発されました。言わば、泉北9300系と南海8300系は兄弟車です。

ベース車の南海8300系は、2015年から導入を進めている通勤車両で、車体はステンレス製。先頭部はシルバーに塗装した普通鋼製として、踏切事故などでダメージを受けた時の修復を容易にしています。運転席・助士席前面窓とその上下は黒く塗装。また、南海の標準色である青と橙色の帯を配しています。

泉北9300系のベースとなった南海8300系
泉北9300系のベースとなった南海8300系

泉北9300系の車体構造・形状は、南海8300系と同様ですが、先頭部は白をベースとして、貫通扉・前照灯部分も含めた前面上部を黒く塗装。下部には青帯を配しているので、印象は大きく変わっています。

泉北9300系はカラーリングで8300系との違いを演出
泉北9300系はカラーリングで8300系との違いを演出

泉北9300系の内装は、南海8300系のうち2022年2月以降に製造された8次車がベースとなっています。8300系8次車はバケットシートを採用。ドア間の座席は7人掛けで、一般席はブラック&グレー、優先席は青で配色しています。吊り革の色はネイビー。

また、なごやかなイメージの壁紙と木目調の床を採用し、家のリビングを感じさせるデザインとしています。

南海8300系8次車の車内(南海電気鉄道ホームページより)
南海8300系8次車の車内(南海電気鉄道ホームページより)

泉北9300系では、床はもちろん、壁やドア、袖仕切りも木目調としています。袖仕切りの形状は、南海8300系の2両編成と同じタイプ。ドア間の座席を6人掛けとしているのも、南海8300系2両編成と同じです。

座席のカラーは、一般席が赤系濃淡の2色、優先席は泉北7020系と同じ黄色としています。吊り革の色もベージュ系となっていて、内装のイメージは南海8300系とはかなり違います。

泉北9300系の車内は木目調を多用しています
泉北9300系の車内は木目調を多用しています

また、9300系は優先席と車いす、ベビーカースペース部分の床にアイコンを配しています。

泉北9300系の優先席と車いす・ベビーカースペースの床にはアイコンがあります
泉北9300系の優先席と車いす・ベビーカースペースの床にはアイコンがあります

車内4ヵ所に多言語表示ができる17インチワイドカラー液晶ディスプレイを設置しているのは、南海8300系と同様です。

17インチワイドカラー液晶ディスプレイ
17インチワイドカラー液晶ディスプレイ

9300系は4両編成で新造。通常は2編成を連結した8両編成で運行します。南海8300系も泉北高速鉄道に乗り入れてくるので、兄弟車を乗りくらべてみるのも楽しいかもしれません。

●泉北の特急車両も南海の兄弟車

泉北高速鉄道には、9300系のほかにも、親会社南海の車両の兄弟車があります。それが、特急「泉北ライナー」用の12000系です。

「泉北ライナー」用特急車両の泉北12000系
「泉北ライナー」用特急車両の泉北12000系

「泉北ライナー」は、朝夕になんば〜和泉中央間を運行する通勤特急で、2015年12月5日から運行を開始しました。運行開始当初は、南海11000系を専用カラーに塗装して使用。11000系が検査の際は、南海本線の特急「サザン」で使用している12000系が代走しました。

「泉北ライナー」は南海11000系の専用編成を使用して運行を開始しました
「泉北ライナー」は南海11000系の専用編成を使用して運行を開始しました
南海本線の特急「サザン」用12000系
南海本線の特急「サザン」用12000系

2017年1月27日から「泉北ライナー」の車両を泉北高速鉄道が受け持つことになり、南海12000系をベースとした12000系20番代を導入しました。泉北12000系20番代は、金色ベースに青・黒のラインの専用カラーとしました。座席のカラーも南海の青に対して、泉北は1両ごとに黄・緑・紫・赤と、異なるカラーを採用しています。

泉北12000系は金色をベースに青・黒のラインを配色
泉北12000系は金色をベースに青・黒のラインを配色

余談ですが、南海と泉北の12000系を交換して、泉北12000系を南海本線の特急「サザン」に使用するイベントを実施したことがあります。

●前身の大阪府都市開発時代にも存在した南海の兄弟車

泉北高速鉄道の前身は、1971年4月1日に開業した第三セクターの大阪府都市開発です。南海電気鉄道の子会社となったのは2014年7月1日で、この時に泉北高速鉄道となりました。

大阪府都市開発時代から南海に乗り入れを行ったので、初代車両の100系は、同時期に製造されていた南海6100系(現・6300系)をベースとしています。とは言うものの、車体は南海6100系の丸みを帯びたオールステンレス車体に対して、100系の車体は角張っていて、骨組に普通鋼を用いたセミステンレス製と、外観は全く違います。また、台車も異なります。

大阪府都市開発の初代車両100系(泉北高速鉄道ホームページより)
大阪府都市開発の初代車両100系(泉北高速鉄道ホームページより)
100系のベースとなった南海6100系。現在は6300系に改造されています
100系のベースとなった南海6100系。現在は6300系に改造されています

100系は大阪府都市開発時代の2000年までに全車引退。1両が保存されています。なお100系の台車は南海に譲渡されて南海6100系に装着。その際に形式を6300系に変更しました。

1975年に登場した二代目の3000系は南海6200系がベース。今回は車体の形状も同一になりましたが、3000系の初期車はセミステンレス車体で登場しました。増備車はオールステンレス車体に変更されています。また、3000系の一般席はワインレッド、優先席は灰色としています。

大阪府都市開発3000系は1975年に登場
大阪府都市開発3000系は1975年に登場
3000系のベースとなった南海6200系。外観はほぼ同一です
3000系のベースとなった南海6200系。外観はほぼ同一です
泉北3000系の一部は南海に譲渡され、南海3000系として活躍
泉北3000系の一部は南海に譲渡され、南海3000系として活躍


泉北3000系のうち14両は南海に譲渡され、南海3000系として2013年から本線で使用されています。

大手私鉄が第三セクターから車両を譲渡されるという非常に珍しい例です。

大阪府都市開発が南海車をベースに開発したのは3000系が最後。1990年に登場した5000系、1996年に登場した7000系、2007年に登場した7020系は大阪府都市開発が独自開発しました。

1990年に登場した5000系
1990年に登場した5000系
1996年に登場した7000系
1996年に登場した7000系
2007年に登場した7020系
2007年に登場した7020系


しかし、2014年に南海の子会社である泉北高速鉄道となったことで、再び南海の兄弟車12000系と9300系が登場しました。

泉北9300系の今後の活躍に期待です
泉北9300系の今後の活躍に期待です

ただし9300系は、南海8300系の単なる兄弟車ではなく、泉北高速鉄道の独自性が打ち出されているのは、ファンとしては嬉しい要素だと言えるでしょう。

9300系のデビューにより泉北の車両は6形式となり、全車が南海に直通して、なんば〜和泉中央間で運行します。また、南海からもいろいろな車両が乗り入れてくるので、とてもバリエーションが豊か。そんな泉北高速鉄道にぜひ注目してみてください!

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
続きを見る
閉じる