ホンダ初代「シビック」価格42.5万円〜で発表。世界一厳しい排ガス規制「マスキー法」をクリアしたCVCCエンジンを翌年搭載【今日は何の日?7月11日】

■2輪に続いて4輪でもホンダの名を世界に轟かせたシビック

1972年に誕生した初代シビック
1972年に誕生した初代シビック

1972(昭和47)年7月11日、ホンダがファストバックのコンパクトカー「シビック」を発表、発売は翌日から始まりました。

翌1973年12月には、世界一厳しい排ガス規制「マスキー法」を世界に先駆けてクリアしたCVCCエンジンをシビックは搭載します。これにより、ホンダとシビックの名は世界中に轟きました。


●世界戦略車として燃費と走りを両立したコンパクトカー

初代シビックのキャッチコピーは、“俊敏なベイシックカー、世界の街にスタート!”で、世界市場に進出することを前提にした世界戦略車でした。

初代シビックのサイドビュー、コンパクトながら優れた居住性を確保
初代シビックのサイドビュー、コンパクトながら優れた居住性を確保

コンパクトな2ドアファストバックで、見た目よりも車高が低く、台形のベイシックなスタイリングで、ホイールベースを長くして室内空間を確保した合理的な構造を採用。発売当初のパワートレインは、60PSを発生する1.2L直4 SOHCエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はエンジン横置きFFです。

特にハイパワーエンジンではありませんが、車重が600kgと軽量なので、低燃費と小気味よい走りの両立ができました。車両価格は、スタンダード(STD)が42.5万円、ハイデラックス(HiDX)が49.5万円と、手頃な価格でした。

●燃費の良い、クリーンなクルマとして米国でも人気が沸騰

赤坂プリンスホテルでのCVCC搭載シビックの発表会風景
赤坂プリンスホテルでのCVCC搭載シビックの発表会風景

シビックは、国内販売の翌1973年に米国へ進出。大排気量で大型車が当たり前の米国で、コンパクトカーが受け入れられるかどうかは未知数でしたが、クルマを取り巻く環境の激変がシビックを後押ししたのです。

マスキー法を世界で初めてクリアしたCVCCエンジン
マスキー法を世界で初めてクリアしたCVCCエンジン

それは、1973年に起こったオイルショックと、米国の排ガス規制「マスキー法」でした。一般的な米国車の2倍以上の優れた燃費だったシビックは、たちまち人気モデルに成長。

さらに人気を決定づけたのが、当時不可能と言われていた厳しい排ガス規制、通称「マスキー法」を、CVCCエンジンを搭載して世界で初めてクリアしたことです。シビックは世界で最もクリーンなクルマという称号も獲得したのです。

シビックの成功によって、ホンダは先進的な4輪メーカーというブランドイメージを確立し、続いてアコードも投入、他社に先駆けて米国の現地生産も始めます。

●コンパクトカーからミドルセダンに変貌するも2020年に生産終了

1997年にデビューした初代シビッ・タイプR
1997年にデビューしたシビックタイプR

その後もシビックは、スポーティなコンパクトカーとして、2代目(1979年):スーパーシビック、3代目(1983年):ワンダーシビック、4代目(1987年):グランドシビック、5代目(1991年):スポーツシビック、6代目(1995年):ミラクルシビック、7代目(2000年):スマートシビックの愛称で、人気を博します。1997年には、6代目シビックに「タイプR」が登場し、FFスポーツモデルの代表格として、現在も多くのファンを虜にしています。

2005年にデビューした8代目シビック(1.8Lガソリン車)
2005年にデビューした8代目シビック(1.8Lガソリン車)

ところが、2000年以降シビックは、徐々に上級志向に舵を切り、2005年に登場した8代目は、サイズアップして3ナンバー車となりました。背景には、ホンダにおけるコンパクトカーの役目を、2001年にデビューして大ヒットした「フィット」に譲り、8代目シビックはミドルカーセダンへとステップアップしたことがあります。

しかし、セダンは冬の時代。シビックセダンは2020年に生産終了となり、「シビックハッチバック」と「シビックタイプR」のみ存続することになりました。


日本国内でセダンが消えていくのは、ホンダだけではありません。日産自動車もセダンは「スカイライン」のみ、トヨタもハッチバックのコンパクトカーやSUV、ミニバンに注力し、新型の「クラウン」と「プリウス」は、クーペ風スポーツセダンに変貌しました。国内では、小型・中型セダンが存続するのは難しく、残るのは高級セダンだけかもしれません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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