目次
■往年の白黒パンダカラーを巧みなラッピングで再現
まさに「雷鳴」のごとくシビレる発表でした。GR86に設定された特別仕様車「トレノ・エディション」がリリースされるというニュースは、瞬く間に世界の86ファンへと浸透しました。
特に今でもAE86を愛してやまないシニア層の心をつかんだようで、まさにオヂサンホイホイの様相でネットも沸いています。
2024モデルイヤーとして設定されるトレノ・エディションは、北米で860台、カナダで50台という計910台の限定販売となります。6MT/6ATそれぞれが設定されますが、6MT車は既報のとおりアイサイト付きになります。
エクステリアの特徴は、何と言ってもドアのロッカー部のみに配された2トーン風のカラーリングです。この配色の比率はAE86のハイテック2トーンをオマージュしたもので、あえて前後バンパーまで回り込ませてないというのもデザイナーの巧みな仕事です。やりすぎ感がないワンポイントなので、ドレスアップ手法として流行る可能性も感じます。
写真では白/黒ですが、赤/黒の2トーンも用意されるとのことです。ちなみに白/黒2トーンのことは親しみをこめて「パンダ」という愛称で呼ばれていますが、その旨が公式プレスリリースにも記されていてびっくり。USトヨタの頭のやわらかさに脱帽です。
●40年も経ったとは信じられないほどの現在も続くAE86人気
ボンネットもラッピングでブラック化。こちらは拓海のトレノ(プロジェクトD仕様)のオマージュでしょう。アウタードアハンドル、トランクスポイラー、ドアミラーカバーも共色になっています。
USトヨタは、ドリキン土屋圭市さんをPVの声優として起用するなど、頭文字Dと密接なプロモーションを展開しており、その一連の流れを踏襲したものです。日本仕様だけの名称だった「トレノ」という名が、北米で浸透しているのも間違いなく頭文字Dの影響です。
企画の発端は、AE86発売40周年というアニバーサリーを祝うモデルではありますが、40年も経っているとは思えないほど、現在でも存在感を放っているのがAE86です。もちろん、頭文字Dという作品がなければここまでAE86の人気が持続することもなかったでしょうし、トヨタ86としてリボーンすることもなかったでしょう。
トランクリッドとリップ中央には「TRUENO Edition」のエンブレムが特別装備されます。こちらのフォントも、黒地に白ロゴという往年のそれそのままの仕立てです。
あまりのカッコよさに、こちらをパーツ単体で手配して愛車に付けてみたい、とお考えのGR86オーナーもいらっしゃるかもしれません。しかし、それにはハードルが高そうです。
過去の限定車86GRMN等がそうであったように、オーナーであることを証明できなければ(車検証等)売ってもらえない特別な純正部品になりそうです。
●舶来の極上ブランド、ザックス&ブレンボでフットワークも強化
フットワークは、ZF SACHS(ザックス)ダンパーとブレンボのブレーキキットで強化されます。これは先代ZN6型の後期で追加された「Limited High Performance Package」と同等のオプショナル装備です。SACHSは高圧窒素が封入され、高い路面追従性を実現しています。前4ポット/後2ポットのピストン構成のキャリパーは、レッドにペイントされています。
基準車が18インチ化されたため、ローター径にも変化があるかと思われましたが、前φ325mm/後φ315mmと、先代と同サイズのようです。こちらのパッケージは、日本仕様も含め横展開されていくことでしょう。
インテリアでは、シフトノブが「TRUENO」ロゴが刻まれた専用品となっています。TRDのシフトノブのように、天面が凹面になったこれもまた特別なあつらえ。シートも、サイド部分にレッドのウルトラスエードをあしらった特別なビジュアルです。
リトラクタブルヘッドランプがトレノの特徴でしたが、さすがにそれはかなわぬ夢。それでも、レジェンド名車のエッセンスを注入してくれたことに感謝です。
「86」という車名自体が名車AE86のオマージュから誕生したものですから、まるでミルフィーユのように何層にもヘリテージが盛り込まれています。
中国仕様にはカローラをベースとする「レビン」が存在しますから、トヨタ公式としてレビトレ両車が揃ったことになります。これはとても感慨深いことです。
価格情報はまだオーソライズされていませんが、過去2018年に販売されたザックス、ブレンボ、TRDエアロの付いた特別仕様「TRDスペシャルエディション」がベースグレードから4000ドル以上高かったことから推測すると、部材高騰等を加味して3万5000ドル(約503万円)の大台に乗るのでないかと予想できます。
しかし、プライス以上の価値があるのがこのトレノ・エディションです。
またザックス、ブレンボ単体については、「High Performance Package」としてセットオプション展開となりそうです。先代ZN6では受注期間限定車「GT“Solar Orange Limited”」でしか選ぶことができなかったので、ノーマルから換装したい既納オーナーにとっても朗報です。
当時は24万3000円高というかなりお得な価格設定でしたが、こちらもおそらく30万円以上に値上げされそうです。
やはり気になるのが、このUSトヨタ主導で行われた商品企画が、日本でも展開されるかどうかです。先代ZN6型トヨタ86のモデル末期でファイナルを飾った、黒/金をモチーフとした「Black Limited」を投入した時のような心憎い配慮を望みたいところです。
そして、さらに弾みをつけて、その先のセリカ復活にも期待したいですね。
(文:畑澤 清志/写真:TOYOTA)
【関連リンク】
頭文字D派生の漫画「MFゴースト」ブースでは織戸学監修、GR86ベースのMFGコンセプト2023を披露【東京オートサロン2023】
https://clicccar.com/2023/01/14/1251850/
トヨタ86は「頭文字D」がなければ絶対に生まれていない!
https://clicccar.com/2014/09/17/265100/
最終話を迎えた「頭文字D」が自動車業界にもたらしたものとは?
https://clicccar.com/2013/08/03/227096/