国産リッターSS乗りのリターンライダーが「これぞ理想」と思うモデルが誕生した【バイクのコラム】

■BMWモトラッドがM1000 XRプロトタイプを公開

2023年6月6日、BMWの二輪部門であるBMWモトラッドが「M1000 XR プロトタイプ」を発表しました。

同ブランドのスポーツフラッグシップである「S1000 RR」のエボリューションモデルとして「M1000 RR」があるように、1.0L・4気筒エンジンを積んだハイパフォーマンスツアラー「S1000 XR」の超絶進化版といえるモデルです。

M1000 XRは、既存のS1000 XRをパワーアップ&軽量化により進化させたモデル。空力デバイスも見逃せない。
M1000 XRは、既存のS1000 XRをパワーアップ&軽量化により進化させたモデル。空力デバイスも見逃せない。

現時点ではプロトタイプと付けられ、市販前であることを表現していますが、公開されたプレスフォトなどを見る限り、量産状態であることに疑う余地はないでしょう。

もっともプロトタイプということで、詳細なスペックは公表されていません。それでも車体重量は223kgとS1000 RRより軽くなっていますし、1.0L・4気筒エンジンは147kW(200馬力)となることは公表されています。

日本仕様のS1000XRのスペックを見ると、車両重量226kg(ドイツDIN規格)・最高出力121kW(165馬力)ですから、M1000 XRがどれほどパフォーマンスアップしているかは想像できるでしょう。

●M1000シリーズにふさわしい強心臓

プロトタイプの4気筒エンジンは、最高出力200馬力(147kW)と発表されている。
プロトタイプの4気筒エンジンは、最高出力200馬力(147kW)と発表されている。

ところで、数年前にリターンライダーとなった筆者は、国産リッターSS(スーパースポーツ)として最強スペックといえるホンダCBR1000RR-R FIREBLADEに乗っています。

鈴鹿8耐などのレースに出るために生みだされたモデルで、リターンライダーの手に余ることはわかっていましたが、最高出力160kW(218馬力)という強烈なエンジンを味わってみたい、所有してみたいという感情が先に立って、購入に至ってしまいました。

ですが、なかなかオドメーターの距離は伸びません。

購入前から想像&覚悟していたようにリッターSSは非常にハードな乗りものです。ライディングをするにはそれなりの緊張感が必要ですし、「ちょっと近所まで」といった風に気軽な乗る気にもなりづらいのです。

結果として、せっかく憧れを現実のものとしたのに「宝の持ち腐れ」となってしまっていると指摘されれば、否定できません。

もちろん所有しているというだけで満足度につながっている部分もあるので後悔はしていませんが…。

●200馬力でアップハンのポジションは魅力

ツーリングモデルといえど、最高速は280km/hに達するというからさすがだ。
ツーリングモデルといえど、最高速は280km/hに達するというからさすがだ。

当代の最強エンジンを自分のものにしたい、というのは、自分の生きているうちに内燃機関が消えてしまうかもという未来予測から生まれている感情でもあります。

その視点でいえば、BMWモトラッドのM1000シリーズが搭載している4気筒エンジンも十分に所有欲を満たしてくれるユニットに仕上がっているといえるでしょう。ツアラーであるM1000 XRでもリッター100馬力を実現するというのですから。

しかもM1000 XRはアップハンドルのネイキッドモデルで、リッターSSに比べると、ライディングポジション的にリターンライダーに優しそうなのは魅力です。フルカウルのリッターSSはエンジンの熱がこもってしまい信号待ちなどで厳しいこともありますが、ネイキッドとなっていることで、幾分マシであろうとも期待できます。

4気筒のリッターエンジンを積んだネイキッドスタイルのモデルとしてはホンダCB1000RやヤマハMT-10など国産系にも選択肢はありますが、CB1000Rのエンジンは145馬力、MT-10は166馬力と突出しているわけではありません。国産ではスーパーチャージャーエンジンを積んだカワサキZ H2が200馬力を超えているくらいです。

SI単位の時代に「馬力」にこだわるのは時代遅れかもしれませんが、リターンライダー的にはM1000 XRの、リッターSS譲りの「200馬力エンジン」は、それだけで欲しくなる象徴的なメカニズムと感じます。

M1000 XRの登場に刺激を受けて、国産メーカーからも200馬力超のエンジンを積んだネイキッドモデルが登場することを願ってやみません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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