「ランクルプラド(150系)」にディーゼルモデル復活。ガソリン車より約60万円高い396.5万円【今日は何の日?6月17日】

■プラドにポスト新長期対応のクリーンディーゼルが登場

2015年にディーゼルが追加設定されたランクルプラド
2015年にディーゼルが追加設定されたランクルプラド

2015(平成27)年6月17日、4代目「ランドクルーザー・プラド」にディーゼル車が追加されました。

日本では2008年にディーゼル車に対して、当時世界で最も厳しい自動車排出ガス規制だった国土交通省が制定した「ポスト新長期規制」が施行されることとなり、2007年以降プラドは一旦ディーゼル車の国内販売を廃止していましたが、約8年の時を経て規制をクリアする新たなディーゼル車を復活させたのです。


●ランドクルーザーの乗用車系SUVとして誕生したプラド

ランドクルーザー・プラド(70系)は、ランドクルーザーの派生車で乗用車系SUVとして1990年にデビューしました。

1990年に登場した初代ランクル・プラド
1990年に登場した初代ランクル・プラド

プラドは、3ドア5人乗りのショートボディと、5ドア8人乗りのロングボディを設定。パワートレインは、電子制御2.4Lディーゼルターボと5速MTおよびCVTの組み合わせ、駆動方式は副変速機付パートタイム4WDです。

オフロード性能を生かしながらも、ランクルよりも小ぶりで誰でも扱える身近なSUVのプラドは、オールラウンダーとして人気を獲得しました。

その後、ガソリン車も加えて、2代目(90系)1996年~、3代目(120系)2002年~、4代目(150系)2009年~とモデルチェンジを続けながら、パワーアップしてラグジュアリーなSUVへと進化しました。

ところが、2008年から始まった、当時世界一厳しいとされたディーゼル車のポスト新長期規制が施行されたため、2007年にプラドからディーゼル車が消えたのです。

●ポスト新長期対応で先行した日産と三菱

2008年にデビューしたポスト新長期対応の日産エクストレイル
2008年にデビューしたポスト新長期対応の日産エクストレイル

プラドが撤退したディーゼル車ですが、日産自動車「エクストレイル」は2008年、三菱自動車「パジェロ」は2010年に、新長期対応のクリーンディーゼル搭載モデルを投入。ちなみに、ポスト新長期規制をクリアするエンジンをクリーンディーゼルと呼びます。

2010年にデビューしたポスト新長期対応の三菱パジェロ
2010年にデビューしたポスト新長期対応の三菱パジェロ

ポスト新長期規制は、PM(粒子状物質)に加えて特にNOx(窒素酸化物)が厳しいのが特徴。そのために、NOxを低減させるNOx触媒の装着が不可欠。

日産も三菱も多少の違いはありますが、燃焼室やコモンレール噴射システムなど燃焼系の改良に加えて、排気系にPMを低減するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)とNOxを還元させるリーンNOx触媒を装着して、ポスト新長期規制をクリアしました。

その後、マツダがSKYACTIV-Dを採用して規制をクリアして、積極的にディーゼル乗用車を投入します。当然ながらファンの多いプラドにもクリーンエンジン搭載のディーゼル車を期待する声が多く聞かれましたが、トヨタはその後8年間ディーゼル車を国内へ投入するのを見送っていたのです。

●プラドは尿素SCRシステムで規制をクリア

プラドのリアビュー
プラドのリアビュー

2015年に4代目プラドに設定されたクリーンディーゼルエンジンは、新開発の2.8Lコモンレール噴射のディーゼルターボで、最高出力177PS/最大トルク450Nm、JC08モード燃費11.8km/Lと、高トルクと低燃費を両立させました。

エンジン本体は圧縮比の低減や噴射を複数回に分ける多段噴射、燃焼室形状の最適化などで改良し、排ガスシステムについては、日産と三菱が採用したリーンNOx触媒ではなく、尿素SCRシステムを採用してNOxを低減し、ポスト新長期規制をクリアすることに成功。

車両価格は、ショート5人乗りでガソリン335.0万円、ディーゼル車396.5万円と、ディーゼルの方が61.5万円高い設定でした。

ディーゼルターボは、ガソリンエンジンよりも低中速トルクが太いため、スピード走行よりも力強いトルクを必要とするオフロード走行に向いています。プラドのようなオフロード系SUVにとっては、ディーゼルエンジンが適しているのです。


ファンの要望に応えてディーゼルモデルを復活させたプラドですが、2023年の今秋末にも次期車が投入されるようです。新型プラドにはガソリンHVが設定されるようで注目されていますが、もちろんディーゼル車も継続されそうで、期待は高まるばかりです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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