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■ロータリーエンジン搭載が叶わなかったシャンテ
1972(昭和47)年6月13日、マツダ(当時は、東洋工業)から「シャンテ」が発売されました。
マツダ初の軽乗用車「キャロル」に続いたロングホイールベースが特徴のシャンテでしたが、当初計画されたロータリーエンジンの搭載が認可されず、ガソリン車になったという経緯がありました。
●先進的なアルミ4気筒4ストロークエンジンを搭載した初代キャロル
1960年に登場した、マツダ初の乗用車「R360クーペ」の成功によって乗用車市場に進出したマツダは、第2弾として1962年にキャロルを発売。R360クーペが基本的には2人乗りであったのに対し、キャロルは大人4人が乗れるマツダ初の軽乗用車でした。
キャロルは、軽乗用車初のオールアルミの360cc直4水冷4ストロークエンジンをリアに搭載した、斬新なRR(リアエンジン・リアドライブ)方式を採用。空冷エンジンだったR360は、エンジン音がうるさく、効率よく暖房が使えないという課題がありましたが、大衆車のキャロルはこれらの課題を解消しました。
翌年1963年には、軽乗用車として初の4ドアモデルを追加して大ヒットし、マツダは軽乗用車キャロルで一気にシェアを伸ばしたのです。
●ロータリーエンジンを搭載するはずだったシャンテ登場
好調だったキャロルも1970年に生産を終え、その2年後に登場したのがシャンテです。シャンテは、2ドアセダンのみの設定でしたが、最大の特徴は当時の軽自動車の中で最大となる2200mmのホイールベースで、なんとホンダ「シビック」と同じだったのです。
エンジンは、軽商用車「ポーターキャブ」用エンジンをチューンアップした、最高出力35PSを発生する360cc水冷2気筒2ストローク、駆動方式はR360クーペやキャロルがRRだったのに対し、シャンテは当時としては一般的なFRでした。
異例の長いロングホイールベースが実現する居住性の高さは評価されたものの、2ストローク特有の振動騒音があり、また2ドアしかないこともマイナス要因となったためか、販売は伸びませんでした。結局、軽規格が550ccに移行する直前の1975年に生産を終えました。
マツダは、1967年に世界初のロータリー量産車「コスモスポーツ」を世に送り出し、ローター展開を図っていました。シャンテも、当初の計画ではロータリーエンジンを搭載する予定でしたが、官庁などから認可が下りなかったのです。
●シャンテのロータリー搭載は、なぜ認可されなかったのか
コスモスポーツが搭載したロータリーエンジンは2ローターですが、シャンテは軽自動車なので新しくシングルローターの開発を進めていました。まだ世の中には、ロータリーエンジンの信頼性に疑問を持つ技術者も多く、さらに高性能であるがゆえに、他のメーカーや関係省庁が軽自動車へのロータリーエンジン搭載に難色を示したために、認可が下りなかったとされています。
ロータリー搭載のシャンテの生産、市販は叶いませんでしたが、一方でチューニングショップ大手のRE雨宮自動車は、コスモスポーツに搭載された2ローター(12A型)エンジンを搭載した「REシャンテ」を1980年代に製作しています。
初代シャンテに込められるはずだった思いを叶えたとも言える「REシャンテ」は、ゼロヨン13秒台、最高速度240.5km/hを記録したモンスターマシンとなり、マンガにも登場するなど大きな話題になりました。
マツダのロータリー展開の一役を担うはずだったシャンテのロータリー化が頓挫したことで、シャンテにはある意味、仕方なくレシプロエンジンで市販化したという負のイメージが付きまとったのでしょう。これもシャンテが人気とならなかった一因かもしれません。
「たら、れば」とは言え、初代シャンテにロータリーが搭載されていたなら、どんなことになっていたのでしょうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)