ガソリンスタンドによって「ハイオク」は違う? 「オクタン価Gメン」がどれくらい違うかチェック!! 【その1】

■オクタン価の違い、粗悪ガソリンはチューニングカーにとって厄介でしかないんですわ(AS澤23)

オクタン価Gメン隊長の澤23。最近は臭いで分かるようになったらしい…知らんけど
オクタン価Gメン隊長の澤23。最近は臭いで分かるようになったらしい…知らんけど

ある日、電話がかかってきました。その相手は、大阪・堺にガレージを構える「オートセレクト・ジャパン(AUTO SELECT JAPAN CO.,LTD)」の澤英一郎(Eiichiro Sawa/通称:澤23[サワニーサン])さんからでした。

チューニングカー雑誌・OPTION編集部在籍時代から長年の付き合いである、チューニング業界では泣く子も黙る(笑うかもだけど!)実力派の名チューナー&ドライバーさんです。

「ね~さん、大阪のガソリンがとんでもないことになっとるんですわ!」と。

なんのこっちゃ!?

●チューニングエンジンのカミソリのようなギリギリラインなセッティングを粗悪ガソリンが悪さする!

事の起こりは、マシンセッティング中に「どないなっとんねん???」となったことでした。

オートセレクトチューンドは速い!
オートセレクトチューンドは速い!

オートセレクトでは、R32~R34 GT-R やR35 GT-R、GRヤリスなど、ハイオク指定のスポーツカーチューニング、しかもエンジン内部も触るフルチューニングが当然、多い。

で、まずは仕様に合わせてシャシーダイナモでセッティングをしていくわけですが、そのセッティングも、やるたびに数値が違ってくるというのです。そう、以前と比べて、様子がちょっと違っているとも思えるほど。

今回入れたスタンドに限った話ではないことが前提です!(画像はイメージです)
今回入れたスタンドに限った話ではないことが前提です!(画像はイメージです)

その原因が、アソコのGS、ココのGS、アッチのGS…、入れるガソリンスタンドによっていろいろ違ってくる…ということが分かってきたのです。

●オクタン価Gメン、出撃!

「想定内の点火時期より2度違う! まだブースト1.5kg/cm2弱なのに」(澤23)

オートセレクトほどのキレッキレなチューニングでは、ハイオクガソリンのオクタン価が0.5違うだけでセッティングが大きく変わってきます。

ノッキングレベル/回転/スピード/アクセル開度のログデータ。ノッキングレベルを可視化するとこのような画像となります。ギザギザを横切る斜め上に上がってるラインは、このラインを超えた信号はノッキング発生とみなし自動的に点火時期を下げます。しきい値はチューナーが設定。これで、ガソリンのクオリティーがわかります(コレはLINK ECU装着車)
ノッキングレベル/回転/スピード/アクセル開度のログデータ。ノッキングレベルを可視化するとこのような画像となります。ギザギザを横切る斜め上に上がってるラインは、このラインを超えた信号はノッキング発生とみなし自動的に点火時期を下げます。しきい値はチューナーが設定。これで、ガソリンのクオリティーがわかります(コレはLINK ECU装着車)

また、サーキットで0.001秒を争うようなタイムアタックの1番のポイントはタイヤですが、街乗りハイパフォーマンスカーは特に、ハイオクガソリンのオクタン価次第なんだとか。もちろん最近の市販車には、オクタン価が1.0違おうが、補正するプログラムも入っているそうですが、空燃比変更もするフルチューニングカーではそうもいきません。

「点火時期が変わって来るわ、ノッキング音は出るわ!」(澤23)

市販されているハイオクガソリンは、実際のところどれくらいのオクタン価なのか、売っている場所(GS)によってどれくらいのバラつきがあるのかを「数値化してやろうじゃないか!」ということで、『オクタン価Gメン、出撃!』と相成りました!!

●ガソリンはどうやって作られているのか?

なんで売っている場所、買うガソリンスタンドによって同じハイオクなのにオクタン価が違うのか? GSのおっちゃんに直撃しても教えてはくれないでしょう。ソコにはなにやら「商売の秘密♪」的なものがありそうなのです。

一時期、とあるメーカーのハイオクガソリンが、『オクタン価=100』を連想させるような過剰広告?に対して「90ナンボしかないのにどないなっとんねん!」と話題になりました。

そもそもハイオクガソリンとは、アンチノック性を示す指標となるオクタン価が96以上ないとハイオクとはいえません(レギュラーは89以上)。その辺の詳しいことは、クリッカー自慢の自動車用語解説『クルマの燃料とは?ガソリン・軽油・バイオマス・水素。それぞれの特性と課題を解説』を参照ください♪

ガソリンができるまで(JAFサイトより)
ガソリンができるまで(JAFサイトより)

JAFのサイトを見てみると、「ガソリンができるまで」が分かる図が見つかりました(非リケジョなもんで、詳しいことはなんだかよく分かりませんが)。

油田掘って、出てきた原油を熱し、蒸留する温度によってガソリンや軽油、灯油、重油…などに分けられるんですね。

そうこうして出来たガソリンは「品質確保法」や、自動車ガソリンの「JIS規格(K2202-2012)」により厳しく管理されながら、いろいろな混ぜ物を加え、オレンジ色に着色(他の製品と見分けるため)したりしているようです。このオレンジ色は各社それぞれで、オレンジ色っぽければOKなようです。ちなみに、軽油は薄いイエローで、灯油は無色透明だそうです(この色で見分ける)。

●石油元売りはココとココがくっついて3社になった

昔(昭和~平成の時代)は、街中にいろんなブランドのガソリンスタンドが乱立?していましたよね。しかし、2023年現在は出光興産、ENEOS、コスモ石油の3社が「石油元売り会社」として再編されました。大元には以下の会社が合併、再編されています。

【出光興産】
出光興産/昭和石油/シェル石油
※昭和石油とシェル石油が合併して昭和シェル石油に(1985年1月)。
※出光興産と昭和シェル石油が統合され出光興産に(2019年4月)。

【ENEOS】
日本石油/三菱石油/九州石油/日本鉱業(精製)/共同石油/東燃(精製)/ゼネラル石油/エッソ石油/モービル石油/三井石油
※日本石油と三菱石油が合併して日石三菱へ(1990年4月)、新日本石油へ社名変更(2002年7月)。そこに九州石油が合併(2008年10月)
※日本鉱業と共同石油が合併してジャパンエナジーへ(1992年12月)。
※新日本石油とジャパンエナジーが統合されJX日鉱日石エネルギーへ(2010年4月)
※東燃とゼネラル石油が合併して東燃ゼネラル石油へ(2000年7月)
※エッソ石油とモービル石油が合併してエクソンモービルへ(2002年6月)
※東燃ゼネラル石油とエクソンモービルがエクソンモービルグループ→東燃ゼネラルグループとして、JX日鉱日石エネルギー、そこに三井石油が資本譲渡し(2014年2月)、ENEOSへ(2017年4月)

【コスモ石油】
大協石油/丸善石油
※大協石油と丸善石油が統合しコスモ石油へ(1986年4月)

なんだかいろんなところが統合して統合して統合して…『石油元売り会社は3社←今ココ』って感じですかね。特にENEOSは、10社がジワジワ合併して1社になったということです。ちなみに、独占禁止法というのもあるので、今後は3社以下に減ることは無いようです。

●石油元売り会社は何してるの? 油田からGSに運ばれるまでの流れ

優秀ガソリン「Shell V-Power」を売るシェル石油(出光興産)は、タイ・チェンマイにもある(澤23旅行先)
優秀ガソリン「Shell V-Power」を売るシェル石油(出光興産)は、タイ・チェンマイにもある(澤23旅行先)

ところで、石油元売り会社は何しているのかというと、油田掘って、GSで私たちがクルマにガソリンを入れるまでが、石油元売りのお仕事。「石油販売を行うためのプロセス」はこんな感じです。

1. 資源開発(原油採掘/調達)
2. 原油調達(外航輸送)
3. 石油精製(燃料用石油や潤滑油、石油化学製品の製造)
4. 陸・海上物流(内航輸送・陸上輸送)
5. 石油販売(ガソリンスタンドなどでの石油販売)

油田は海外にしかないので、掘って出てきた原油を船で運んでくる→前に書いた精製をして→各地に運び→GSで売る(私たちが買う)。簡単に言えばこんな流れなのでしょう。

2020年7月4日公開のクリッカー記事『ハイオクガソリン騒動、100オクタン以下というケースも! シェルのVパワーだけ正直でした』や、2020年7月24日公開のクリッカー記事『ハイオクガソリン不正その後。何と!100オクタンのハイオクは今や流通してない?』でも書かれているように、ガソリンの成分(オクタン価だけじゃない?)は規格内に納まっていれば違法ではないようで、じゃ、今回オートセレクト澤23が問題視している、買う場所によって違うオクタン価などは、多分、5.辺りの「元売りの下請けの下請けの下請けの…」がおかしなことになっているのでは?と想像。

オクタン価96以上であればハイオクガソリンとして売れる。じゃ、昨今のガソリン価格高騰を思えば、たとえば98あるオクタン価のハイオクに混ぜ物を入れて96に薄めて売ってもOK!とかいう商売をしてんのか!?な考えを持ってしまうもの。

巷の噂では「ブランド関係なく、タンクローリー1台いくらで売りに来る」「薄めればそれだけ儲けが出る」…おいおい、どないなっとるんや~!です。


さて、オートセレクト澤23率いる「オクタン価Gメン」は、果たしてどんなオクタン価問題をえぐり出してくれるのか? オクタン価を計測する機器も導入し、各地(大阪近辺/鈴鹿周辺/高速道路SAのGSなど)からガソリンを取り寄せてチェック。なんとビックリなオクタン価のばらつき、粗悪ハイオクガソリン、優秀なレギュラーガソリンなんかも登場する(らしい)次回を楽しみにしててください…いつになるかは知らんけど。

(文:永光 やすの/画像:オートセレクト澤23、※イメージ画像含む)

【関連リンク】

AUTO SELECT JAPAN CO.,LTD
https://www.autoselect.co.jp/ja/

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この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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