第3戦鈴鹿は大クラッシュで赤旗終了。GT500の上位は混沌で、WedsSport ADVAN GR Supraが暫定優勝【スーパーGT 2023 GT500】

■450kmレース4連戦の2戦目は真夏を思わせる気温

6月3日(土)、4日(日)に鈴鹿サーキットで開催の2023 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 450km RACE。4日(日)には、その決勝レースが行われました。

2日(金)の台風から3日(土)の朝にかけての新幹線の交通マヒも復旧され、4日午前中の選手紹介やピットウォークなどではレースクイーンも顔を見せるなど、ようやくスーパーGTらしい風景となります。そして気温は28度、体感的には照り返しもあって30度を超えているのでは?と思える日差しです。

レーススタートの様子
レーススタートの様子

この鈴鹿戦は450kmレースで戦われます。スーパーGTの450kmレースは、1人のドライバーがレース距離の2/3以上走ってはいけない、というルールに加えて、給油を伴うピットイン義務が2回というルールもあり、GT500クラスでは全チームがドライバー2名登録のため、どのタイミングでドライバー交代が行われるかも観戦するうえでのポイントとなります。


●SC導入で順位が激しく入れ替わる

13時30分に、三重県警の白バイやパトカー先導による、交通安全啓蒙活動の一環であるパレードラップから、フォーメーションラップに引き続いてスタートが切られます。

au TOM'S GR Supra
au TOM’S GR Supra

ホールショットは36号車 au TOM’S GR Supra、2番手に19号車 WedsSport ADVAN GR Supraと続き、序盤はほぼ順調に予選通りの順位のまま進んでいきます。

前日、3日に行われた予選で、ガスパック容量違反として予選の全タイムを抹消された24号車 リアライズコーポレーション ADVAN Zは最後尾からのスタートとなりましたが、1周目で14番手とポジションを一つ上げて戻ってきています。

au TOM'S GR Supra
au TOM’S GR Supra

8周目にGT300のマシンでタイヤが外れてしまうというアクシデントが起こり、フルコースイエロー(FCY)となります。しかしアクシデント処理の対応からセーフティーカー(SC)導入となり、これまで築いてきた各車のアドヴァンテージが一気に縮まってしまいます。それは、トップのau TOM’S GR Supraも例外ではありません。

13周目にSCは解除され、au TOM’S GR Supraはトップのままレース再開となりますが、WedsSport ADVAN GR Supraとの距離はかなり近づいてしまっています。

WedsSport ADVAN GR Supraのピット作業
WedsSport ADVAN GR Supraのピット作業

26周目にWedsSport ADVAN GR Supraが1回目のピットイン。その後、29周目にau TOM’S GR Supraもピットインしますが、レースに復帰した際は、先にピットに入っていたWedsSport ADVAN GR Supraに先行を許してしまいます。そしてアウトラップでは、23号車 MOTUL AUTECH Zにも抜かれてしまい、4番手までポジションを落とす結果となってしまいます。


●2回目のピットを極限まで引っ張るNiterra MOTUL Z。そしてアクシデント!

GT500の全車が1回目のピットインを終わらせると、WedsSport ADVAN GR Supraはトップに君臨。46周目に2度目のピットインをすると順位は落ちていきますが、この時点でWedsSport ADVAN GR Supraの前にいるマシンは、全て1回目のピットインのみという状態のため、2回目のピットを終えたWedsSport ADVAN GR Supraは実質的なトップとなっていきます。

WedsSport ADVAN GR Supra
WedsSport ADVAN GR Supra

そして、58周目には3号車 Niterra MOTUL Z以外の全車が2回目のピットインを終え、2番手だったWedsSport ADVAN GR Supraが実質トップであることには変わらない状態となっていました。

Niterra MOTUL Z
Niterra MOTUL Z

そんな中、59周目の日立Astemoシケインの手前で、それまで4位だった23号車 MOTUL AUTECH Zの松田次生選手が、争いながら前を行くGT300マシンを左から抜こうとして右リアサイドを接触。そのままスピンからタイヤバリアを飛び越えフェンスに激突するという大クラッシュが発生します。

終盤の4位争いの様子
終盤の4位争いの様子

マシンはモノコックを残して粉々になりますが、その強固なモノコックとロールバーに守られ、ドライバーの松田次生選手は命に別条のない状態として病院に搬送されていきます。

このクラッシュにより、レースは赤旗中断となり、レース再開に向けての調査が進められます。が、フェンスが支柱から損傷していることなどの理由により、安全性の面で続行は不可能、赤旗にてレース終了、58周終了時点での順位を採用ということになりました。なお、全レース距離の75%は超えていたので、順位によるポイントはフルポイントとなります。

Niterra MOTUL Z
Niterra MOTUL Z

ここで問題となったのは、トップのNiterra MOTUL Zが義務ピット2回のうち1回しか消化していなかったことでしたが、暫定結果は単純にマシンの序列のみで行われ、優勝はNiterra MOTUL Z、2位にWedsSport ADVAN GR Supra、3位にau TOM’S GR Supraと発表、この順位で表彰式が行われました。


●ルールの問題で正式結果は後日の発表

この暫定結果に、GT500の参戦チーム13チームのうち10チームが、優勝チームがピット義務を消化していないことを理由に抗議をします。

その根拠となるのが昨年、2022シーズンの第2戦でアクシデントによるピット義務の取り扱いで、2022年第3戦鈴鹿での記者会見時の談話でした。これによると、赤旗中断からのレース中止の際に、レース距離が75%を超えてフルポイントとして成立した場合は、ピット義務は2回消化しなくてはならない。消化していない場合はペナルティを課す、というものでした。

WedsSport ADVAN GR Supra
WedsSport ADVAN GR Supra

この抗議が受理され、6月4日19時55分、2度目に発行された暫定結果では優勝がWedsSport ADVAN GR Supra、2位にau TOM’S GR Supra、3位にMARELLI IMPUL Z、4位にNiterra MOTUL Zとなりました。

しかし、抗議根拠が記者会見での談話であり、ルールに明文化されていないということを理由に、2度目の暫定結果に対してNiterra MOTUL Zのチーム、NDDP Racingが再び抗議。しかし、その抗議は却下されてしまいますが、それによりチームはJAFの審査委員会に提訴。最終的な順位決定は、レース開催日には出来ずに後日、となってしまいました。

ピットアウトするMARELLI IMPUL Z
ピットアウトのMARELLI IMPUL Z

予選結果からのポールポジションはく奪、大クラッシュでの赤旗中断による順位決定の諸々、とルール的な問題が噴出した感のあるスーパーGT第3戦鈴鹿。これらの問題が起こることはままあることですが、観客やファンにわかりやすく説明されるような体制づくりも必要ではないか、と考える機会になったのではないでしょうか。

●スーパーGT2023第3戦 鈴鹿 GT500決勝 暫定結果(2回目)

順位 ゼッケン 車名 ドライバー ラップ
1 19 WedsSport ADVAN GR Supra 国本 雄資、阪口 晴南  58
2 36 au TOM’S GR Supra TOYOTA GR Supra GT500 坪井 翔、宮田 莉朋 58
3 1 MARELLI IMPUL Z 平峰 一貴、ベルトラン・バゲット 58
4 3 Niterra MOTUL Z 千代 勝正、高星 明誠 58
5  100 STANLEY NSX-GT 山本 尚貴、牧野 任祐 58
6 14 ENEOS X PRIME GR Supra 大嶋 和也、山下 健太 58
7 16 ARTA MUGEN NSX-GT 福住 仁嶺、大津 弘樹 58
8 24 リアライズコーポレーション ADVAN Z 佐々木 大樹、平手 晃平 58
9 17 Astemo NSX-GT 塚越 広大、松下 信治 58
10 38 ZENT CERUMO GR Supra 立川 祐路、石浦 宏明 58
11 37 Deloitte TOM’S GR Supra 笹原 右京、ジュリアーノ・アレジ 58
12 ARTA MUGEN NSX-GT 野尻 智紀、大湯 都史樹 58
13 23 MOTUL AUTECH Z 松田 次生、ロニー・クインタレッリ 57
14 64 Modulo NSX-GT 伊沢 拓也、太田 格之進 57
15 39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra 関口 雄飛、中山 雄一 57

(写真:吉見 幸夫 文:松永 和浩

【関連リンク】

GTA、スーパーGT第2戦富士のアクシデント後の流れを説明。再発防止策をドライバーらと共有
https://www.as-web.jp/supergt/820765

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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