マツダ「R360クーペ」デビュー。東洋工業初の乗用車は低価格30万円で軽シェア6割超を占める【今日は何の日?5月28日】

■キュートなスタイリングで先進技術満載のR360クーペ

1960年にデビューしたマツダ初の乗用車R360クーペ
1960年にデビューしたマツダ初の乗用車R360クーペ

1960(昭和35)年のこの日、マツダ(当時は東洋工業)初の乗用車「R360クーペ」が発売されました。

当時は、ちょうどモータリゼーションに火がついた頃、続々と登場した他車の新型車に対抗して、マツダが放った乗用車が、先進技術満載のR360クーペだったのです。


●モータリゼーションとともに登場したR360クーペ

1955年に乗用車産業の促進を目的に政府が打ち出した「国民車構想」が火付け役となって、日本のモータリゼーションは本格的に動き出します。国民車構想とは、既定の条件を満たす自動車を開発すれば、国がその製造と販売を支援するというもので、それに呼応する形で各社はしのぎを削って新型乗用車の開発に取り組みました。

1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた
1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた

トヨタ「トヨペットクラウン(1955年)」、日産自動車「ダットサン1000(1957年)」、富士精密(プリンスの前身)「スカイライン(1957年)」、日産「ブルーバード(1959年)」、日産「セドリック(1960年)」、軽自動車としてはスズキ「スズライト(1955年)」、富士重工業「スバル360(1958年)」と、名車が次々と登場しました。

そして1960年、マツダからは「R360クーペ」がデビューしたのです。

●マツダ渾身の軽乗用車は大ヒット

R360クーペの「R」は、エンジンを後部に搭載するリアエンジン・リアドライブ、「360」はエンジンの排気量356ccを意味します。そのスタイリングは、2人の大人と2人の子どもが乗れる2ドア3ボックスのスポーティでキュートなクーペです。

R360クーペの空冷2気筒4ストロークエンジン、トルクコンバータ付AT
R360クーペの空冷2気筒4ストロークエンジン、トルクコンバータ付AT

モノコックボディとマグネシウム合金を多用した軽量エンジン、さらに湾曲したリアウインドウや前後スライド式サイドウインドウはプラスチック製とし、当時の乗用車の中で最も軽い380kgの軽量ボディが最大の特徴でした。

搭載エンジンは、軽乗用車初の空冷2気筒4ストロークエンジン、トルクコンバータ付AT、4輪独立懸架のサスペンションなど先進技術を駆使して、優れた走りと乗り心地を実現し、最高速度は90km/hを記録しました。

マツダの技術の粋を結集したR360クーペは、洗練されたスタイルと当時の軽乗用車では最も安価な30万円(4速MT)/32万円(2速AT)という低価格で大ヒット。翌年の販売台数は23,417台を記録し、軽乗用車シェアの64.8%に達しました。

●キャロル、ファミリアと続いて乗用車メーカーとしての地位を確立

1962年に登場した軽乗用車キャロル
1962年に登場した軽乗用車キャロル

R360クーペの成功によって乗用車市場に進出したマツダは、第2弾として1962年に軽乗用車「キャロル」を発売。R360クーペが、基本的には2人乗りであったのに対し、キャロルは大人4人が乗れるファミリーカーでした。

キャロルのエンジンは、軽乗用車としては初のオールアルミ合金製の直4水冷4ストロークエンジンで静粛性が向上し、R360に続いたキャロルも、人気を獲得しました。

1964年に登場したファミリア800セダン
1964年に登場したファミリア800セダン

1964年には、マツダ待望の小型車「ファミリアセダン」がデビュー。最高出力45PSのアルミ合金製783cc直4水冷4ストロークエンジンを搭載して、最高速度は115km/hと、世界レベルの動力性能を誇りました。

その後、排気量を1.0Lに拡大した「ファミリアクーペ」「ファミリア1000」と商品力強化を図り、ファミリアシリーズも大ヒットを記録したのです。


R360クーペは、マツダ初の乗用車というだけでなく、国内で戦後最初にクーペと名乗った、特別なクルマなのです。スバル360の陰に隠れがちなR360クーペですが、軽自動車の市場を拡大したのは、確かにスバル360とR360クーペの2台なのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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