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■オフロード走行と街乗りを両立させたコンパクトSUVのパイオニア
1988(昭和63)年5月25日、スズキのコンパクト4WD「エスクード」がデビューしました。
軽のオフロード4WDとして圧倒的な人気を誇っていた「ジムニー」の上のクラスを狙い、オフロード走行も街乗りもできる都会的な雰囲気を持つ4WD車として登場したのがエスクードです。
●エスクードのベースはジムニー
エスクードの基本的なメカニズムやシャシーは、ジムニーのノウハウを生かして開発されました。
そのジムニーの原型は、ホープ自動車が1967年に発売した4WDの軽自動車「ホープスターON型」です。ホープ自動車が経営難に陥り、ホープスターON型の製造権をスズキが譲受。それを、スズキが改良してスポーティなスタイリングに仕上げたのが、1970年に誕生したジムニーです。
初代ジムニー(LJ10型)は、ラダーフレームや頑丈な前後リジットアクスル、2WD/4WDを切り替えるパートタイム4WD、大径タイヤという本格的なクロスカントリー車。
パワートレインは、359cc直2の空冷2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせでしたが、車重が600kgという軽量ボディだったので悪路や砂地でも十分な走破性を発揮しました。
ジムニーは、本格的なオフロード性能と手軽なサイズで大ヒットし、スズキの基幹モデルとなったのです。
●ジムニーの小型車版として登場したエスクード
その後ジムニーは、エンジンの水冷化や4ストローク化を行い、さらに海外向けに排気量を800cc(SJ20型)、1000cc(SJ40型)に拡大したエンジンも搭載し、海外での人気も高まりました。さらに、その上の本格的な小型車への展開のために開発されたのが、エスクードです。
エスクードの基本的な機構やシャシーは、ジムニーのノウハウを生かして開発され、軽量・高剛性を両立させた3分割のサイドフレームとクロスメンバーからなるラダーフレームを採用。
パワートレインは、1.6L直4 SOHCエンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。4WDは、トランスミッションと2速のトランスファーを一体構造としたセンタースルー方式が採用されました。
オフロード車の武骨さを極力なくして乗用車感覚の都会派を演出したエスクードは、136.4万円~というリーズナブルな価格設定もあり、人気モデルとなりました。
エスクードが先んじたクロカンのシティへの流れとも言えるものは、1990年代にトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」など、さらに都会的な雰囲気のライバル車の登場へ向かいます。そのため、エスクードは徐々に厳しい販売を強いられるようになりました。
●最新型エスクードは、ハイブリッド仕様
エスクードは1998年に登場した2代目、2005年の3代目、2015年の4代目と進化を続けましたが、2021年9月に日本での販売をいったん終了します。
これでエクスードも終焉を迎えたのかと思いきや、翌2022年4月にマイナーチェンジで、ハイブリッドモデルの販売を再開しました。
ハイブリッドの仕様は、1.5L直4 DOHCエンジンと6速AGS(オートギアシフト)にモーターを組み合わせたものです。
モーターの出力は従来のマイルドハイブリッドより増強されましたが、他車のフルハイブリッドと比べると出力は小さく、マイルドとフルの中間的なハイブリッドです。
都会派コンパクトSUVのパイオニアは、トヨタ「RAV4」とされていますが、それより前に乗用車とオフロード4WDを融合させたSUVはエスクードだったのです。RAV4は、エスクードのヒットに刺激されて登場したと言えるかもしれません。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)