大荒れの天候を読み切ってGT300を5年ぶりに制したUPGARAGE NSX GT3【スーパーGT 2023】

■荒れた天候でトラブル続出のGT300

スーパーGT開幕戦「2023 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」の決勝レースが4月16日に岡山国際サーキットで行われました。

スタートの様子
スタートの様子

朝から晴天で迎えた2023年開幕戦の決勝日でしたが決勝開始の直前から上空には厚い雲が出始めます。午後1時30分に岡山県警察の先導による交通安全啓発のパレードラップが3台のパトロールカー先導で行われ、フォーメーションラップを経て決勝レースがスタートとなります。

序盤をリードするLEON PYRAMID AMG
序盤をリードするLEON PYRAMID AMG

このパレードラップの際にすでに小雨がパラつき始めてはいましたがレインタイヤに履き替えるほどでもなく、各車はスリックタイヤのままレースを周回していきます。

序盤の激しいバトル
序盤の激しいバトル

GT300クラスでは、ポールポジションからスタートした65号車 LEON PYRAMID AMGが1コーナーを先頭で駆け抜けホールショット。それに2号車 muta Racing GR86 GT、7号車 Studie BMW M4が続きます。

そんな中、中団グループはかなりの混戦模様。7周目には後方からGT500クラスが迫ると、そのバトルはいっそう激しさを増します。

しかし、そのバトルに水を差すように12周目にかかるころからついに本格的に雨が降りはじめます。さらに雨脚が強まってくる中で素早くレインタイヤに交換したのは予選6番手から序盤9番手にポジションを落としていた31号車 apr LC500h GT。

タイヤ交換の様子
タイヤ交換の様子

雹混じりの強い雨が降り注ぐと16番手付近を走っていた6号車 DOBOT Audi R8 LMSが1コーナーでコースアウト。さらにバックストレートを走っていた11号車 GAINER TANAX GT-Rのタイヤが脱落してストップ。またピットロード出口では360号車 RUNUP RIVAUX GT-Rがストップと、相次いだトラブルに、フルコースイエロー(FCY)が出され、そしてセイフティカー(SC)導入となります。

序盤に降りだした雹を伴った大雨
序盤に降りだした雹を伴った大雨

GT300クラスの各車は、このFCY、SC導入の前後でピットインを行いレインタイヤに交換したことで順位がかなり混乱。ここで大きく順位を上げたのが9号車 PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMGと52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GT、そして18号車 UPGARAGE NSX GT3となります。

LEON PYRAMID AMGのピット作業
LEON PYRAMID AMGのピット作業

22周目にSCが解除されますが、この時点では雨はありますが陽が射してきたことで路面は乾いていきます。30周過ぎには下位のチームでスリックタイヤに交換するチームも現れ始め、40周を過ぎるとスリックタイヤのラップタイムの方が有利になっていきます。

この状況下でUPGARAGE NSX GT3は小出峻選手から小林崇志選手に交代。さらにスリックタイヤへとチェンジします。この時トップを走っていたLEON PYRAMID AMGも39周目に篠原拓朗選手から蒲生尚弥選手へ交代。

レインからスリックへのチェンジの判断が早かったUPGARAGE NSX GT3
レインからスリックへのチェンジの判断が早かったUPGARAGE NSX GT3

そのほかのチームも続々とドライバー交代とスリックタイヤへのチェンジを行っていきました。

●SCからの赤旗中断でレース終了。最後に笑ったのはUPGARAGE!

ドライバー交代が概ね終わった頃の44周目、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTがヘアピンでコースアウトでコース外に止まってしまったためFCYが導入されます。その直後に雨がまたもや強く降り始めていきます。

47周目にレースは再開されますが、バトルを展開していた9号車のPACIFIC ぶいすぽっ NAC AMGと88号車 JLOC ランボルギーニ GT3がコースアウトし、9号車はコース上で止まってしまいます。雨が強くなってきたこのタイミングでのアクシデントで、またもSCが導入されることになります。このタイミングでサーキット周辺で落雷があったために赤旗が提示されて、レースは一時中断となりました。

序盤に降りだした雹を伴った大雨
序盤に降りだした雹を伴った大雨

レースは午後3時35分にSC先導で再開されますが、雨の勢いは衰えず。赤旗の前にはほぼ全車がスリックタイヤを履いていたこともあって、ピットオープンとなっていたこともあり54周目にはほぼ全てのチームがピットイン。レインタイヤへの交換を行います。

UPGARAGE NSX GT3
UPGARAGE NSX GT3

そのままSCの導入は続きますが、今度は8番手のmuta Racing GR86 GTの左リヤタイヤが脱落でストップ。アクシデントの処理が行われる間にまたもや雨が勢いを増し、2度目の赤旗となります。

その後、午後4時20分にレースはSC先導で再開されますが雨脚は勢いが衰えず、午後4時25分頃に3度目となる赤旗が提示され、レースはそのまま終了となりました。

HACHI-ICHI GR Supra GT
HACHI-ICHI GR Supra GT

この赤旗提示によるレース終了によりGT300クラスは、18号車 UPGARAGE NSX GT3が優勝。小林選手とチームにとっては2018年の開幕戦岡山から5年ぶりの2勝目で、NSX GT3導入からは初勝利となります。そして小出選手はSUPER GTのデビューレースでの優勝となりました。

2位はポールポジションからスタートした65号車 LEON PYRAMID AMG、3位は244号車 HACHI-ICHI GR Supra GTとなりました。

GT300暫定表彰式
GT300暫定表彰式

選手権シリーズのポイントでは、GT500で優勝した23号車 MOTUL AUTECH Zが規定周回数の75%(小数点以下切り捨て)の61周を走行していたためにフルポイントが付与されることとなり、UPGARAGE NSX GT3は20ポイントを獲得しました。

変わりやすい天候だった開幕戦岡山。最初の大雨からドライ路面に移り変わった際に、早めにスリックタイヤにチェンジして前に出ていったUPGARAGE NSX GT3の、天候を読み切ったともいえるタイミングの良さ、が勝利を呼び込んだと言えるのでしょうか?

デビューウィンの小出選手
デビューウィンの小出選手

次戦はロングディスタンスな450kmというレース距離の富士戦となります。ドライバー交代を2回行うということで、ピットの作業も順位に大きく影響するレース。どんな展開になるのか興味が尽きません。

●スーパーGT2023開幕戦 岡山 GT300決勝結果

順位 ゼッケン 車名 ドライバー 周回数
1 18 UPGARAGE NSX GT3 小林 崇志、小出 峻 59
2 55 LEON PYRAMID AMG 蒲生 尚弥、篠原 拓朗 59
3 244 HACHI-ICHI GR Supra GT 佐藤 公哉、三宅 淳詞 59
4 27 Yogibo NSX GT3 岩澤 優吾、伊東 黎明 59
5 52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 吉田 広樹、川合 孝汰 59
6 7 Studie BMW M4 荒 聖治、ブルーノ・スペングラー 59
7 87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3 松浦 孝亮、坂口 夏月 59
8 60 Syntium LMcorsa GR Supra GT 吉本 大樹、河野 駿佑 59
9  4 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口 信輝、片岡 龍也 59
10 56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R J.P.デ・オリベイラ、名取 鉄平 59
11 10 PONOS GAINER GT-R 安田 裕信、大草 りき 59
12 50 ANEST IWATA Racing RC F GT3 I.オオムラ・フラガ、古谷 悠河 58
13 30 apr GR86 GT 織戸 学、上村 優太 58
14 96 K-tunes RC F GT3 新田 守男、高木 真一 58
15  5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 冨林 勇佑、松井 孝允 58
16 31 apr LC500h GT 嵯峨 宏紀、小高 一斗 58
17 25 HOPPY Schatz GR Supra GT 菅波 冬悟、野中 誠太 58
18  2 muta Racing GR86 GT 堤 優威、平良 響 57
19 48 植毛ケーズフロンティア GT-R 井田 太陽、田中 優暉 57
20 22 アールキューズ AMG GT3 和田 久、城内 政樹  57
21 6 DOBOT Audi R8 LMS 片山 義章、R.メリ・ムンタン 56
22 61 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口 卓人、山内 英輝 51
23  9 PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG 阪口 良平、リアン・ジャトン 47
24 88 JLOC ランボルギーニ GT3 小暮 卓史、元嶋 佑弥 47
R 20 シェイドレーシング GR86 GT 平中 克幸、清水 英志郎 35
R 11 GAINER TANAX GT-R 富田 竜一郎、石川 京侍 14
R 360 RUNUP RIVAUX GT-R 青木 孝行、田中 篤

(写真:吉見幸夫 文:松永 和浩

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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