■「IS500 “F SPORT Performance”」の850万円は、実力からするとバーゲンプライス!?
レクサスは、2030年までに全カテゴリーでバッテリーEV(BEV)のフルラインナップ化を実現し、2035年にはグローバルでBEV100%の販売を掲げています。つまり、テスラのようにBEV専業メーカーを目指す構えです。
BEVの普及は、中国に代表されるように国策といえる政策や購入補助金の存在が大きく、日本も含めて購入補助金がゼロである場合、どれだけ売れるのかは未知数ともいえます。
ヨーロッパでは、内燃機関(ICE)の合成燃料も許容するという話題からも分かるように、「XXXX年」に向けては、政策の転換や軌道修正なども十分にあり得そうです。
ライフサイクルアセスメント(LCA)から見ても、いずれは徐々に電動化するという大きな流れは変わらないはずで、純ガソリンエンジンや純ディーゼルエンジン車に乗れる時間は、カウントダウンが始まっているかもしれません。
とはいえ、合成燃料なども含めた技術革新により、「いつか石油は枯渇する」といわれても枯渇しないように、ICEも絶滅せずにしぶとく残るような気もします。
いきなり脱線しましたが、ICEの魅力を存分に味わえるモデルが、レクサスにもまだ残っています。
2022年夏に発売された500台限定の「IS500“F SPORT Performance”」の特別仕様車「“F SPORT Performance First Edition”」は、500台の枠に対して6000件を超えるオーダーがあったそう。
●ヤマハ発動機製の5.0L V型8気筒エンジン「2UR-GSE」を搭載
ヤマハ発動機製の5.0L V型8気筒エンジン「2UR-GSE」は、IS F、RC Fの心臓部でもあり、かつてのIS FからRC Fへの搭載にあたって新型といえる改良が施されています。
新型となるRC F向けでは、最高出力の向上をはじめ、全域でトルクを高め、レスポンスと音質面の向上も盛り込まれています。
さらに、最大熱効率を37.8%にまで引き上げ、最新の環境規制にも対応。水冷だけでなく空冷オイルクーラーの追加などにより、サーキット走行も見据えています。
最高出力481PS/最大トルク535Nmという圧倒的な動力性能により、どこからでも湧き出るような力感が得られるだけでなく、自然吸気ならではのスムーズなエンジンレスポンスに魅了されます。
同時に、IS500は、かつてのIS Fや現行RC Fとは異なり、日常使いも快適にこなす乗り味の良さも備えています。足はそれなりに引き締められていながらも、圧倒的といえるボディ剛性感を備えることもあり、後席も含めて不快な動きはかなり抑えられています。
前後にヤマハ発動機の「パフォーマンスダンパー」が備わり、走りの質にも大きく寄与しているのは間違いなく、ファミリーでも許容できそうな乗り心地。普段は、2人乗車までが多くても後席にゲストを迎えられるような仕上がりになっています。
なお、「IS350“F SPORT”」からは、コイルスプリング変更(ばね定数変更)、AVS(Adaptive Variable Suspension system)と、電動パワーステアリング(EPS)変更(AVS/EPSともに制御定数変更)、トルセンLSD(リヤディファレンシャルギヤ)などが変更されています。
また、動力性能にふさわしい制動力も備えています。ブレーキはフロントに356mm、リヤに323mmの大径ブレーキローターが配され、踏みはじめから停止時まで扱いにくさもほとんど抱かせません。
エクステリアは、ボンネットフードの造形や専用ブラックキャリパー、4連エキゾーストマフラーなどにより、ひと目でただ者ではないと分かるテイストでありながらも、大人のスポーツモデルという品も備えてるように映ります。
なお、IS350“F SPORT”からは、エンジンフードとフロントフェンダーパネルのデザイン変更をはじめ、前後バンパーガーニッシュの意匠変更、先述した専用4連エキゾーストマフラーの採用、専用アルミホイールの新規設定、専用ブラックブレーキキャリパー、ボディカラーの追加設定(チタニウムカーバイドグレー)、専用エンブレム(フロントフェンダー)もメニューに盛り込まれています。
インテリアは、専用8インチTFT液晶メーター/専用オープニング、専用スカッフプレート(フロント:ステンレス“F SPORT”ロゴ付)、ブラックの専用ウルトラスエード、“F SPORT”専用L texスポーツシート(運転席ポジションメモリー/運転席・助手席ベンチレーション機能付)、専用ウルトラスエード(ドアトリムアームレスト/メーターフード/ニーパッド/フロントコンソール部)、専用ディンプル本革+ウルトラスエードステアリング(パドルシフト付)が、IS350“F SPORT”からの変更点になります。
ライバルは、ターボエンジンを積むBMW M3、3.0L V6を積む日産スカイライン400Rなどのほか、ホンダ・シビック タイプRも挙がりそう。
カタログモデルであるIS500は、どれくらいの納期待ちになるか分かりませんが、タイプRはオーダーが一時停止状態、M3は1300万円超え、スカイライン400Rはややクラシカルなテイストとなると、850万円(カタログモデル)というIS500の魅力が断然際立って感じられます。
●ボディサイズ:全長4760×全幅1840×全高1435mm
●価格
「IS500 “F SPORT Performance”(カタログモデル)」:850万円
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)