目次
■他では見かけない親切がちらほらと・・・
eKワゴン・ユーティリティのお話はまだまだ続く。
eKワゴンのリアル試乗第10回めは、採り上げ項目が思った以上に多かったために、ユーティリティ編としては3回め。こんどこそこれでおしまいにします。
今回は収容部を集めたストレージ編です。
●収容スペース
・カードホルダー・タイプA、タイプB
前回の運転席まわり編で述べていますが、ここでももういちど。
運転席のサンバイザー、ルームランプ前方に、それぞれカードホルダーがあります。どちらも駐車券なりレシートなりを無造作にヒョイと差し込めるのが便利。
・アッパーオープントレイ(助手席側)
助手席前方には、白いパッド風パネルとグローブボックスの間にできた空間がトレイになっています。このへんも他の軽自動車と同じ造りで、めずらしくはありません。
よく見ると表面に凹凸があり、すべり止めが施されています。
・アッパーオープントレイ(センター)
助手席側トレイと連続してセンター側にもトレイが。助手席側との間に仕切りがあり、こちらも凹凸がありますが、これで不足な方は販社オプションにシリコン製のマットが助手席用とセットで用意されています(インパネトレイマット・税込み4950円)。
このトレイはちょうど空調吹出口の下にあるので、トレイ上にシャッター付きの風の出口をつければ、置いたものを温めたり冷やしたりするのにいいかも知れません。ただの思いつきでいったまで。
・アッパーグローブボックス
これが「ドラえもん」に出てくるのび太の部屋の机ならタイムマシンの入り口ですが、eKワゴンでは引き出し式もの入れです(あたり前だ)。単純に引き出して使うもの入れなんて多くがやりそうなものですが意外となく、アルトラパンにあるくらい。
<UV除菌ランプ(販社オプション)>
くだもののカキ(柿)ではない、海で穫れるほうのカキ(牡蠣)のパッケージング商品には生食用と加熱用とがあります。
生食は運が悪いと食中毒に遭う可能性があるので敬遠するひともいますが、あの生食用の牡蠣が生で食べられるのはとびきり新鮮だから
なのではなく、紫外線殺菌をしている海水に出荷前に浸けているからです。加熱用を生で食べないように。おなか壊します。
というわけで、アッパーグローブボックスにはおもしろい販社オプションが。
「UV除菌ランプ(消費税・工賃込み3万8060円)」です。
カタログ説明をまる写しすると「携帯電話やマスクなどに付着した細菌やウイルスを除菌する深紫外線(UVC)LEDをアッパーグローブボックスに装備。約20分から45分で99.9%の菌を効果的に除菌します。約45分のタイマーで自動消灯も可能。リッドを開けると消灯する安全機能付」なんだって。
スタンレー電気製・265nm深紫外線(UVC)LEDを使用したものですが、コロナ禍時代が生んだ製品でしょう。もしかしたら、スタンレーが提案したのかも知れません。
だからといって、まちがっても生牡蠣を入れたりしないように。同じ紫外線殺菌でも、やり方は全然違います。
・グローブボックス
計器盤の奥行きの割に容量は小さいのは、エアコンユニット、車両全体を監視するコンピューターボックスなどが計器盤裏にぎっしり集まっているため、このようなクルマが多いのは仕方ないでしょう。
eKワゴンのそれも容量はほどほどで、車検証入れが入るか入らないかという程度。後述の車検証入れがあるのでよしとしたのでしょう。
・センタートレイ
今回の試乗期間ではありがたみを感じることはありませんでしたが、車内で過ごす時間が長い、何かの作業時に何かを一時的に置きたいなど、いざ自分のクルマになれば重宝するトレイだと思います。上からつかんで引き出しやすい形になっているのは意図的か。耐荷重は3kgです。
・コンビニエントフック
買いもの袋を引っ掛けるのに使うフック。空の袋を下げてごみ袋に使うもよし(見てくれは美しくないですが)。このフックをただくっつけただけではなく、取り付け面をきちんと造形して座面にしてあるのが丁寧です。こちらも耐荷重は3kg。
・センターロアボックス
フロアのセンター部=インパネ中央下には引き出して使うボックスがひとつ。なくしたら大事(おおごと)な携帯電話にスマートホン、カメラなどを収めるもよし、袋をセットしてごみ箱として使うもよし。
このクルマの場合、たまたまここにETCユニットがくっついていました。
・シートアンダートレイ
前項までのもの入れはG、Mともに備わるものでしたが、このシートアンダートレイだけはGだけの誂え品。
筆者の旧ジムニーシエラにもありますが、こちらeKワゴンのほうが容量は大きく、造りもしっかりしているように思えました。カタログでは靴を入れていますが、社外品ナビ他、自前で取り付けた電装品の取扱説明書、ファイル、ノートなどを収めるのにいいでしょう。
・車検証入れ(助手席ドア)
ワゴンRの助手席クッション下のバケツ式もの入れが、その後の歴代ワゴンR、ひいては他のスズキ車に波及した伝統的収容スペースなら、こちらeKワゴンのそれは、助手席ドアの車検証入れ。ドア内張り後端のふたを外すとポケットが現れ、分厚い取扱説明書込みの車検証ケースを収容可能。その代わり地図などを収める(というひとはナビの普及で少ないと思うが)ためのドアポケットはなくなります。
・大型プルハンドル
日産デイズの説明資料を見たらもの入れに位置づけられていました。「ドアの開閉を容易にするとともに、乗車中には携帯用ティッシュなどちょっとした小物などを置けて便利です」と。
・ドアポケット
ドアポケットは、トリム全体の中にうまくインテグレートされ、きれいな造りになっています。奥行きというか厚みというべきか、ドアを攻め込んででも車室を広くしたい軽自動車としてはよく確保してある部類です。
・シートバックポケット
こちらもGだけの特権装備。助手席側に設置されています。
・ドリンクホルダー
インパネ左右にひとつずつ、左右ドアポケット前方にひとつずつ、リヤドアのアームレスト前方にひとつずつのほか、さきほどわざと黙っていたセンタートレイ部にひとつ・・・合計7つで、定員4名に対して約2倍の数を備えています。
センタートレイのホルダーは、トレイ上左半分を引き出すと現れますが、カップはトレイが下支えする仕掛け。というわけで、トレイのみ使用時は単体で板が出てきますが、カップホルダーだけを引くとトレイもいっしょに出てきます。
●トランクルーム
エンジンルームを詰めて拡大したキャビンの多くを乗員に充てるとなると、自然と荷室サイズは限られてきます。ことにeKワゴンは軽自動車なのでこのへんやむなし。
ただ、それをカバーするのにリヤシートにはスライド機構が備わり、これはGとMの両方についています。
可能なら前席同様、左右分割はバックレストだけではなく、座面も分けて左右別個でスライドできるようにしてほしかったところですが、軽自動車も安くはなくなったのでヘンにコスト高になるような提案はしないほうがいいかな。
バックレストを倒せば広大な空間が現れます。もちろん日産ADバンやトヨタプロボックス並みとはいいませんが、ちょっとそこまで行ってくるという使われ方のクルマなら、フル積載するチャンスもめったにないだろうから、これで充分です。
より多くのスペースをお望みの方は、上方にキャビンが拡大されたeKスペースをどうぞ。
・肩口スライドレバー
リヤシートはリクライニング、スライド機構付きであることは何度も述べました。
リクライニングの解除レバーは、左右シートバックの車両外側にあります。
スライドレバーが足元にあるのは当然として、もうひとつ荷室拡大時、バックドア側からでもスライドさせられるよう、背もたれ側にもあるのが親切です。この肩口スライドレバーはGに限られますが、手を伸ばしやすい右シートバックの左ショルダー部にあるのが○なら、操作力が軽いのも○。車庫入れ編で書きましたが、リヤガラスが開閉できるハッチ式であれば、より存在意義が増したでしょう。
筆者が使っていた後期型ティーダは室内でしかスライドを行えず(前期型ではリヤシートスライドが荷室側からシート下のレバーでできたのに、後期型でなくなった)、動かしたければリヤドアにまわり込む必要がありました。不便極まりなし!
3度めになりますが、前席から振り向いただけで後席の荷物に手が届くよう、前席スレスレにまでスライドさせるべし。利便性はさらに向上するでしょう。
ところでこのeKワゴンで、背もたれを前に傾けた状態でレバーを引いてスライドするかというくだらないいたずらをしてみたらちゃんとスライドしました。どういう構造なんだろう?
・ラゲッジアンダーボックス/応急パンク修理キット
荷室フロアはリヤシートスライドに呼応して伸縮する樹脂ボードがついています。ボードを上げたとき、ヘッドレストに引っ掛けて固定できるフックがついているのは親切。
ボード下にはもの入れスペースがあり、さらに下にはスペアタイヤではなく、応急パンク修理キットが。パンク率低下で1度も使わないまま廃車、ついでに重量軽減もということでいまのクルマは省かれていますが、トラブルを確実に収束させるにはやはりスペアタイヤのほうが勝ります。
これも増える傾向なのですが、eKワゴンはジャッキ一式すらなく、販社オプションとなっています。
・バックドアハンドル
・・・と勝手に命名しました。バックドア底部右側に配置。全開時はルーフプラスアルファの高さまでなので、身長157cmのユキさんにも充分手が届きますが、それでも届かないという方は、販社オプションのテールゲートストラップ(工賃・消費税込みで5104円)を注文するといいでしょう。
本当はバックドア内面に穴ぼこを開け、逆手で閉めるようにしたほうが力を入れやすいのと、左右に設けてほしいと思っています。
世の中、右利きが多いから右に設置したのでしょうが、右手で閉める場合、ひとは車両左にオフセットした位置に立って閉めるほうが上体をのけ反らせることなく閉められます・・・ということを考えたり考えたりしなくてもいいよう、のっけから左右につけてくれればいいのに。
・バックドアのゼロポイント
2本のダンパー(ガスステー)で支えられるバックドアは、どのクルマにも、その開閉途中で上がりも下がりもしなくなる停止位置が必ずあり、これをゼロポイントといいます。アトレー試乗のストレージ編で、たぶん自動車メディア史上初で解説した話ですが、eKワゴンの場合はどうか?
ユーザーの利便性に直接響くことはないのですが、このクルマの場合、その角度は、ナンバープレート取付面での筆者計測で、鉛直から下は37.6から上は43.9度の範囲でした。ゼロという割には範囲がありますが、まあ、実測値であるということで。気温や季節によってガスステーの内圧も変化するので、この範囲が変わることもあるでしょう。まあ、参考までに。
●整備性
・エンジンルーム
ここまで何度か書いてきたように、限られた軽自動車サイズの中でキャビンをより多くするため、エンジンルームは攻め込まれたパッケージです。フロントガラスがエンジン半分を覆っているため、おおがかりなエンジン修理をするとなると整備士泣かせのレイアウトでしょう。
・フロントランプの交換性
DIY派オーナーからすると同じ理由でバッテリー交換が容易ではなさそうですが、ランプ裏には手が入るスペースがあるので、LED球ではないのを活かし、すべてのフロントランプの自前交換は可能です。
エンジンルームがぎっしりのクルマは、たいていはランプ裏にスペー スがなく、いっぱいにタイヤをまわし、カバーを外したホイールハウス裏から手を突っ込まないとランプ交換ができないクルマもある・・・そのへん、eKワゴンは常識的で、車幅灯とターンシグナル球は、1個につきものの15秒で外せました。球を差し替え、ランプ筐体内に戻すのに、おそらくひと球45秒はかからないでしょう。ヘッドライトのハロゲン球は試していません。
何もかもが値上がりしている昨今、電球交換くらいは自分で行うべし!
・ウォッシャータンク
・・・の容量は、ワイパーのフロント・リヤ兼用の1.5L。最低2Lはほしいところです。補給口が顔を出しているだけでタンク本体は隠れて見えないのと、ふたにも何もついていないので、残量を知ることは不可。スイッチ操作してモーターの空まわり音の判断でカラを判断するしかない!
・リヤランプ
唯一LEDなのが残念なストップランプは別に、テール、ターンシグナル、リバースランプは電球で、バックドアを開けて姿を表すランプ筐体を固定するボルトを外せば筐体も外れ、裏のソケットに手をやることができます。試したわけではないので、フロントとともに、リヤも自前作業ができるので、「何でもおれが」という自前主義のひとにはやさしいクルマです。
というわけで、今回も3部作となってしまったユーティリティ編はこれで本当におしまい。
次回、カスタマイズ編でお逢いします。
(文:山口尚志 モデル:海野ユキ 写真:山口尚志/三菱自動車工業)
【試乗車主要諸元】
■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕
●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:154万0000円(消費税込み)