ATしかない現行ホンダ「フィット」がS耐に参戦できるわけとは?【スーパー耐久2023】

■現行のGS4型ホンダ FITはATしかないはず…

Honda Cars Tokai J-net FIT
Honda Cars Tokai J-net FIT

2023年3月18日(土)、19日(日)に鈴鹿サーキットで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook 第1戦「SUZUKA S耐」。

1500ccクラスのコンパクトカーで争われるST-5に、新型のマシンが投入されました。222号車 Honda Cars Tokai J-net FITがそれです。

Honda Cars Tokai J-net FIT
Honda Cars Tokai J-net FIT

Honda Cars Tokai J-net FITは、現行のGS4型フィットをベースに、レーシングカーとして製作されていますが、現行のフィットはe:HEVもガソリン車も、全てオートマチックミッション(AT)のはず。

なおかつガソリン車は、このクラスでは珍しいトルクコンバータータイプのAT搭載で話題になったことは記憶に新しいところ。

GK5型FIT iiiのMTを移植
GK5型FIT iiiのMTを移植

そんな現行フィットをベースにしたHonda Cars Tokai J-net FITは、レーシングカーとして走れるのでしょうか?

実は、このHonda Cars Tokai J-net FITは1つ前の型、GK5型フィット3 RSのマニュアルトランスミッション(MT)を移植していたのです。

●スーパー耐久ならではの特認制度でMT化

スーパー耐久には特認制度というものがあり、レギュレーションの枠の中で、その車種特有の事情がある場合は、ある条件を満たせば出場できるというものです。

たとえば、ST-3クラスのレギュレーションは『3500cc未満のFR車』という規定ですが、Z34型フェアレディZのエンジンは3.7L。しかし、『NISMOが用意したコンピューターのデータに一切の手を加えない』という条件で、ST-3クラスの出場が認められています。

Honda Cars Tokai J-net FIT
Honda Cars Tokai J-net FIT

ST-5クラスの対象であるコンパクトカーは、昨今、MTが少数派となっており、ATしか用意の無い車種が増えています。日産のノートやキックスなどはCVTやe-POWERしか存在しないため、スーパー耐久への参戦はありません。

GS4型フィットも全車ATのため、本来は出場には不向き。が、先代のGK5型フィット3のMTが移植できるということで、新型車にも出場の門戸を広げるという意味合いもあって、特認されての出場になったのです。

GK5型FITのTHE BRIDE FIT
GK5型FITのTHE BRIDE FIT

現在のスーパー耐久ST-5クラスは、マツダ・ロードスター、マツダ2、トヨタ・ヤリス、ヴィッツ、ホンダ・フィット3(GK5型)などが戦っていますが、そこに新たにGS4旧型フィットが加わることで、スーパー耐久の中でも屈指のバラエティーを誇るクラスになったのです。

Honda Cars Tokai J-net FIT
Honda Cars Tokai J-net FIT

こういった特認制度もあって、モータースポーツの灯を絶やさないスーパー耐久シリーズ。

カーボンニュートラルなどの開発で話題になるST-Qクラスだけではなく、他のクラスでも注目点がたくさんあります。

次戦、【第2戦 富士SUPER TEC 24時間レース[2023年5月26日(金)~28日(日)]】では、それらの進化も楽しみながらレース観戦すると楽しいですよ!

(写真・文:松永 和浩

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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