V型じゃなくなぜ並列? スズキが新型「GSX-8S」と「Vストローム800DE」に搭載する小型低振動の800cc新ツインエンジンとは?

■モーターサイクルショーに出る新型2モデルに注目

2輪業界の一大イベントがモーターサイクルショー。注目のニューモデルなどがずらり展示されることで、毎年多くのバイクファンが集まりますが、2023年も大坂・東京・名古屋の3ヵ所で開催されます。

左がネイキッドモデルの「GSX-8S」、右がアドベンチャーツアラーの「Vストローム800DE」
左がネイキッドモデルの「GSX-8S」、右がアドベンチャーツアラーの「Vストローム800DE」

そんなモーターサイクルショーに、スズキは2022年に欧州で発表した大型バイクの新型モデル、ネイキッドモデルの「GSX-8S」やアドベンチャーツアラーの「Vストローム800DE」を参考出品することを発表しました。

これら2モデルの大きな注目点は、新設計の776cc・並列2気筒エンジンを搭載していること。現在スズキでは、大排気量の2気筒マシンにはV型エンジンを採用しており、並列2気筒いわゆるパラレルツインは久しぶりです(昔はありました)。

では、なぜ新型のエンジンにはパラレルツインを選んだのでしょうか?

また、このエンジンには量産2輪車で初となる「スズキクロスバランサー」も採用しているといいますが、その働きはなんでしょうか?

ここでは、スズキが開発した新型800ccパラレルツインのメリットなどについて検証します。

●新型エンジンには270度クランクを採用

GSX-8SとVストローム800DEは、いずれも2022年11月にイタリアのミラノで開催された2輪車ショー「EICMA 2022(ミラノショー)」で発表された新型モデルです。

2023年3月より欧州・北米を中心に全世界で順次販売を開始していますが、今回、大阪、東京、名古屋のモーターサイクルショーでも参考出品するということで、国内販売も期待できるといえます。

GSX-8S(写真は欧州発表モデル)
GSX-8S(写真は欧州発表モデル)

アグレッシブなスタイルと、スポーティな走行性能を両立するネイキッドバイク、ストリートファイターというジャンルに属するモデルがGSX-8S。

一方のVストローム800DEは、オンロードからオフロードまで、幅広いシーンで快適に走れるツーリングモデル、アドベンチャーバイクというジャンルに属します。

Vストローム800DE(写真は欧州発表モデル)
Vストローム800DE(写真は欧州発表モデル)

スタイルや装備などは異なる2モデルですが、共通するのは、前述の通り776ccの4ストローク並列2気筒エンジンを新採用していること。現在スズキでは、大排気量の2気筒マシン、1036ccエンジンを搭載する「Vストローム1050」シリーズや、645ccエンジン搭載の「Vストローム650」シリーズや「SV650」シリーズには、V型を搭載しています。

これは主に、振動などが少ないためだと思われます。低回転域から豊かなトルクが発生し、4気筒エンジンと比べると軽量・コンパクトに作れるのが2気筒エンジン。また、バイクの魅力でもある鼓動感を得られやすいことも魅力です。

GSX-8Sのエンジン(写真は欧州発表モデル)
GSX-8Sのエンジン(写真は欧州発表モデル)

ですが、特に大排気量クラスでは振動が大きくなるなどの問題もあり、スズキでは振動が比較的少なく、スムーズな回転やトラックション特性を得やすいV型を選んでいるようです。

一方、今回スズキが開発した並列2気筒エンジンは、まず、270度クランクを採用していることがポイント。4ストロークエンジンは、ピストンが上下運動し吸気→圧縮→爆発→掃気を繰り返すことで出力を出すことはご存じの通り。つまり、ピストンが2往復、ピストンを回すクランクが2回転(720度)で1セットとなり走るわけです。

パラレルツインでは、2つあるクランクの動き方でタイプが別れ、270度クランクのほかにも、360度クランク、180度クランクなどが採用されています。いずれのタイプも、振動の出方が違うなど、それぞれメリットとデメリットがありますが、270度クランクの場合は、理論的に爆発間隔が90度Vツインと同じになり、トラクション性能に優れるといわれています。

●新開発スズキクロスバランサーの役割とは?

軽快な走りが期待できるGSX-8S(写真は欧州発表モデル)
軽快な走りが期待できるGSX-8S(写真は欧州発表モデル)

もちろん、270度クランクでも振動はありますが、そこで登場するのが、新開発のスズキクロスバランサー。

これは、2気筒相互のピストン往復運動により発生する振動を抑えるための1次バランサーをクランク軸に対して90度に2軸配置することで、振動を抑えながら回転をスムーズにし、エンジン自体の軽量・コンパクト化も実現するというものです。

なお、スズキでは、この新しいバランサーについて特許も取得済みだといいます。

ダートでの扱いやすさも魅力といえるVストローム800DE(写真は欧州発表モデル)
ダートでの扱いやすさも魅力といえるVストローム800DE(写真は欧州発表モデル)

こうした新技術を投入した776ccのパラレルツインを搭載するのが、新型のVストローム800DEやGSX-8Sです。

モーターサイクルショーでは展示がメインですから、これら2台がどんな乗り味を持つのかまでは分からないでしょうが、コンパクトなエンジンにより、車体がかなりスリムでシャープなことなどは分かると思います。

●新型の原付二種スクーターも登場

スズキでは、今回のショーでほかにも、やはり2022年に欧州で発表した新型の原付二種スクーター「バーグマンストリート125EX」も参考出品する予定です。

バーグマンストリート125EX(写真は欧州発表モデル)
バーグマンストリート125EX(写真は欧州発表モデル)

こちらは、高い出力特性と燃費性能を両立する124cc・空冷4ストローク単気筒の「SEP-α」エンジンを搭載。フル液晶ディスプレイや巡行時に足を前に出せるフットボードなど、上質な装備が魅力のラグジュアリーモデルです。

また、2023年2月に国内販売を開始した「Vストローム1050DE」をはじめ、スズキのフラッグシップ「ハヤブサ」、根強い人気を誇る「カタナ」など、全16モデルを出展予定です。

【春のモーターサイクルショー2023スケジュール】

「第39回 大阪モーターサイクルショー2023」
期間:2023年3月17日(金)〜3月19日(日)
場所:インテックス大阪

「第50回 東京モーターサイクルショー」
期間:2023年3月24日(金)〜3月26日(日)
場所:東京ビッグサイト

「第2回 名古屋モーターサイクルショー」
期間:2023年4月7日(金)〜4月9日(日)
場所:Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)

(文:平塚 直樹

【関連リンク】

スズキ モーターサイクルショー2023スペシャルサイト
https://www1.suzuki.co.jp/motor/mcs2023/

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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