水素エンジン開発に本腰のトヨタ。「液体水素」採用で実用化を加速へ

■液体水素の採用で実用化を急ぐ

液体水素でテスト走行するGRカローラ
液体水素でテスト走行するGRカローラ

トヨタ自動車がカーボンニュートラル社会の実現に向けて、量産化を念頭に鋭意開発中の水素エンジン車。

セリカ復活に向けた目玉アイテムにも成り得ることから、実用化への動きが注目されています。

同社は水素エンジンを搭載したGRカローラを耐久レースに投入しており、不具合を早期に抽出することで開発サイクルのスピードアップに繋げています。

そうしたなか、2023年2月23日には富士スピードウェイで“液体水素”燃料を搭載したGRカローラのスーパー耐久(S耐)に向けたテスト走行を開始しました。

水素燃料をこれまでの「気体」から「液体」に変更した“世界初の挑戦”となります。

●液体水素に関するこれまでの動き

トヨタは2022年3月、鈴鹿サーキットで行なわれたS耐初戦で、液体水素を燃料とする車両の開発を開始したことを公表。

液体水素搭載のGRカローラ
液体水素搭載のGRカローラ

同年6月に富士スピードウェイで開催された第2戦では、水素エンジンを搭載したGRカローラが完走を果たしており、同社はその際に液体水素の車載システムと移動式ステーションを公開しました。

その後、10月末に車両への液体水素充填と試験走行に成功。

液体水素でテスト走行するGRカローラ
液体水素でテスト走行するGRカローラ

11月からサーキットでのテスト走行を重ねており、液体水素システムの課題のあぶり出しと、レースで戦える車両の造り込みを実施しています。

2023年はS耐開幕戦から液体水素車両の実戦投入を目指しており、そのための技術と人を鍛えているそうです。

●水素燃料を液化するメリットは?

気体水素(左)と液体水素(右)供給設備
気体水素(左)と液体水素(右)供給設備

液化により水素燃料の昇圧(70MPa)設備が不要となり、水素運搬車の小型化が可能に。これにより水素供給ステーションの必要面積も1/4程度に縮小できるそうです。

また車体側においても体積当たりのエネルギー密度が800倍に高まることで航続距離が拡大。軽量化が可能になると言います。

開発の指揮を執る佐藤恒治社長
開発の指揮を執る佐藤恒治社長

液化することで従来の約2倍の水素が搭載可能となるため、後席空間の確保が可能になり、高圧充填の必要も無くなるため、燃料タンク形状の自由度が増して床下配置などが可能に。

今後の課題は水素充填や、貯蔵の際の極低温(-253℃)維持のための技術開発が必要としています。

水素エンジン車の開発ロードマップ
水素エンジン車の開発ロードマップ

水素エンジン開発の指揮を執って来た佐藤プレジデント(現トヨタ社長)は、2022年6月の段階で「開発はまだ4合目であり、市販に向けてまだまだやるべきことが山積している」としていましたが、開発ロードマップからは、すでにパワートレーンの開発段階を経て、市販化に向けた車両の作り込みへと開発フェーズが進んでいることが読み取れます。

●欧州勢も水素関連の技術開発をスタート

実は、これまでBEV(電気自動車)推進派だった欧州勢が、ここに来て水素関連の技術開発に動き始めているようです。

トヨタ ハイラックスFCV
トヨタ ハイラックスFCV

2022年12月2日(現地時間)には、欧州トヨタが英政府のバックアップを受けてFCV(水素燃料電池車)のハイラックスを開発することになったと発表。

英国によるカーボンニュートラル政策の一環で、トヨタが同国のFCV開発に協力することになったそうです。

これは英政府が昨今のエネルギー価格上昇や、リチウム/ニッケルなどバッテリー関連の資材高騰を背景に、BEV一辺倒の危険さに気付き、FCV開発で世界をリードするトヨタに協力を仰いだものとみられます。

欧米が水素のインフラ整備に力を入れるようになれば、トヨタとしてもハイブリッド技術に続き、水素エンジン分野でも世界をリードできる可能性が高まるため、同社の今後の技術開発に大きな期待がかかります。

Avanti Yasunori

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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