アクセルとブレーキのペダル踏み間違え事故はなぜ起きる?再発防止策とは?

■踏み間違いを防ぐためには

●ドライバーの約4人に1人が踏み間違いを経験

誤駐車のイメージ
近年、アクセルとブレーキの踏み間違えによる事故が報道される機会が増えている

近年、ニュースなどで報道される機会が増えているアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故。予想外かつ突発的に起きることの多いこの事故は、時に悲惨な結果を生むこともあります。

交通事故総合分析センター「ITARDA(イタルダ)」が、2018年2月に発行した交通事故分析レポート「アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故」によると、ペダルの踏み間違いなど操作不適による事故の年齢層別の割合は75歳以上がもっとも多いと発表されています。

一方、2022年にホンダが全国1200人のドライバーを対象に行った「クルマと移動に関する調査」では、「ほぼ毎日運転する運転に慣れた人でも、約4人に1人がアクセルとブレーキの踏み間違いを経験」しているという結果が出ています。しかも、「踏み間違いを経験した」と回答した人たちの割合を年代別で見てみると、18〜29歳、30〜39歳が最も多く、高齢者だけでなく若い世代にも等しく踏み間違いのリスクがあるということが分かります。

●踏み間違えはなぜ起こるのか?

ブレーキペダルのイメージ
かかとの位置がずれたり浮いた状態のまま踏み込んでしまうと、想定よりも大きな力がペダルにかかってしまいます

なぜアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故が起きてしまうのでしょうか。

一般的な要因としては、加齢による視覚機能や注意力、集中力の低下、反射神経の鈍化などの、身体能力の低下が挙げられます。

その上で、踏み間違え事故にはいくつかの共通点があるようです。

「ITARDA(公益財団法人交通事故総合分析センター)」のレポートを見ると、どの年齢層においても、駐車場(サービスエリア、店舗の駐車場、コインパーキングエリア等)が、もっともペダル踏み間違え事故割合が高いことが示されています。よって、共通点は「場所」にあると言えます。

では、なぜ駐車場で踏み間違えが起きやすいのでしょうか。これは、駐車時の「ペダルを踏み変える回数」「後方確認時の不安定な体勢」などが関係していると考えられます。

駐車時は、前方・左右・後方への確認を繰り返しながら、シフトレバー・アクセル・ブレーキを交互に使用する必要があり、必然的に作業工程が多くなる傾向にあります。これらの動作を足し算のように繰り返すことで、駐車という答えにたどり着きますが、どこかで間違えてしまうと踏み間違えという計算ミスが生じてしまいます。判断力が鈍っている時はなおさらです。

また、後退時には後方を確認しながら操作する場合もあります。この時、体をねじることで、足の位置もずれてしまったり、アクセルとブレーキの正確な位置を把握できないまま踏み込んでしまうこともあるようです。他にも、かかとの位置がずれたり浮いた状態のまま踏み込んでしまうと、想定よりも大きな力がペダルにかかってしまいます。

駐車時にはこれら全てのことを冷静こなす必要がありますが、1つのミスがパニックを呼び、1つのパニックが掛け算のようにさらなるミスを引き寄せます。前述したITARDAのリポートでも、ペダル踏み間違いの人的要因で最も多いのが「慌て、パニック」であったと論じています。

ドライバーは、「駐車ひとつで、大きな事故につながるかもしれない」ということを忘れてはいけません。

●再発防止策は?

誤発進抑制制御機能のイメージ
衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの、安全装置が搭載された車両を選ぶのも対策の1つ

では、どのような防止策があるのでしょう。

大きく分けて2つのパターンがあります。1つはドライバー自身によるアクション、もう1つはクルマ側のアクションです。

ドライバーが気をつけるべき点として挙げられるのは、正しい運転姿勢を心掛けることです。シートの高さや位置を正しく設定することも、踏み間違え防止に重要なことです。ハンドルやペダルから体が遠離れすぎていると、かかとが浮いたり、細かな操作が行いづらくなります。また、サンダルやヒールの高い靴は避け、運転に適した靴を履くことも大切です。

もちろん、スマホなどの集中を阻害するものを運転中に使用しないことは当然です。

普段から気持ちに余裕を持たせる運転スタイルを心がけるとともに、常に注意力・集中力を保ち、周囲の状況をよく確認して落ち着いた対応ができるようにしておくことが肝要です。また、AT車であれば、駐車場などではクリープ現象を活用するのも効果的です。

次に、クルマ側から考えると、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの、安全装置が搭載された車両を選ぶのも対策の1つです。なお、該当する安全機能が搭載されていないクルマには、後付け可能な対策アイテムを用いるという手もあります。しかし、これらはあくまで予防に対する補助策にすぎません。

予防はしていても、予想外の場所で起こってしまうのが踏み間違えによる事故です。ドライブの際には、「冷静さ」と「程よい緊張感」の同行も必須でしょう。

※2021年11月20日の記事を2023年1月10日に追記・再編集しました。

梅村 ゆき

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