■上空からのレーザー計測で広大な山林をわずか2時間で調査
ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」。今回のテーマは、同社が手がけている森林計測サービスが大きく関わっています。そこには愛知県の住宅メーカー「ウッドフレンズ」が、産業用無人ヘリコプターを使ったヤマハ発動機の森林計測サービスを利用したエピソードが紹介されています。
「ウッドフレンズ」が森林計測サービスを利用する前は、2人で山に入り、樹種を特定しながら幹の直径を計測。
調査対象は1.3ha程度の山林だったにも関わらず、すべてを計測するのに5日間も要したそうです。それも斜度40度以上の山を歩きながら、1300本もの樹木を測定するというのですから大変な労力であるのは、想像に難くありません。
「ウッドフレンズ」の森林資源事業部の今泉史雄さんは「こうした情報をきちんと把握していなければ、私たちが目指す林業の循環や資源の適切な活用を実現することができません」とその重要性を説明しています。
しかし、こうした地上調査が行われたのは、同社が所有する山林のほんの一部だそう。ほかにも約20倍もの面積に達する山林を所有していて、同じように歩いて調査するのは、現実的ではないのも容易に想像できます。
そこで、今後の可能性として検討するために、2022年6月、ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターを使った森林計測サービスを利用し、地上調査との比較可能な1.3haの森林調査を実施。従来の人力(徒歩)による地上調査と、上空からのレーザ計測の調査で感じた違いは、やはり圧倒的といえる効率の差です。
今泉さんは「一番の違いは効率。地上調査では2人で5日間かかったのに対し、無人ヘリの計測はわずか2時間で完了しました。それから、高精細な地形図を取得できたこともレーザ計測ならではの利点です」と感想を漏らす反面で、樹種の特定には多少の誤差もあったとのこと。
ただし、データを積み重ねることでさらに精度を高めていって欲しいと期待も抱いたようです。
また、ウッドフレンズ企画室の鍛治由織さんは「弊社が進めている木質資源カスケード事業では、木質資源の利用可能性を広げ、地域の林業や森林の循環につなげていく挑戦です。伐って、使って、植えて、育てる。これを循環させるために、林業と建設資材生産、住宅建築販売までを一貫して行う製造小売を展開し、山林の取得や製材工場の稼働を目指しています」と付け加えています。
戦後の拡大造林政策によって作られた人工林の多くが主伐(収穫)、間伐(間引き)を必要としていながら、その多くが放置されています。
余談ですが、花粉症の筆者にとっては、戦後の植林政策が2人に1人が発症するという、この国民病も引き起こしたと指摘したくなりますが……、いずれにしても山林が国土の大半(約67%)を占める日本にとって重要な課題です。
話を戻すと、住宅用建材の主役を輸入材が担う中で、こうしたチャレンジは、健やかな森林、健全な林業にとって欠かせない事業であるはずです。そして、低炭素社会の実現に向けた取り組みの第一歩でもあり、それは、森林資源の正確な把握と適切な管理にあるはずです。
ヤマハ発動機の森林計測技術も、その一翼を担っています。
(塚田勝弘)