タンチョウヅルも見られる!「SL冬の湿原号」2023年の運行開始!道東ドライブ途中にSL乗車もいけます

■釧路湿原に沿って走るSL列車

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釧路駅で出発を待つ「SL冬の湿原号」

JR北海道が毎年冬に運行している「SL冬の湿原号」が、今年も走ります。

「SL冬の湿原号」は釧路〜標茶間を走るSL列車で、2000年から運行しています。列車名の由来は沿線に広がる釧路湿原で、雄大な大自然の風景を満喫することができ、エゾシカを初めとした野生動物に出会えることもあります。

釧路湿原を抜けた先にある茅沼駅は、タンチョウヅルがやって来る駅として有名で、車内からタンチョウヅルを見ることができます。

現在は無人駅の茅沼駅が有人駅だった昭和30〜40年代に、自然災害で餌不足を心配した茅沼駅長が餌付けしたのがきっかけで、毎年タンチョウヅルが飛来するようになったと言われています。

●けん引機C11形171号機はどんなSL?

「SL冬の湿原号」をけん引しているSLは、C11形171号機(以下C11 171)です。

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「SL冬の湿原号」のけん引機、C11形171号機

C11形は1932〜1947年に製造されたタンク式SL。タンク式SLとは、石炭庫と水槽を本体に搭載してバック運転を容易にしたSLで、C11形は本線運転から構内の入換まで使える万能機です。

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「SL冬の湿原号」の復路はC11 171がバック運転でけん引します

C11 171は1940年に川崎車輛(→川崎重工業→現・川崎車両)で製造。中京エリアで使用された後、1942年に北海道の朱鞠内機関区に転属しました。以後、道内各地を渡り歩き、1974年に釧路機関区に転属。1975年に引退するまで、標津線で貨物列車をけん引しました。

廃車後は、標茶町の桜町児童公園で保存していました。その後、1998年に動態復元。翌1999年に留萌本線・深川〜増毛間を運行する「SLすずらん号」のけん引機として復活しました。

C11 171は道内各地のSL列車をけん引しました。しかし、C11 171は小型SLなので、最新の保安装置を搭載するスペースがないため、「SL冬の湿原号」以外のSL列車は2014年で運行を終了しました。

2021年にはC11 171の全般検査(自動車の車検に相当)を実施。ボイラーは大阪のサッパボイラで修繕・検査を行うなど、大がかりな整備を行いました。

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C11 171には2022年1月に全検を受けた標記があります

しかし、2022年の営業運転を前にした試運転でピストンリングが破損し、ディーゼル機関車による代走となりました。そのためC11 171がけん引する「SL冬の湿原号」は2年振りとなります。

●2年かけて客車もリニューアル

「SL冬の湿原号」の客車は5両編成で、標茶側から1〜5号車の順で連結。1・3〜5号車は元ブルートレインの14系客車、2号車は旧形のスハ43系客車で構成しています。車体カラーは戦前の客車をイメージして茶色に赤帯となっています。

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「SL冬の湿原号」で使用されている5両編成の客車

客車は2021〜2022年度にリニューアル改造を実施しました。第1弾となる2021年度は1・5号車のスハフ14形をリニューアルして展望車「たんちょうカー」となりました。

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スハフ14形展望車「たんちょうカー」。写真は1号車

「たんちょうカー」の客室は釧路湿原側にカウンター席を設置。反対側は大型テーブルを設置したボックス席で、こちらは高床化して眺望を良くしています。

「SL冬の湿原号」のリニューアル客車の座席モケットはタンチョウヅルやエゾシカ、雪の結晶などをデザインしています。モケットの色は3タイプあって、「たんちょうカー」は赤系としています。

1・5号車にはサービス電源を供給する発電機を搭載した機器室があります。その機器室の釧路湿原側に大窓を備えた展望通路を設置しています。

2〜5号車はリニューアルの第2弾として2022年に改造されました。3・4号車はオハ14形「ストーブカー」です。

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ダルマストーブを設置した「ストーブカー」の客室

客室内にはダルマストーブを設置。ダルマストーブは実際に使用していて、スルメなどを焼いて食べることができます。

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ダルマストーブでスルメを焼いているところ

なお、ダルマストーブはリニューアル前から設置されていました。

リニューアルにより、ボックスシートのモケットは青系となりました。また、大型テーブルや肘掛け、グリップなどにはタモ材を使用しています。

2号車は「ストーブカー(カフェカー)」。この車両は旧型客車のスハ43系スハシ44形で、レトロな外観が魅力です。

ダルマストーブを設置した客室も、板張りの床などレトロムード満点。ボックスシートのモケットは緑系となっています。

車内の釧路側には販売カウンターを設置。オリジナルグッズやお土産品のほか、ストーブで焼くスルメなどの飲食物を買うことができます。

●パーク&トレインサービスも実施

「SL冬の湿原号」の往路は、釧路駅11時5分発-標茶駅12時35分着、復路は標茶駅14時発-釧路駅15時42分着と、程よい所要時間となっています。運行日は1月21日〜3月21日までの金・土・日・祝日と、2月6日〜9日の予定です。

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冬の道東旅行でオススメしたい「SL冬の湿原号」

途中、東釧路駅・釧路湿原駅・塘路駅・茅沼駅に停車し、乗降が可能です。釧路湿原駅と塘路駅は釧路湿原観光に最適。また、茅沼駅で下車してタンチョウヅルを観察するにも便利なのです。

料金は、釧路〜標茶間の片道でおとな2970円(運賃1290円+指定席券1680円)。また、釧路駅パーク&トレイン駐車場を1日300円で利用することもできるので、道東ドライブの途中で「SL冬の湿原号」に乗車というプランもアリだと思います。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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