誰得?たったの170円で38.6kmも電車に乗れる区間が横浜市内にあった!

■38.6kmを170円で乗れる電車。その区間は鶴見駅の構造にあった!?

鉄道の運賃は距離に比例して上がっていきます。JR東日本の「東京の電車特定区間」を例に挙げると、1〜3kmが140円、4〜6kmが160円、7〜10kmが170円という具合に料金が変わります。

鶴見駅のきっぷ売り場にある料金表からも羽沢横浜国大駅への運賃が170円であることがわかります

しかし、神奈川県には乗車距離38.6km、所要時間が50分以上かかるのに、運賃がたったの170円という区間があります。

それが、JR東日本の鶴見〜羽沢横浜国大間です。

鶴見駅はJR京浜東北線の駅で、羽沢横浜国大駅は相鉄直通線(埼京線とアナウンスすることもあります)にある駅です。両駅間の実際の距離は8.8kmなので、運賃は170円となります。しかし、乗換案内では両駅間の所要時間は50分以上もかかります。

それはなぜでしょう?

●鶴見駅の構造がもたらす“遠回り”

鶴見駅から羽沢横浜国大駅に移動するルート図

相鉄直通線は鶴見駅を通っているのですが、実は鶴見駅にはホームがないので、鶴見駅から羽沢横浜国大駅まで直接行くことはできません。

JR線だけで行く手段は2通りあります。ひとつめは、京浜東北線で東に向かって川崎駅に移動。ここで南武線に乗り換えて北に向かって武蔵小杉駅に移動。武蔵小杉駅から相鉄直通線に乗るルートです。

このルートの距離は27.6km。本来、この距離の運賃は470円ですが、このエリアの運賃規定では最短距離の8.8kmが適用されるので170円となります。

鶴見駅を通過する相鉄直通線にはホームがありません

また、このルートでは鶴見駅を1回通過します。JR本来の規定では、同じ駅を重複通過することはNGなのですが、鶴見駅には相鉄直通線のホームがないので重複となりません。

もうひとつのルートは、京浜東北線で横浜駅に出て横須賀線(湘南新宿ライン)で武蔵小杉駅まで移動。そして相鉄直通線に乗り換えるルートです。

鶴見線を通過する横須賀線。やはりホームはありません

このルートでの走行距離は実に38.6km。本来の運賃なら640円です。しかも、鶴見→横浜→武蔵小杉→鶴見を行ったり来たりして、鶴見駅を2回も通過します。ちなみに、横須賀線(湘南新宿ライン)も鶴見駅にホームがないのでこれまた重複とはなりません。

所要時間はどちらのルートも50分台。これは、武蔵小杉駅の南武線と相鉄直通線(横須賀線)のホームがとても離れているからだと考えられます。

なお、羽沢横浜国大〜鶴見間の最速ルートは、京浜東北線で横浜駅に出てから相鉄線に乗り換えて西谷駅経由で向かうルートで、所要時間は40分弱です。

ただし、2社に跨がるので料金は400円と倍以上となります。所要時間が短いといっても、その差は15分程なので、値段を取るか時間を取るかも選択の分かれ目になりそうです。

もっとも、鶴見から羽沢横浜国大へ移動するという人は、横浜国大の学生しかしないのかもしれません。むしろ170円で長い間電車に乗っていられるという点では、乗り鉄やファミリー向きなのかもしれませんね。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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