復活フェアレディZや最新鋭MIRAI、感動のサーキットを結びつけてくれたヤリスのレンタカーまで【2022年 私にとっての10台(重大)ニュースby松永和浩】

■10台ニュースといいながら新型車には乗っていませんが……

2022年は新車試乗をあまりしていませんでした。サーキットでレースの取材をしている関係で試乗はオフシーズンに行っていたのですが、2022年は2月からスーパー耐久のテストやら3月はSUPER GTのテストやらでモータースポーツが動き出すタイミングが早かったというのを理由にしておきます。

そんな数少ない中から、深く印象に残ったクルマを紹介します。

●レンタカーで借りて感動した:トヨタ ヤリス・シリーズ

今さらヤリスを紹介しても……と思うじゃないですか。ところが新車を購入するという観点ではなくレンタカーで使ってどうか?という観点で見るとまた違った見え方が出来ます。

トヨタ ヤリス

2022年の12月現在、レンタカーの売れ筋である小型車の1300~1500ccクラスはトヨタ ヤリス、ホンダ フィットの現行モデルとNISSANノートの一つ前のモデルであるE12型が主流です。

ほとんどの場合、ラインナップされるグレードはベースグレードの一つ上のお買い得グレードとなっています。つまりスポーツタイヤやアルミホイールなどの装備充実の最高グレードではないので、評価のほどは自動車メディアではほぼ登場しません。

トヨタ ヤリス

レンタカーも新しいクルマの方がうれしいので、メーカー系ではないレンタカー店ではヤリスかフィットをリクエストしがちです。そこでレンタカーとしてヤリスを選ぶ利点とは何か?

筆者の場合、レンタカーを借りるシチュエーションは空港から山間のサーキットと言うことが多いのですが、お買い得グレードで一番快適にワインディングロードを走ることができるのがヤリスだと考えます。

フィットに比べると少し小さいボディサイズが絶妙。またステアリングを回した時に感じるクルマの動きが自分の考えている通りの動きとなっています。最近増えてきた格安なレンタカー店でヤリスを借りることが出来たなら、出張はこの上なく楽しいものになるのではないでしょうか?

トヨタ ヤリスクロス

レンタカーでもっと感動的と言えるのはヤリスクロスです。外寸サイズは横幅が1765mmで3ナンバーとなりますが、エンジンはヤリスと同じ1500ccか1500ccのハイブリッドで、レンタカー会社によってはヤリスやフィットと同じクラスで貸し出されることがあります。

ヤリスの持っているキビキビとしたワインディングロードでの操縦性に加えて、サスペンションストロークが長いことによる乗り心地の向上がヤリスクロスの良さ。加えてラゲッジスペースも拡大されているので機内持ち込み用のスーツケースならば4人分は余裕で積めます。

注意点としては貸し出されるモデルのほとんどがFFであるという点。ヤリスクロスのスタイルから4WDだと勘違いして雪道やラフロードで無理をして立ち往生する方が多いようです。駆動方式は絶対に確認しましょう。

トヨタ GRヤリス RS

ヤリスシリーズと言えばGRヤリスも忘れてはいけません。でもレンタカーにあるのか?と思う方もいらっしゃると思いますが、スポーツカーもラインナップされているレンタカー店でマツダロードスターと同じクラスとしてGRヤリスのFFでCVTの1500ccモデルのRSが貸し出されている場合があります。

リアシートがかなり狭いGRヤリスですが、2人乗りと割り切ってリアシートを畳んでラゲッジスペースにすればかなりの荷物が積めますし、CVTの1500とはいえ骨格や脚回り、タイヤもGRヤリスですから運転は楽しいし装備は充実です。難点は素のヤリスやヤリスクロス比べてレンタル料金が高いことでしょうか。

筆者の個人的な見解では、サーキットなどへの出張の場合にレンタカーでヤリスシリーズを借りることが出来れば、空港や新幹線の駅や宿泊のホテルからサーキットへの往復をストレスフリーで過ごすことが出来ます。

●二度目ましてな、高級セダン:トヨタ MIRAI

スーパー耐久シリーズで水素を燃料としたGRカローラが出場していることはclicccar上で何度もレポートしていますが、現状で水素を使って一般道を走行できるクルマは燃料電池車のトヨタ MIRAIしかありません。

トヨタMIRAI

スーパー耐久シリーズのオフィシャルステージなどではマイクのアンプや照明の電源としてガソリンやディーゼルの発電機を使わずに、全てMIRAIによる水素での発電で得た電力を使用しています。

カーボンニュートラルを目指してスーパー耐久ST-Qクラスで水素エンジンのGRカローラを走らせるのですから、会場内で使用する電源もカーボンニュートラルで、と言うことになっています。

このMIRAI、実際に乗ってみると燃料電池で発電した電気でモーターを回して走行するので水素から電気を作り出す燃料電池以降のシステムは完全な電気自動車です。だからエンジンの振動や音は皆無。

デビュー直後に試乗していましたが、2022年に改めて運転する機会をいただいて250kmくらい走行しました。電気自動車と違ってバッテリー切れを心配することなくひたすら走っていけます。特に新東名高速の制限速度120km/hの区間では、電気モーターの圧倒的なトルクによる本当に気持ちのいい加速と巡行が味わえました。

今現在、市販乗用車で唯一の水素使用車となるMIRAI。外観は奇抜ですがプラットフォームはレクサスLS。それでいて車両本体価格が最上級グレードで消費税込み860万円、155万円の補助金が使えれば705万円で、先代S22型クラウンの3.5ハイブリッドRSとほぼ同じ価格帯となります。

電気自動車より長い実用的な航続距離もあって、水素ステーションがもっと増えれば間違いなくお勧めの一台になりえます。

●クラウン最後のFRド迫力:S22型 トヨタ クラウン RS

S22型 トヨタ クラウン RS

MIRAIとの比較でも紹介したS22型クラウンの3.5リッターハイブリッドRS。クラウンの中でも最上級グレードの700万円オーバーなモデルです。この3.5リッターだけがV6エンジンで、2.5リッターハイブリッドや2リッターターボは4気筒モデルとなります。

デビュー直後に試乗したのは4気筒モデルだけで、それでもクラウンっぽいと感じさせる魅力はありました。反面、もうエンジンの個性は必要ないのか?と言うくらいにエンジンはトルク発生装置に徹していました。

新型のSH35型クラウンクロスオーバーで4気筒モデルだけとなってしまうということで、2022年のまだ現行モデルであるうちにS22型クラウンのV6モデルに乗っておきたい、と考えて試乗をさせていただきました。

すでにトヨタ本社の広報車からS22型クラウンが消え去った後だったので、販社に残っていたディーラー用の試乗車をお借りして試乗しました。

率直な感想としては、もうこんなクラウンは出ないんだろうな、というほどパワフル。3.5リッターエンジン単体で299馬力、モーターが最大180馬力でシステム最大出力が359馬力のFR。ハイブリッドはエコ、という常識に疑問を持つほどのパワフルぶりは面白いほどの加速性能を見せてくれます。

新型SH35型クラウンクロスオーバーは斬新なボディと革新の装備を持っていますが、ハイパワーモデルの2.4リッターハイブリッドターボでも349馬力とS22型より出力を絞っています。そして横置きのFFベースにリアは電気モーターの4WDとなります。モーターをメインに据えてトルクフルな加速感が味わえるとされてはいます。

実際にはSH35型クラウンクロスオーバーにはまだ乗ってはいませんが、3.5リッターハイブリッドのエンジンが主導するFRの、エンターテイメントのような加速感はもうないのではないかと考えてしまいます。

最後のFRド迫力V6エンジンと考えると、比較的新車に近い中古車やディーラー在庫車があるうちに3.5リッターハイブリッドを味わっておくのはいいのではないでしょうか。クラウン最後の縦置きFRとして、歴史的にも重要な存在となるでしょう。

●唯一無二のオフロードディーゼルミニバン:三菱デリカD:5

三菱のミニバン、デリカD:5はデビューから15年を経過してもなお、衰えることなく孤高の地位を築き上げている唯一無二のミニバンです。

三菱 デリカD:5
三菱 デリカD:5

2019年のビッグマイナーチェンジでディーゼルエンジン専用車となったことで、より一層魅力が際立ってきたのがデリカD:5です。

今現在、大々的にディーゼルモデルを展開しているのはマツダですが、実はマツダの現行ラインナップにはミニバンが存在しません。翻って三菱自動車はPHEVに見られるようにプラグインハイブリッドが主流のように見えますが、実は国産唯一のディーゼルミニバンを製造しているメーカーなのです。

2022年はコロナ禍や黒海沿岸の国々の戦争、急激な円安により燃料費がとんでもなく高騰した年でもありました。そこで注目されたのがレギュラーガソリンより1リッター当たり15~20円安いディーゼル燃料の軽油。燃料価格が安いだけではなく燃費もガソリン車に比べて2割以上良好となれば気になる存在です。

実際にデリカD:5に乗ると、燃費や燃料価格云々よりもガソリン車なら4リッターエンジン並みの絶大なトルクによる運転のしやすさが目立ちます。どの回転域からアクセルを踏み込んでもエンジンが瞬時に反応してくれるのはこの絶大なトルクのおかげです。また高速道路での長距離移動ではPHEVのエクリプスクロスよりも好燃費を出しています。

今後はディーゼル燃料も化石燃料たる原油を精製する時代から、食用油の廃油精製やバイオマスから炭化水素を取り出すなど、植物由来に大きくシフトしていきます。今現在販売されているディーゼル車は出力特性などを無視して考えれば植物由来のディーゼル燃料が使えます。カーボンニュートラルの考え方からすると、植物由来のディーゼル燃料を使うことでディーゼルエンジンは一気にエコユニットとなるのです。

●ソニーが電気自動車を:SONY VISON S02

コロナ禍も少しずつ収まりを見せいるのかな?という昨今。2022年には様々な展示会も復活してきました。そんな展示会の一つのCEATEC 2022に一台の電気自動車が展示されました。

SONY VISION S02
SONY VISION S02

ソニーが出展したSONY VISON S02というBEV。7人乗りの背が低いミニバンといったスタイルの電気自動車ですが、ソニーがこのクルマを本気で売り出そうとしているところに注目しています。

自動運転もかなり本気で取り組んでいる様子で、先ず東京からドイツへ遠隔操作運転を5G通信で行うというデモンストレーションを見せています。つまり、すでにハードウェアは揃っているということを見せつけているわけで、残りはソフトウエアと生産技術の課題を解決すればレベル4の自動運転電気自動車が市場に出回るということになります。

その生産技術もホンダと手を組んだというニュースが入っており、実現に向けてまさに秒読み段階に入ったと言えるのでしょう。

●東京オートサロン2022からそのままの姿でサーキットへ来た2台:AutoLabo素ヤリス/VARIS 神風 GRヤリス

AutoLabo 素ヤリス
AutoLabo 素ヤリス

もうすぐ東京オートサロン2023。毎年様々なカスタムカーが出展される東京オートサロンですが、昨年の東京オートサロン2022で出品され、ほぼそのままの姿でサーキットに登場したクルマを紹介したいと思います。

AutoLabo素ヤリス

GRヤリスではなく普通のヤリスのスーパー耐久仕様を出展していたAutoLabo。スーパー耐久でヤリスと言えば、ST-2クラスのGRヤリスがお馴染みですが、ST-5クラスにも出られそうな1.5リッターのGRヤリスRSというグレードもあります。しかしRSはCVTのみの設定と、ホイールが5穴ということでスーパー耐久のST-5クラスには向かないようです。

AutoLabo 素ヤリス
AutoLabo 素ヤリス

GRヤリスのRSとエンジンは同じで6段マニュアルミッションが用意される素のヤリスはホイールが4穴となり、タイヤ交換作業もスピーディーとなります。そんな素のヤリスのためにAutoLaboではスーパー耐久向けにエアロを開発し東京オートサロン2022で発表しました。そして2022年のスーパー耐久に実戦投入しています。

スーパー耐久のST-2~ST-5クラスで装着されるエアロは公道走行が可能なものに限られるので、この実戦投入されているエアロは市販される可能性があります。

VARIS 神風 GRヤリス

VARIS 神風 GRヤリス
VARIS 神風 GRヤリス

もう一台は東京オートサロン2022の東京カスタムカーコンテスト2022のチューニングカー部門で最優秀賞を獲得したVARIS 神風 GRヤリス。こちらが、約1か月後の2月19日に開催されたAttack筑波に出場しました。

午前と午後の2回のセッションでタイムを競うのですが、午前中のセッションではエアロが効きすぎてダウンフォースがエンジンパワーをロスしてしまうという、エアロパーツメーカー冥利に尽きる?結果となり、午後はリアウイングを外してストレートスピードを稼ぐ作戦に変更するという事態となりました。

タイムはエアロフルセットの方が良かったということとなりましたが、さすが利きまくるエアロを開発したVARISの底力を見たような気がしました。

●SUPER GTでは〇〇年ぶりが連発:カルソニック IMPUL Zやグッドスマイル 初音ミク AMG

2022年のSUPER GTでは「27年ぶりの」や「5年ぶりの」など〇〇年ぶりが連発しました。そんな〇〇年ぶり、というのはやはり感動的なものです。

■TEAM IMPULのカルソニック IMPUL Zが27年ぶりのチャンピオン

2022シーズンのSUPER GTのGT500クラスでは大きな出来事がありました。それは2007年以来15年ぶりにフェアレディZがSUPER GTに帰ってきたことです。

カルソニック IMPUL Z
カルソニック IMPUL Z

RZ34型フェアレディZの登場に合わせてGT500クラスに登場したNISSAN Z GT500。デビュー戦の岡山で3位表彰台、第3戦の鈴鹿で優勝するなど序盤からかなりのポテンシャルを発揮します。そのNISSAN Z GT500勢の中で後半にトップ争いをしていたのが3号車 CRAFTSPORTS MOTUL Z、そして12号車 カルソニック IMPUL Zです。

カルソニック IMPUL Z
カルソニック IMPUL Z

最終戦もてぎまで縺れ込んだチャンピオン争いはカルソニック IMPUL Zが2位表彰台となったことでチャンピオンとなりました。実に27年ぶりのチャンピオンで、その頃はSUPER GTではなく全日本GT選手権という大会名称となります。

かつての「日本一速い男」星野 一義さんが率いたチームが、本当に長い時間を経て再びチャンピオンとなった姿は感動的でした。

■5年ぶりに優勝したグッドスマイル 初音ミク AMG 実は鈴鹿初勝利 

第5戦鈴鹿で実に5年ぶりの優勝を果たしたのがグッドスマイル 初音ミク AMG。以前の優勝は2017年の開幕戦岡山となります。

グッドスマイル 初音ミク AMG
グッドスマイル 初音ミク AMG

第4戦富士450kmでも優勝のチャンスはあったものの、トップを走行中にタイヤがパンクするというトラブルで下位に沈んでしまったので、この鈴鹿ではトップになりつつもかなり慎重に走行を重ねている様子でした。

グッドスマイル 初音ミク AMG
グッドスマイル 初音ミク AMG

表彰式を前に片山右京監督は「いやぁ、長かった。本当にやっと勝てましたよ」と、安堵と喜びの声を聞かせてくれました。

BOPに悩まされた5年間の辛抱がやっと結実した、といったところのようです。またこの優勝は鈴鹿での初優勝ということで、ダブルでうれしい勝利となりました。

2008年の鈴鹿でデビューしたグッドスマイルレーシングが初優勝を果たしたのは2011年。その年はチャンピオンにも輝いています。そのデビューから初勝利までの期間よりも長かった今回の優勝までのスパン。本当に辛抱の5年間だったのかと思うと、この勝利の感動は本物だったと言えるでしょう。

10台ニュースで振り返ろうと思ったら11台になっていたというオチになってしまいました。

2023年はクルマでどこまで感動できるのでしょうか?そしてどこまで感動させてくれるクルマが登場してくれるのでしょうか?2023年のクルマが楽しみでなりません。

(写真・文:松永 和浩

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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