カーデザインの正義はここにある! 2022年印象に残った5台を振り返る【2022年 私にとっての10台(重大)ニュース:すぎもとたかよし編】

■世の中最後はやっぱり正義が勝つ!

2022年もサラリーマン自動車ライターとして、デザインを中心にいろいろな記事を書かせていただきました。そこで、その中から印象に残った10台……ではなく5台を振り返ります。長澤まさみさん主演のドラマの影響というわけではありませんが、テーマは「正義のデザイン」(笑)です。

●ただの四角形だと思ったら大間違い:ホンダ・ステップワゴン

2022年-1
極めてシンプルながら、質の高い面で構成されたステップワゴン

正義のデザイン、1台目はホンダの「ステップワゴン」です。

オーバーデコレーションから一転、最近のホンダはシンプル路線を歩んでいますが、その中でもダントツのシンプルデザインがこのステップワゴンです。

たしかに四角くてシンプルだよね、なんていうのは大きな間違いです。一見シンプルな四角形でありながら、安っぽく見えず、しかも飽きの来ないデザインというのは、ある意味もっとも難しい造形なんです。つまりセンスも技術も最高のものが求められる。

もちろん「フィット」や「ヴェゼル」もいいですが、最近のシンプルデザインの真骨頂はステップワゴンで決まりです。これぞ正義のデザイン!

参考URL:ミニバンは美しい箱であるべき。新型「ステップワゴン」の主張しすぎないデザインとは【特別インタビュー】

●かつての傑作デザインを継承する:トヨタ・シエンタ

2022年-2
先代のエッセンスを残し、そこに普遍性を盛り込んだシエンタ

2台目はトヨタの「シエンタ」です。

先代がなかなかまとまりのいいデザインだったので、新型はどうなるのかな?と思っていましたが、なるほどこう来たか、と。

何しろ、かつての「ファンカーゴ」をリスペクトしたというデザイナーさんの話がよかった。初代「ヴィッツ」ファミリーは、いい意味でトヨタらしくない傑作デザイン揃いでしたから、その財産を忘れずに引き継ぐ姿勢は「天晴れ!」です。

イタ車やフランス車のパクリ……なんて声がありますけど、それだけ練り込まれた普遍性のあるデザインだという証。見掛けだけの新しさを追わなかったシエンタのデザインは、もちろん正義です!

参考URL:新型シエンタのユーザーに優しいデザイン「シカクマル」は、実用と楽しさの融合【特別インタビュー】

●これまた過去の傑作をリスペクト!:ヒョンデ・IONIQ 5

2022年-3
先進感と機能性を高い次元で見事にまとめ上げたIONIQ5

個人的は、これこそJCOTYのデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーじゃないの?というのがヒョンデの「IONIQ 5」です。

あのジウジアーロが手掛けた「ポニークーペコンセプト」にデザインソースを求めるなど、さすが欧州のトップデザイナーを積極的に招聘するヒョンデらしい発想です。実際、曲面と直線を組み合わせたデザインは、かつてのカロッツェリアの仕事を思わせる出来ばえです。

ヒョンデとジウジアーロは、ポニークーペコンセプトを今度の春までに復活させるプロジェクトを立ち上げましたが、それも含めてまさに正義のデザインです!

参考URL:45年の時を超えた革新的スタイリッシュEV。ヒョンデ新型「IONIQ 5」のヘリテッジなデザインとは?【特別インタビュー】

●外観ばかりが正義じゃない!:日産自動車・サクラ

2022年-4
レイアウト自体はオーソドックスながら、マテリアルの工夫が光るサクラのインテリア

4台目は日産の「サクラ」。

補助金などを利用すれば無理なく買える初めての現実的なEVとして話題ですが、ここでの注目はインテリアデザインです。

「軽とは思えない豪華さ」なんて声がありますが、単に豪華ということじゃなく、素材のカラーと質感の組み合わせが実に上手い! 濃いグレーのテキスタイルとカッパーの金属色なんてよく考えたものです。

いつもスポットが当たるエクステリアデザイナーではなく、いわゆるCMFデザイナーの仕事が大いに評価されたサクラは、やっぱり正義のデザインだと言えます!

参考URL:これはもう軽自動車のアリアだ。日産「サクラ」の超先進的デザインとは?【特別インタビュー】

●博物館で見かけた正義のデザイン:マツダ・アテンザ(初代 GG/GY)

2022年-5
黄色が眩しい初代アテンザ(手前)。カタマリ感のあるスタイルが魅力。

以上の4台は2022年に取材をしたクルマたちですが、5台目は番外編として、夏に訪問したマツダミュージアムで見掛けた初代の「アテンザ」を挙げます。

「Zoom-Zoom」世代のマツダ車は、一連のコンセプトカーに沿っていささかグラフィック的な造形が目立ちましたが、この初代はまだその影響がほとんどなく、実にシンプルかつ動的な造形で、いま見てもまったく旧さを感じません。

まとまりのいいデザインは色を選ばないものですが、ミュージアムにあった黄色のボディも実によく似合っていました。魂動デザインでなくとも、マツダにはこういう正義のデザインがあったのです。

参考URL:R360、コスモ、ファミリア、ロードスター…マツダミュージアムでマツダデザインを振り返る【クルマはデザインだ】

以上、2022年に印象に残った正義のデザイン5車でした。2023年もデザインを中心に取材を続けたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
続きを見る
閉じる