45年の時を超えた革新的スタイリッシュEV。ヒョンデ新型「IONIQ 5」のヘリテッジなデザインとは?【特別インタビュー】

■韓国発のBEV、ヒョンデ「IONIQ 5」のデザインを深掘り!

IONIQ5・メイン
パラメトリックピクセルや三角形など独自の表現手法を持つが、基本はカタマリ感の強いハッチバックボディ

約12年ぶりに日本市場へ再参入したヒョンデですが、デビューモデルの中でも、とりわけBEVである「IONIQ 5」の革新的なデザインが大きな話題になっています。

そこで、同社でデザインを手掛ける占部貴生氏に、近年のデザイン開発体制やIONIQ 5の特徴についてお話を伺いました。

●グローバルなデザイナー交流

── はじめに。近年のヒョンデグループは、欧州デザイナーの起用など積極的なデザイン開発姿勢が話題です。そこで、IONIQ 5の登場に至る最近の開発体制について教えてください。

「まず、2006年にフォルクスワーゲン(VW)グループでアウディなどを手掛けたペーター・シュライヤーが、キアのデザイン統括に就任しました。その後、2013年にはヒョンデのデザインも統括し、グループ全体のデザイン顧問となります。役員となった氏は、2016年にやはりVWグループでランボルギーニなどを歴任したルク・ドンカーヴォルケと、同じくベントレーなどを手掛けたイ・サンヨプを招聘、現在に至ります」

IONIQ5・コンセプト
ポニークーペ・コンセプト(上)のピラーをオマージュした45コンセプト(下)のシルエット

── そういう背景があってか、IONIQ 5のデザインは「欧州発」といった話を聞きますが、開発拠点は欧州スタジオだったのですか?

「いえ。少々複雑ですが、2019年のフランクフルトショーに出品されたIONIQ 5の予告となる『45コンセプト』は欧州スタジオ主導で開発されました。が、量産車については先のイ・サンヨプをチーフとし、韓国スタジオで開発が行われました。ただ、デザイン開発はグローバルでコンペを行っていますから、単純に言い切れない部分はありますね」

IONIQ5・スケッチ
初期段階でテーマが明確であったことがわかるスケッチ。ホイールアーチのカット面も見える

── IONIQ 5は1974年発表の「ポニークーペ・コンセプト」をオマージュしたとされますが、なぜこのコンセプトカーを選んだのでしょう?

「先の『45コンセプト』は、まさにポニークーペ・コンセプトを発表して45年という節目を記念したものですが、弊社が初めて手掛けた本格的な乗用車ですし、そうした開拓のスピリットを引き継ぎたかった。もちろん、ジョルジョット・ジウジアーロによるデザインに見るべき点が多かったこともあります」

── 「パラメトリックピクセル」というデザインキーワードが話題ですが、もっとボディ全体の方向性を示すコンセプトはあったのでしょうか?

「はい。たとえばポニークーペの大きく寝かされた前後ピラーから、斜めを表現する『45度』をキーワードにしています。『45コンセプト』の名前はそこからも来ているんですね。さらに、この45度のラインが組み合わさることで三角形が生まれますが、これがそのままデザインモチーフになっています」

IONIQ5・フロント
バンパー中央のラインにより左右に三角形ができると同時に先鋭感が増したフロントビュー

── 三角形によるボディは面も線もシャープさが特徴ですね。前後バンパーのセンターに引かれたラインもユニークで、ボディに先鋭感が生まれています

「そうですね。ただ、あくまでもソリッドでボリューム感のあるボディがまず先にあって、その上でのシャープな表現なんです。コンセプトのひとつに『エモーショナル・エフィシェンシー』がありますが、いちばん大切なのはカタマリ感で、そこにドアの斜めラインなどエモーショナルな表現を加えています。前後バンパーのラインも、一見ムダなようで実によく練られたものなんですね」

IONIQ5・サイド
ボディ下部のスリット表現は軽量さを表現。またボディを1周するブラックの樹脂は圧迫感を廃している

●統一されたデザイン表現はしない

── 細かい部分では、ボディ下部を1周するスリット状の表現が非常にメカニカルなイメージを作っています

「見た目もユニークですが、空力的な効果も狙っています。同時に、ホイールベースが3mの大きなボディでありながら、クルマ全体を軽く見せる効果もありますね。また、ボディ下部ではブラックの樹脂パネルもボディを1周しているのですが、これも圧迫感を軽減させる役割があるんです」

── ホイールアーチに刻まれたナナメのカットも印象的ですね

「これは最初のイメージスケッチにすでに描かれていたものですね。先の『エモーショナル・エフィシェンシー』として空力を積極的にアピールしています。また、ホイールのスパイラルな造形と組み合わされることで、より空気の流れを感じる部分だと思います」

IONIQ5・ホイール
金属調のホイールアーチには空力を感じさせるカットラインが入る

── 最後に。IONIQ 5はシャープさが特徴ですが、次の『6』を予告するコンセプトカーの『プロフェシー』は曲線基調です。今後のIONIQシリーズはどう展開されるのでしょう?

「たとえば、ドイツ車のように統一されたデザインランゲージは考えていません。共通するのはあくまで『パラメトリックピクセル』という因子だけで、それによってスタイリング自体はより自由な発想、組み合わせができると考えています。その広がりがヒョンデルックにつながる、ということですね」

── ひとつの共通要素を持たせることで、より幅広い展開が可能になるわけですね。本日はありがとうございました。

IONIQ5・デザイナー
占部 貴生氏

【語る人】
Hyundai Mobility Japan R&D Center株式会社
デザインチーム チーム長
占部 貴生氏

(インタビュー:すぎもと たかよし

この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。