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■ボディサイズ・パッケージングはほとんど変わらずも、着実に進化
フルモデルチェンジを機に、SUBARU XV改めクロストレックを名乗る新型モデルは、2023年のSUBARUを牽引するコアとなるモデルです。
XVよりもよりアクティブな印象を抱かせるエクステリアが与えられたのをはじめ、新型ステレオカメラユニット、国内向けで初採用になる広角単眼カメラによる最新世代の「アイサイト」など、同社が誇る機動力などとともに、現在投入できる新しい技術が盛り込まれています。
ここでは、内外装のデザインやパッケージング、特徴的な装備などを再確認していきます。
ボディサイズは、全長4480×全幅1800×全高1580mm(アンテナまで)で、ホイールベースは2670mm。
先代よりも5mm短くなり、全幅とホイールベースは同値。全高は、-15〜+5mmで、サイズはほとんど変わっていません。そのほか、200mmの最低地上高、5.4mの最小回転半径も同じです。
諸元やパッケージングは、見事にまでキープコンセプトとなっています。高さ1550mm制限のある立体駐車場にこそ入庫できないものの、日本の狭い道路や駐車場事情でも持て余すことのないサイズが踏襲されています。
■鋭さを増したエクステリアデザイン
キープコンセプトとしながらもエクステリアデザインは、鋭さを増していて、SUBARUとしてはかなり思い切った変化を遂げています。
とくに目を惹くのがキリッと切れ上がったヘッドライトで、LEDロー/ハイビームをはじめ、ランプを小型化することで、先進的な雰囲気も醸し出しています。
上級グレードの「Limited」には、お馴染みのCシェイプを強調するLEDポジションランプ、LEDコーナリングランプやステアリング連動機能により視認性も向上。
鋭さを放つヘッドライトの下には、大型のプロテクトパーツが配され、高い位置に備わるフォグランプをコの字型で取り囲むなどデザインも印象的です。
そして、大型フロントグリルは、太く厚みのある外枠と筋交いのようなメッシュ形状になっていて、グリルバーがヘッドライトまでつながることで、シャープさも演出。従来型のXVと比べると、押し出し感が増した顔つきになっています。
サイドは、大型化された前後のクラッティングがサイドシルとの連続感を演出。ドア下側にキャラクターラインが走ることで、スピード感を抱かせる眺めになっています。ウエストラインが後方に行くほど切り上がっていて、さらにサイドウインドウに傾斜をつけることで、キャビンが内側に絞り込まれた引き締まったサイドビューになっています。
ディテールでは、前後フェンダーを囲むクラッティングが前傾姿勢を感じさせる造形になっているのと、ルーフレールを支える台座の造形が力強いものになっている点で、「Limited」は、ドアミラーとともにダークグレー塗装を用意。
足元は「Limited」が星形スポークの18インチアルミホイールで、スパイクピンや歯車をイメージしたという切削面を備えた凝ったデザインになっています。
「Touring」は17インチで、18インチとともにホール(穴)が斜めに抜けたような形状とすることで、スピード感を印象付けています。
両アルミホイールともにダークメタリック塗装が施されています。なお、タイヤタイズは「Limited」が225/55R18、「Touring」が225/60R17で、オールシーズンタイヤを装着。
リヤは、お尻がキュッと上がったようなフォルムで、お馴染みのCシェイプのLEDリヤコンビランプは、立体感を抱かせるデザインになっています。
下部をディフューザー形状にしたリヤバンパーも特徴的。両サイドにエアアウトレットが配置され、バンパー内に溜まる空気を排出することで、走行時の安定性に寄与するそうです。
また、サイドだけでなくリヤ後部(キャビン)を絞り込み、テールゲートを大きく寝かせることで、前傾姿勢を印象づけ、スピード感が強調されています。
ボディカラーは、新色の「オフショアブルー・メタリック」「オアシスブルー」をはじめとした全9色を展開です。
■操作性、視認性が向上したモダンなインテリア
内装もひと目でSUBARU車と分かるデザインで、シンプルかつ使い勝手の良い仕立て。中央に縦型のセンターディスプレイを配置(Limitedに標準)。
XVでは、中央最上部に「マルチファンクションディスプレイ」がありましたが、こちらは廃止され、メーターパネルを含めて最大3つのディスプレイに視線を振り分ける必要はなくなりました。
メーターパネルは、2眼式のアナログ指針で、速度計、回転計ともに走行時でも瞬時に視認できます。さらに、「マルチファンクションディスプレイ」の廃止に伴い、中央の4.2インチ画面に「アイサイト」の作動状況やエネルギーフローなどが表示され、視線移動は確実に減っています。
そのほか、ナビではスマホ連携の強化、操作性の向上、ナビの機能向上やセキュリティ対策などが盛り込まれています。USB端子は、タイプAとCの組み合わせになり、純正アクセサリーでワイヤレス充電も用意。
先述したように、パッケージング的にはほとんど変わっていません。ただし、フロントシートは、「SUBARU GLOBAL PLATFORM」が初採用されたインプレッサ以来だという全面改良になっています。
シート骨格から見直され、乗員の骨盤を支えるには、背骨の最も下にある「仙骨」を支えることが効果的という人体構造の検討から新しいシート構造を採用。
これにより、腰のフィット感も高まった印象で、頭の揺れも抑制。さらに、シートと車体との固定構造も見直され、シートレールに直接固定することで、取付部の剛性向上、振動の収束性が高まったとしています。
試乗した伊豆サイクルスポーツセンターのワインディングでも剛性感を抱かせる仕上がりで、長距離を走るほどに完全新設計のフロントシートの恩恵が受けられるはずです。
乗降性も大きく変わっていないものの、サイドシルプレート、ラゲッジ開口部の下側に、山をモチーフとしたテクスチャーが描かれていて、デザイン性と滑り止め、キズの防止なども兼ねています。
サイドシルプレートの形状も見直され、足を掛けた際の安定性を高め、ルーフレール上の荷物を出し入れする際などの安定感向上も図られています。
また、「SUBARU GLOBAL PLATFORM」は、レヴォーグやWRX S4と同様に、フルインナーフレーム構造になり、高速域のレーンチェンジやコーナリング時の安定感に大きく寄与。こうした速度域では、XVよりも重心が低い感覚で、スタビリティの高さが際立っています。
荷室容量は、先述したように、テールゲートが寝かされたこともあり、通常時は340Lから315Lと小さくなっているものの、開口部最大幅を広げ、ゴルフバッグを3個横積みする際の収まり方が向上するなど、実際の使用シーンでも小さくなったことは感じさせないはず。
そして、SUBARUが重視する安全性も向上しています。日本向け初採用になる広角単眼カメラは、歩行者や自転車などの識別能力を引き上げ、衝突被害軽減ブレーキが対応できる領域を拡大。新型ステレオカメラにより、よりワイドにより遠くまで認識できるようになっています。
そのほか、「ドライバー異常検知システム」もクロストレック用に新開発されていて、ドライバーをサポートする機能も盛り込まれています。
(文:塚田勝弘/ 写真:前田惠介、SUBARU)