2023年に大注目。ZDXタイプSが示す、ホンダのEVスポーツ像【週刊クルマのミライ】

■アキュラ初の電気自動車は開発順調

Acura ZDX Prototype
ホンダが展開するプレミアムブランド「アキュラ」初のEVモデルがZDX

2022年8月に、ホンダはアキュラZDXというニューモデルを計画していることを発表しました。

「Z」というアルファベットは究極をイメージさせるものともいえますが、おそらくホンダが込めたのは「ゼロ」の意味でしょう。なぜなら、ZDXはアキュラ・ブランド初のゼロエミッションビークル(排ガスを出さないクルマ)になるからです。

その中身については、GMと共同開発しているEVプラットフォームや、GMの開発したアルティウム・バッテリーを搭載する新世代のEV(電気自動車)になると考えるのが妥当です。

正式発表は2023年中ということで、間もなくです。

●カモフラージュ柄のメッセージに注目

Acura ZDX Prototype
ZDXの正式発表は2023年を予定している

ZDXの開発が順調に進んでいることをアピールするプロトタイプでの走行画像が公開されています。その画像で注目すべきは、フロントの開口部がバンパー部分にしかないことです。

EVであっても、インバーターやモーター、バッテリーは冷却する必要があるので開口部をなくすことはできないのですが、エンジン車に比べると圧倒的に小さな開口部となっているのはEVの特徴です。

ボディシルエットは、スクエアなクロスオーバーSUVを思わせるもの。車線との対比で感じられるサイズ感からも、いかにも北米市場が求めていそうな存在感のあるSUVになっていることが感じられます。

さらに注目はカモフラージュ柄に込められたメッセージでしょう。アルファベットの「S」をモチーフとした模様で、リヤドアのあたりには真っ赤な「S」の文字が描かれています。

ZDXにはスポーティバージョンとして「タイプS」が設定されることは2022年8月の段階で発表済みですが、アキュラはゼロエミッションビークスにおいてもスポーティであることをブランドイメージとして主張しているわけです。

●タイプSはドライバー体験が差別化ポイント

Acura ZDX Prototype
「タイプS」をアピールするカモフラージュ柄をまとったプロトタイプ

電動化時代におけるアキュラのタイプSとは、どのようにして標準車と差別化しているのでしょうか。公式なアナウンスとしては「ドライバーエクスペリエンスの最適化」といった表現が使われています。

その方向性を理解するヒントとなるのは、2022年に生産を終了したNSXタイプSでしょう。

NSXタイプSでは、システム出力の向上、空力を考慮した専用バンパー、ハイグリップタイヤに合わせたシャシー、ドライブモードの改良などなどにより、ダイナミクス性能を上げています。

ひと言でいえば、標準車よりも速くなっているということです。

ZDXタイプSについては絶対的なパフォーマンスアップがどこまで実施されているか、現段階では不明ですが、その方向性はアキュラのみならずホンダ全体として電動化時代のタイプSの定義を示すでしょう。

ホンダが電動化に向かって舵を切ったのは事実であり、電動化におけるホンダらしさの変化には多くのファンが気にしているのではないでしょうか。その意味でも2023年に正式発表されるZDXタイプSの差別化ポイントがどうなるのかはおおいに注目です。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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