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■日本で唯一、本社に認定を受けているマセラティ・クラブ・オブ・ジャパン
カーヒストリアン・越湖信一さんは、日本におけるマセラティスタにとっての名門クラブ「マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン」の代表としての顔も持っています。
同クラブは来年で30周年を迎える大変な老舗であり、マセラティジャパン本社に認定を受けている日本で唯一の公式団体。長年にわたり「誰もが楽しめるオーナーズクラブ」であり続けてきた背景には、様々な理由があるようです。
●「完全非営利、かつ手弁当」というルール
先日、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン(以下MCJ)年間最大のイベント・28thマセラティデイが開催されました。一昨年はコロナ禍のために中止となったものの、毎年途切れることなく開催している重要なイベントです。
昨年は直前まで開催か中止か、と悩みましたが、今回は幸いなことに早期からの告知も可能となり、コロナ禍前に戻ったと言えます。九州から東北まで150名あまりのマセラティファンが集まり、盛況なうちに終了となりました。
実は、私はこのクラブの創立時から代表を務めています。そこで今回は、オーナーズクラブの在り方などについても触れてみようと思います。
MCJは完全非営利の団体として、手弁当の運営でずっとやってきました。
創立期にはインポーターやメーカーが主催する団体や、運営を業者に委託する団体など様々な形態のクラブがありましたが、私たちは独立運営を行うという判断をしました。インポーターなどと組むと、輸入権の移動や、経営の変化によってクラブの運営ポリシーにも制約が起きる可能性を考慮したのです。
●マセラティ本社に許諾を取りスタート
私は元々、マセラティ本社との繋がりがありましたので、本社に許諾を取りクラブをスタートさせました。そしてある程度の規模になった時点で、当時のインポーターへとコラボレーションを持ちかけたのです。
インポーターやメーカーとオーナーズクラブは、持ちつ持たれつの関係であるべきと考えます。どちらかにとって負担になったり、デメリットを感じては継続できません。
もっとも、こんな牧歌的なスタートができたのも古き良き時代だったからであることも事実です。現在ではメーカーとしても、ヘリテイジとしてクラシックモデルへの関心が高まり、自らクラブをコントロールしようという流れも見えてきています。
以前は曖昧だったロゴマークや商標の使用に関しても、明確なルールが出来てきました。
また、メーカーが自前でオーナーズクラブを運営するという流れもできてきました。一方で、ウェブなどの普及から、仲間同士のカジュアルなグループを作るのは以前と比べると簡単になっており、多くの細分化したクラブも出来ています。かつては郵送で案内を送り、夜に家庭の固定電話で連絡し合ったものです。まさに今は時代の変革期でもあります。
●「誰もが運営関係者」の意識が生むマナー
今回のマセラティデイは住友不動産の協力で、オープン前のヴィラフォンテーヌ羽田という空港直結のホテルが位置する羽田エアポートガーデンを占有することができました。
広大な駐車スペースを使ってイベントは進行します。イベントではメンバー同士の交流が最重要ポイントですから、それぞれの愛車とオーナーの近況報告などを行うためにマイクを廻し合います。
入会希望者の“お試し”も、また重要です。MCJではクラブの雰囲気を理解してもらうため、ビジターとして2回までイベントへ入会なしに参加できるというルールを設けています。今回は金沢エリアから10名以上のマセラティファンがビジター参加したほか、何人もの入会希望者に参加して頂きました。
もうひとつ、クラブとして重要なポイントは、ブランドに関する最新情報や、ヒストリーなどのブランド全般に関する情報をメンバーへ提供することです。今回のマセラティディでは、本社ダヴィデ・グラッソCEOからのメッセージ、そしてマセラティジャパン木村隆之CEO、歴代モデルを担当したカーデザイナー奥山清行氏などの参加で、生の情報に触れることができました。そして私も、同時に配布された144ページのクラブ機関誌に沿った形でヒストリーのレクチャーを行ったのです。
また、クラブの雰囲気作りも重要です。イベントの運営は全て素人のメンバーで行いますから、誰もが運営関係者です。参加者はお客様ではないということを、メンバー全員が理解してくれています。
昨今は、自動車イベントで意味のないブリッピングや、交通法規を破った走行などが問題になりますが、MCJにおいてはそんな心配は皆無です。そんなマナー違反をすると、皆が責任を取らなければならない事を良く理解しているからです。
2日間のイベントはパレードランで終わりとなりました。事前に何回も試走したコースを、参加者は一糸乱れずに隊列を組みます。そこには、日本を代表するマセラティスタである堺正章氏が第二次世界大戦まもなくに生産された重要なレーシングモデルであるA6GCSで参加してくれますから、マセラティファンにはたまりません。
来年はMCJ創立30周年になります。皆、来年の再会を祈って閉会となったのでした。
(文・越湖信一)