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■ベーシック軽・アルトの中で最もベーシックなアルトAの内外詳細を見る!
ここからはアルト内外のユーティリティについて、前半と後半とに分けて見ていきます。
今回の第6回目はまず前半。読者のみなさんが、まるで実車に触れているかのような感覚に陥ってくれるとありがたく思います。
●運転席から
・インストルメントパネル
全体的にはT字型のインストルメントパネル(以下インパネ)。よく見るとレイアウトは旧型と同じ、スイッチや吹出口、シフト周辺のパネルや、後述するロワポケットなども旧アルトから流用しているようで、助手席側のやわらかパッド風エアバッグフェイシアの形状と、インパネ両脇の飲みもの置きの有無が目立つくらい。内部構造もそのまま引き継いでいるのでしょう。
パッと見では新旧異なりますが、旧型から乗り替えたひとは、このあたりを見抜くかも知れません。そして旧型からの乗り換え組に戸惑いを抱かせないことにもなるのです。
・メーター
扇形速度計の左に、プロッティングに沿って多種多様な警告灯を並べ、右下には簡易型液晶をレイアウト。これも裏側基盤はおそらく先回のワゴンRスマイルと同じでしょう。安全デバイスの搭載で警告灯が増えましたが、これら絵表示はISO規格に基づいたもので、各メーカー共通。ただ、何を意味するのかわからないものもあるので、できればマークに「BRAKE」「OIL-P」などの英文表記ができないかと思っています。
もうひとつ、ワゴンRスマイルで指摘したメーターアクリルの映り込みはアルトでも同様。まだらになった自分の顔が映りこみ、昼間の運転ではそのまだらが年がら年中動くのが目に入って仕方ありませんでした。大急ぎで改良を!
・マルチインフォメーションディスプレイ
もはやあたり前になっている、高精細カラー液晶からはほど遠い、無愛想も無愛想なセグメント液晶式。点描写ではなく、決まった形のセグメント点消灯で表示するわけですから表示の仕方も自ずと限界があります。じゃあそれで何か困るかというとそのようなことはなく、シンプルなのがかえって見やすさにつながっており、逆に好感を抱きました。
表示項目は下の写真のとおりで、切り替えはメーター内ノブか、ハンドル左スポーク上の「INFO」ボタンにて行います。
照度調整もついていますが、ほんとうは照明色をオレンジではなく、白か緑にし、燃料計は指針式に、切り替え式になっているオド計とトリップ計は、写真の旧ジムニーのように同時表示してほしい(さらに本音をいうなら、オド、トリップA、トリップBの3つを常時表示してほしいのだ!)のですが、全体的にはこれでも充分じゃないの! という仕上がりです。だってそうでしょ? 昔のクルマにはもともと液晶なんかなかったんだから。
・ステアリングホイール
ウレタン巻きの3本スポークステアリング。エアバッグ標準化もあり、どんな安グルマでも、いまや情けない「へ」の字スポークの樹脂ハンドルは見なくなりました。
アルトはスズキセーフティサポート全車標準といえど、アダプティブクルーズコントロール一連は未設定なので、右スポーク上に煩雑なスイッチはありません。したがってこの部分はのっぺらぼう。せめてここだけでもホーンスイッチにしてあれば鳴らしやすいのに。
ハンドルのチルト機構はハイブリッドXにのみ標準で、他機種にはオプション用意すらなし。しかし、身長176cmの筆者には高すぎることも低すぎることもなく、ぴったりはまりました。昔はハンドルの上下なんかなかったわけで、その時代のノウハウ(チルトなしでも80%以上のドライバーを満足させる高さの模索)が活きているのでしょう。
・ワイパー/ウォッシャースイッチレバー
OFFを定位置に、レバー上保持でMIST(上げている間だけワイパー低速作動)、下に落とすたび、INT(時間調整式ではない、固定間欠式)、LO(低速作動)、HI(高速作動)。レバー手前引きでワイパー連動のウォッシャー液噴射。どんな安グルマでも、いまや間欠くらいはつくようになりました。間欠時間調整ノブや、リヤワイパーがないため、レバーがやけにつるっつる。本「リアル試乗」の記事と違って、表面の文字数も少ないですな。
・方向指示/ライトスイッチレバー
過去のアルト回と重複しますが、先端ライトスイッチは、新オートライト規制に則ったスイッチ構成。AUTOの下が、自動戻りのOFF/スモール、上にライト強制点灯。AUTOでは、昼間はライト消灯、夜のエンジンONと同時にいきなりライトが点灯します。
ターンシグナルはレバー上下で行い、その途中保持がレーンチェンジャー、レバー向こう押しでハイビーム(ハイビームアシスト使用時は自動ハイビームの待機状態。前方の光の有無でロー/ハイを自動で切り替える)、手前引きでパッシング。
ワンタッチウインカー(レバー一瞬の上下で数回方向指示が点滅するヤツ)がないのはたいへん結構なことです。まちがって触れたとき、消す方法がクルマによってまちまちで非常に困るからなのであります!
・イグニッションキースイッチ
最近の子どもや若いひとは、ダイヤル式の電話、カセットテープ、クルマのレギュレーター式昇降ドアガラスの使用法を知らないのだそうで。
で、こちらキー挿しでエンジンをかけるイグニッションスイッチも昨今、めずらしい部類に入るので、大きく採り上げてみました。
エンジンOFF&キー抜き差しポジションとなる「LOCK」、エンジンOFFで電装品(オーディオ、アクセサリー電源など)を使いたいときに使う「ACC(アクセサリー)」、すべての電源を入れる「ON」、スターターモーターを起動させる「START」…昔はエンジン「OFF」と「LOCK」が別だったり、キー抜き差し「LOCK」の手前まわしで「TRUNK(トランクオープナー)」というクルマもありましたが、いつしかこの4ポジションに落ち着きました。
なお、キーを抜いた後、ハンドルを左右どちらかに動かすことでステアリングロックがかかります。だから「LOCK」なのです。
・イグニッションキー
というわけで前項に付随し、これもメディアではあまり目にしないでしょうから、あらためてお見せしましょう。キーレスプッシュスタートではないクルマのキー。車両1台につき、持ち手部分がキーレスエントリーのリモコンになっているキーと、そうではない平板のコンベンショナルなキーの2本が付属してきます。
筆者の旧ジムニーシエラも同じキーなのですが、リモコンボタンはロック/アンロック兼用のひとつだけ。押しているうちにいまどちらの状態かわからなくなるので、このタイプもロックとアンロック、それぞれのボタンを設けてほしいというのがユーザーとしての希望です。
なお、これがプッシュスタート式車になるとメカキー内蔵のリモコンが2つ。こちらはロック/アンロックボタンが個別についています。
・シフトレバー
試乗記にも書きました。ゲート、レバーとも、フロアシフトで使う場合の形状のままインパネ側のしかも垂直面に移動したものだから、低めの位置で手を上下させなければならず、使いやすいとはいえませんでした。PからRはブレーキ踏み&サイドボタン押し、R→N→D、L→D→Nはフリー、D→L、N→R→Pはロックボタン押しで操作しますが、RからNにしたいとき、またはLからDにしたいときでも、DやNに何度かオーバーランしてしまいました。
アルトの変速機の方式は全機種CVT(無段変速機)で、前進・後退・最終減速比が、FF、4WDとも同じであるばかりか、先回のワゴンRスマイルのFF、4WDともまったくおんなじもの。ただ、こちらアルトのほうがいくらか車重が軽いぶん、走りも軽やかな印象でした。とかくクルマの走りはエンジン出力で語られがちですが、本当は変速機での出力・トルクの増減具合と車両重量とのバランスで決まるわけで、単に数字だけであれこれ語るのは短絡的というものです。
・パーキングブレーキレバー
今後は足踏み式が主流になるかと思いきや、安全デバイスの普及でアダプティブクルーズコントロールとの兼ね合いもあって最近は一挙電動化。少なくとも乗用車では、ドライバーサイドのレバー式はかなり少数派になっています。
上に引き上げて制動、解除は上に引きながら先端のロックボタンを押し、下げて解錠。何をいまさらと思われるかも知れませんが、さきのダイヤル電話、カセットテープ同様、こちらもこれからの若人(わこうど)に知られなくなる可能性が…いやいや、まっさかァ~。
・運転席左側のスイッチ群
…といっても、アルトAの場合はオールダミー。めずらしいので載せただけですが、上段には、ハイブリッドXの全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車、全方位モニター用カメラパッケージ装着車だけにつくヘッドアップディスプレイの位置や明るさの調整スイッチがつきます。その下にも3つのダミーふたがありますが、これは何だろう? 取扱説明書には記載はありませんでした。何かの販社オプションか、将来何かのデバイスをつけたときのスイッチスペースか…?
・運転席右側のスイッチ群
上段左から右へ、車線逸脱警報機能、リヤパーキングセンサー、アイドリングストップシステムの、下段は左からデュアルカメラブレーキサポート(DCBS)、ダミーをはさんでESPの、それぞれOFFスイッチがずらりと並び、その真下にはETCユニットを、その右下には、ヘッドライトのマニュアル式光軸レベライザーのスイッチを配置しています。白色なら牛乳瓶のふたになりそうな丸い部分はダミーで、アルトではこれまたハイブリッドXだけにつくキーレスプッシュスタートのボタンのスペースになります。
・ボンネットオープナー
インパネ右下に配されることの多いボンネットのオープナーは、アルトではちょうどアクセルペダル右内壁に置かれます。なお、エンジンルームのふたは、アメリカ式では「フード(hood)」、イギリス呼びは「ボンネット(bonnet)」となります。
・サンバイザー
低全高のセダン型のフロントガラス上下寸に基づき、サンバイザーもごく普通のタテヨコ比。うら側には駐車券などをはさむベルト状のチケットホルダーがあります。
前回ワゴンRスマイルの回では、海野ユキさんがバニティミラーでお化粧直しをするシーンを載せましたが今回はお休み。代わりに筆者がと思いましたが、最廉価Aには運転席にも助手席にもバニティミラーがないため、写真は撮れませんでした。試乗車がハイブリッドX(運転席、助手席に標準)か、ハイブリッドSと同LEDランプ装着車、L・アップグレードパッケージ車(助手席に標準)には装備されます。
・ルームミラー
防眩機能なし! 筆者にとって、防眩機能はなければないでいいし、あればあったほうが便利でいいという程度のものですが、せめてオプションで選べるくらいの配慮はあってもいいでしょう。
ところでミラーの向こうにはデュアルカメラブレーキサポート用のユニット筐体がデン! と鎮座しています。昨今、このデバイスを見るたび、もうちょい小型化できないもんかネと思っていたのですが、明け方、夕刻の頃、クルマの向きしだいでは、ルームミラー上の空間から実にいい具合に太陽光が注ぎ込み、どうにもしようがないことが多々あります。過去、わざわざこのミラー上部用のバイザーをつけたクルマがありましたが、まだ小型とはいえないこのユニットが遮光してくれるのに役立っていることを発見しました。もっともこのときは、前方から太陽光をまともに受けており、 スズキセーフティサポートのシステムが一時停止する可能性もあるわけで…いい発見だと思ったけど、功罪相半ばなのでした。
・カメラ
すべてをひとりで行っている都合上、撮影時に光を操ることができず、うまく撮れていないのですが、前項のデュアルカメラブレーキサポート用のカメラを外から見るとこのようになっています。前方の状況を、特に距離も精度高く捉えるなら、ほんとうはふたつのレンズ間距離を広げるべく、いっそフロントガラス上辺の両端にあるのが理想だと思いますが、ワイパー払拭範囲外にあるため、いまのところこの位置が理想のようです。というわけでみなさん、特にカメラ部のガラスはきれいに保ちましょう。
・ルームランプ
現在の多くのスズキ車に共通して使われている、OFF-DOOR-ONの3ポジション式。エンジンOFFでも15分点灯を続けると自動で消灯するバッテリーセーバーがついているのと、DOORではいずれかのドア開で点灯、閉じた後でも約15秒間点灯後、徐々に減光しながら消灯、全ドア閉じでもキーを抜くと約15秒間点灯し、同じく徐々に減光しながら消灯します。さらに点灯中でもキーを挿す、キーもしくは運転席ドアをロックノブで解除、キーレスエントリーで解錠すると減光しながら消灯します。
●ドア内張り
昔々の初代アルトのドア内張りは、とにかく安く仕上げるためにただの平ボードを用い、上下には鉄板部分を露出させたままでした。ドアだけでなく、ピラーもサイド内壁部分も鉄まる出し。それを思えば、触ればカチカチのプラスチックに過ぎないにせよ、見た目にはずいぶん立派になっていることよ! どっしりした厚みを持つ見映えになっています。
・ドアハンドル&ドアロックノブ
ドアハンドル部にロックノブを併設。外部からロック状態をわかりにくくしているのと、ガラスを無理やり降ろしたそのすきまから、針金や棒などでの解錠操作をしにくくするという防犯の意味があります。ドアハンドルは、ハイブリッド2車がシルバー塗装品、ガソリン2車は写真のような未塗装状態となります。
今回はここまで。
次回は「ユーティリティ編・後編」。おもしろいものもあったぞ。
(文・写真:山口尚志)
【試乗車主要諸元】
■スズキアルト A(3BA-HA37S型・2022(令和4)年型・2WD・CVT・シルキーシルバーメタリック)
●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm ●ホイールベース:2460mm ●トレッド 前/後:1295/1300mm ●最低地上高:150mm ●車両重量:680kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.4m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:R06A(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:658cc ●圧縮比:11.5 ●最高出力:46ps/6500rpm ●最大トルク:5.6kgm/4000rpm ●燃料供給装置:EPI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):25.2/23.0/26.0/25.8km/L ●JC08燃料消費率:29.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:94万3800円(消費税込み・除くディーラーオプション)