■既存車とはまったく異なるプロポーションに
11月22日、フォルクスワーゲン(VW)初のフル電動SUVである「ID.4」が日本市場へ導入されました。内燃機関の既存車に対し「これがVW車?」と思わせる新しい造形要素が自慢のIDシリーズですが、そのデザインの特徴について、今回あらためてチェックしてみたいと思います。
ID.4は同社初の電動ワールドカーという位置づけです。世界戦略車などというと、どうしても「ゴルフ」をイメージしてしまいますが、実はサイズ的にはもっと大きくて、意外にも「ティグアン」を上回っています。
たとえば、全長の4585mmはティグアンより70mm長く、ホイールベースに至っては90mmも長い2770mmとなっています。
どうやら、このロングホイールベースとそれによる短い前後オーバーハング、そしてAピラーを前に出したキャブフォワードパッケージがIDシリーズの特徴のよう。ID.4の安定したスタンスの理由はここにあります。
フロントを見ると、ゴルフなど既存車のような左右幅いっぱいの大きなグリルは姿を消しました。BEVとして空気の取り込みはバンパー下のエアインテークで十分。一方で、ランプ周りはゴルフや「ポロ」のイメージが強く残っていて、やっぱりこれはVW車だと思わせてくれます。
●クリーンで滑らかなボディで空力性能を磨く
ID.4の最大の見所はサイドビューと言えます。近年のVW車と言えば直線基調のカチッとしたスタイリングが基本ですが、これが一転、曲面主体にシフトチェンジしているのです。
VW自身が「波のように力強いショルダーライン」と表現するサイド面は、たしかに前後フェンダーで大きな抑揚を見せ、滑らかにウェーブするショルダー面と、そこに引かれるキャラクターラインには「これがVW車?」と驚かされる程です。
さらにルーフだけはティグアンより35mmも低く、そのルーフラインと先のキャブフォワードスタイルの組み合わせが、独自のワンモーションフォルムを生んでいます。そこに20インチの大径タイヤを履かせたのですから、そりゃあスタンスのよさにも納得です。ちなみに、この低くクリーンなボディにより、空気抵抗係数は0.28を達成しています。
さて、内燃機関の既存車に対し、BEVを独自スタイルにするか否かはメーカーによって考え方が違うところ。ドイツ勢ではメルセデス・ベンツが「EQ」シリーズとして、フラッシュサーフェスを効かせた鏡面のようなスタイリングを展開していますが、VWもこれに近い発想のようです。
デザイン的な視点では、仮に両極端な表現であっても、それが同じメーカーのクルマなんだと思わせる「見せ方」に期待したいところです。