目次
■電動化時代に向けた戦略見直しを発表
2022年11月22日(火)、マツダが中期経営計画のアップデートと、2030年に向けた経営の基本方針を発表しました。
各国での環境規制や、地政学リスクの変化に対応して計画をアップデートするというわけです。
主要なテーマとして「2050年へ向けたカーボンニュートラル」、「2030年に向けた電動化戦略」、「2040年の目標とした高度運転支援技術」、そして「原価低減活動とサプライチェーンの強靭化」という4つが挙げられました。
ここでは「2030年に向けた電動化戦略」を軸に、サプライチェーンの強靭化というファクターにも注目しながら、マツダの発表内容を整理していきたいと思います。
2030年までを2022~2024年、2025~2027年、2028~2030年と3つのフェーズに分けているのが、電動化戦略の基本となります。
●サプライヤーも含めたサバイバルが必須
3つのフェーズは次のように想定されています。
・第1フェーズ(2022~2024年):既存資産であるマルチ電動化技術を活用
・第2フェーズ(2025~2027年):新しいハイブリッドシステムを導入。中国市場にEV専用車を導入。グローバルにバッテリーEVを導入
・第3フェーズ(2028~2030年):バッテリーEV専用車の本格導入および電池生産への投資
結果として、2030年時点のグローバル販売におけるEV比率は25%から40%を想定しています。
バッテリーEVの比率が半分近くなるということは、自動車生産におけるサプライチェーンも大きく変わるということです。
シャシー関連の基本構造や必要になる部品は大きく変わらないとしても、バッテリーEVの比率が高まっていけば、燃料やエンジンに関する部品は不要になります。
電子パーツにしても、エンジン制御に必要なものとバッテリー・モーター制御に必要なユニットでは要件が異なります。
エンジン関係の部品を作っていた既存のサプライヤーはビジネスが縮小してしまいますし、マツダとしても電動化に応じてマーケットニーズに合わせた生産供給ができるよう電動化時代のサプライチェーンを構築する必要があるわけです。
マツダを中心とした、広島・中国地域のモータウン(自動車関連産業)にとって、生き残りをかけた変革が求められているともいえます。
●「e-axle」を広島モーター連合で作り出す計画
注目したいのが、中期経営計画アップデートと同時に発表された『電動駆動ユニットの開発・生産に向けた協業』です。
単にマツダが電動化に対応するだけではなく、地域経済が持続的に発展していくことも視野に入れ、中国地域で電動化関連部品などの電動化技術を育て、マツダを含めたサプライチェーン全体を進化させることが、その狙いです。
具体的には、取り組みの第一歩として、オンド、広島アルミニウム工業、ヒロテックと電動駆動ユニットの高効率な生産技術の開発や、電動駆動ユニットの生産・供給体制に関する合弁会社「MHHO Electric Drive」が設立されました。
協業プロジェクトは、これだけではありません。
電動駆動ユニットの基幹部品である、シリコンカーバイドパワー半導体を含むインバーターの開発では、今仙電機製作所とロームと共同開発契約を締結しています。
今回、今仙電機製作所とインバーターの開発および基板の実装を含む生産技術を開発する合弁会社「Mazda Imasen Electric Drive」を設立したことも発表されました。
モーターでは、富田電機とモーター先行技術開発をするための共同開発契約を締結していますが、今回の協業プロジェクトにおいて、中央化成品および富田電機と共にモーター技術を学び育成する合弁会社「MCF Electric Drive」を設立しています。
協業プロジェクトの内容を見ていくと、インバーター・モーター・トランスアクスルといった電気駆動ユニット全体、いわゆる「e-axle」を生み出そうとしていることがわかります。
マツダが扇のかなめとなって「広島モーター連合」が誕生するという風に見て取れます。
電動化時代に日本の自動車産業が生き残るビジネスモデルを構築できるかどうかのテストケースともいえるでしょう。
このチャレンジに大いに注目していきたいと思います。