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■いずれはスーパーカー消しゴムの「世界大会」を
かつて、日本中の少年を熱狂の渦に巻き込んだスーパーカー消しゴム。あの懐かしの文具が今、なんと復活の兆しを見せています。果たして、21世紀のスーパーカー消しゴムはどのような進化を遂げているのでしょうか。カーヒストリアン・越湖信一さんによるスーパーカー消しゴムのシリーズ連載、これにて完結!
●デ・トマソ パンテーラの実車も参上
東京ビッグサイトの一角は異様な盛り上がりをみせていました。トラスで組まれた“やぐら”のステージには、私たちが哀愁を感じるあの学校机が置かれ、その対角線上に設けられたグリッドにはスーパーカーがスタートすべくブリッピングしている…。
おっと、失礼。興奮で“脳内描写”を語っていまいました。そう、そこに並ぶのはスーパーカー消しゴムでした。
今まさに、復活したスーパーカー消しゴムによる「第1回スーパーカー消しゴム落とし大会」が開催されているのです。
この「超精密スーパーカー消しゴム」は、かつてのものとは比較にならないほど精密で、かつ少し大きくなっています。
とはいっても実車の1/100、そのデリケートな“走り”をギャラリーにも楽しんでもらえるようにと、ブースの天井からは4Kカメラがそれを捉え、正面に備えたビデオスクリーンでギャラリーが観戦することができるのです。
「このスーパーカー消しゴム落とし大会を定期的に開催し、イタリアを含む世界大会に発展させます」と開会宣言をするのは、前回も登場したGGF-T代表の赤間保氏。世界大会なんて夢物語では、と思われる方もいるかもしれませんが、すでにスーパーカー消しゴムはイタリアで先行デビューを飾っていますし、大会開催の打ち合わせも始まっています。
実際、スーパーカー消しゴムの商品化も、大会も利益が出るわけがありません。どう考えても大赤字です。
しかし、赤間氏は、クルマの素晴らしさや美しさを次世代に伝えるという熱い想いだけで突き進んでいるというのです。だから今回のブースも懲りに凝っており、デ・トマソ パンテーラの実車までが並んでいるから驚きです。
●V12エンジンを模した専用ボールペンも誕生
大会のルールも明確に規定されています。イコールコンディションを徹底するため、ブースに設けられたガチャガチャから出てくるカプセルに入った個体が、出場者のマイマシンとなります。
ですから、ランボルギーニカウンタックLP400S同士の一騎打ちのようなレースとなることもあれば、デ・トマソ パンテーラGTS vs マセラティボーラなんていう場合もあります。チキンレースにて先攻後攻を決めた後は、それぞれの戦略に基づいてレースがスタート。いずれにしても、サーキットのコースである机の上から相手のマシンを落とした方が勝ちとなります。
その攻防を左右する重要なアイテムをここでご紹介しなくてはいけません。
かつてのブームの時、消しゴムを弾くのは三菱鉛筆製の「ボクシー」一択でした。ペンの横にあるリリースボタンを押して、ボールペンの芯を引っ込めるタイプのボールペンだけがこの用途に叶ったのです。
そのボクシーのパワーアップを狙って、当時の子どもたちはチューニングにも勤しみました。中のスプリングを延ばしたり、はたまた2個装着したり。いずれにしても、スーパーカー消しゴム本体とボールペンは親密な関係にありました。
そこでGGF-Tは、スーパーカー消しゴム専用のボールペンを開発したのです。
●実況やコメンテーターも超本格的
ボールペンのノック部分には、なんとV12エンジンをかたどる机面への密着セクションが設けられています。さらに、押し出す強度を三段階に変えられるフロアシフトタイプのリリースレバー、その先にはチタン風のマフラーエンドがデザインされているではありませんか。
消しゴムをプッシュするアクチュエーター部は2段階のセットが可能となり、自転車の変速機のように、全部で6段階にスーパーカー消しゴムを押し出すパワーを変えることができるのです。
この「V12エンジン型ブースターペン」の登場により、スーパーカー消しゴムのパフォーマンスは大いにカイゼンされました。このボールペンもイコールコンディションを追求するため、大会サイドで用意したものが出場者へランダムに与えられます。
果たして、ゲームには小さなお子さんから大人まで、多くの参加者がエントリーしました。複数回行われた予選が終わり、熱狂の本戦へとなだれ込んだのでした。
ゴングが鳴り、レフェリー“ひな嬢”のコントロールでレースは進んでいきます。ちなみに実況は格闘技系で定評ある大楽聡詞氏、そしてコメンテーターとしてスーパーカーの権威たる元GENROQ編集長の明嵐正彦氏がタッグを組み、ディテイルのこだわりも十分です。
このスーパーカー消しゴム落としは戦略が必要です。力任せに消しゴムを弾いてもダメなのです。なぜなら、攻撃を掛けた側が、横転や裏返しになる確率がそれなりにあるからです(横転や裏返しになった時点で敗者となる)。
だから、ブースターペンのヒットポイントと、消しゴムのどの部分がどの角度で相手にヒットするかを冷静に判断せねばならないのです。
二日目の決勝は小学校1年生の“わたる”選手と“ゴッホ”青年が白熱の試合展開を見せてくれました。ちなみにウラッコの“わたる” vs LP400Sの“ゴッホ”というランボルギーニ対決。
その結果、落ちついて戦局を読んだ“ゴッホ”青年の勝ちに終りました。「第1回スーパーカー消しゴム落とし大会」の名誉あるウィナーとなったのでした。
このシンプルに見えてなかなか奥の深いスーパーカー消しゴム落とし。今後の展開に期待です。
(文・写真:越湖 信一)
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