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■全日本の最高峰クラスでヤマハ11年ぶりの快挙
モトクロス競技の国内最高峰といえるのが「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ」のIA1クラス。その第6戦 関東大会[2022年10月30日(日)、埼玉県・オフロードヴィレッジ]で、ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)のワークスチーム、「ヤマハ・ファクトリー・レーシングチーム(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)」に所属する富田俊樹選手が、2022年シーズンの年間チャンピオンを獲得しました。
ヤマハのワークスマシン「YZ450FM」を駆る富田選手は、全日本モトクロスの最高峰クラスでの年間チャンピオンは自身初。ヤマハにとっても2011年以来、11年ぶりの快挙となりました。
●アメリカAMAの参戦経験もある実力派
全日本モトクロス選手権は、モトクロス競技の国内最高峰といえる大会で、なかでも、主に4ストローク450ccマシンで争うIA1は、まさにトップ・オブ・トップといえるクラスです。
ちなみに、モトクロスとは、人工的に作られた丘や起伏に富んだダートコースを専用バイクで走り、速さを競う競技。
マシンには、速さだけでなく、未舗装路をハードに走る耐久性や扱いやすさなどが求められると共に、ライダーにもテクニックや体力、レースでの駆け引きなど、多岐に渡るポテンシャルの高さが要求されます。
今回、IA1クラスの年間チャンピオンとなった富田選手は、石川県出身の31歳。2013年と2015年には、IA1の下位クラスで、主に4ストローク250ccマシンで闘うIA2クラスの年間チャンピオンを獲得。
また、2016年〜2019年には、アメリカで最も権威があるAMAモトクロス選手権で闘った実績もあります(年間の最高順位は2018年の13位)。
そんな富田選手は、2020年シーズンから、国内最高峰のIA1クラスに参戦。2021年シーズンまで、2年連続で年間2位を獲得し、高い実力を持つことを証明しました。2022年シーズンは、その速さを極めると共に、自身初のタイトルを獲得すべく、シーズン序盤から大奮闘します。
特に、圧巻だったのは、第5戦 HSR九州大会(2022年10月9日、熊本県・HSR九州)で、1大会3ヒートのレースすべてに優勝し、パーフェクトウィンを達成。ランキング2位の能塚智寛選手(カワサキ)と77ポイント差のランキングトップで第6戦を迎えました。
●ヤマハのYZシリーズが3冠を達成
そして、運命の第6戦。2ヒート制で開催された今大会で、富田選手はヒート1を予選11番手から猛然と追い上げ3位でフィニッシュします。
続くヒート2では、スタート直後の1コーナーでマルチクラッシュが発生する波乱をうまく避け、アグレッシブな走りで2位を獲得。最終戦を残し、自身初、ヤマハにとっては2021年以来11年ぶりの栄冠を手にします。
ちなみに、第6戦のヒート2の1位は、同じヤマハ・ワークスの渡辺祐介選手が2022年シーズン初優勝。ヤマハはワンツーフィニッシュも達成しました。
また、2022年シーズンの全日本モトクロス選手権では、IA2クラスでも、ヤマハ・ワークスのジェイ・ウィルソン選手が年間チャンピオンを獲得。富田選手のIA1クラスと合わせ、ヤマハは、トップライダーが競う国際A級の2クラスで、ダブルタイトルを手中にしたことになります。
さらに、国際A級の登竜門である国際B級のIBオープンでも、「YZ250F」を駆る西岡蒼志選手がチャンピオンを獲得。これらにより、ヤマハのYZシリーズは、2022年シーズンの全日本モトクロス選手権シリーズで、「三冠を獲得する」という偉業を達成しています。
なお、2022年シーズン、ヤマハは富田選手などのワークスマシン「YZ450FM」に、開発中の「EPS(エレクトリック・パワー・ステアリング)」を搭載し、テストなどを行っています。
これは、独自のセンシング技術を用いた2輪車向けステアリングサポートシステムで、2輪車が走行する際の安定性に寄与すると共に、軽快性の向上やライダーの疲労軽減などに貢献する機能を持つといいます。
富田選手の活躍に、この新システムがどう貢献したのか、また、将来的に市販車へ投入されるのかも、とっても気になるところです。
(文:平塚 直樹)
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