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■後れを取っていたホンダが放った起死回生の新世代ミニバン
1994(平成6)年10月20日、ホンダは新しいタイプのミニバン「オデッセイ」を発表、翌日から販売が始まりました。先にデビューして大ヒットしていたトヨタ「エスティマ」に対抗するため、ホンダは背の低い乗用車感覚で乗れるオデッセイを市場に放ち、ミニバンブームを牽引しました。
●“天才タマゴ”のキャッチコピーでデビューしたエスティマ
1990年以前のミニバンは、ほとんどが商用バンをベースにした箱形のワンボックスカーで、乗用車のような乗り心地や操縦安定性は期待できませんでした。その流れを変えたのが、1990年に登場した“天才タマゴ”のキャッチコピーとともに登場したトヨタの「エスティマ」でした。
ミニバン専用のシャシーを開発し、床下に75度寝かせたエンジンをミッドシップレイアウトで搭載。スタイリングは、ボンネットからAピラー、ルーフラインにかけてなだらかな弧を描き、ボンネットやサイドパネルも曲面で構成。ワンボックススタイルでなく、洗練された1.5ボックスの卵型フォルムで大ヒット、エスティマがミニバンブームに火を付けたのです。
●常識を覆した背の低いミニバンで人気爆発したオデッセイ
エスティマに先を越されたホンダは、エスティマよりさらに乗用車ライクなミニバン、ステーションワゴンの背を高くしたような独特なスタイルのオデッセイで巻き返しを図りました。
ベースとなったのはアコード。FF用のシャシーやエンジンなどを使ってボディを可能な限り低くし、全高1650mm程度の空力に優れたスタイリングを実現。リアドアは、ミニバンの特徴であるスライド式ではなく、乗用車の感覚を大事にしてあえて乗用車と同じヒンジ式が採用されました。
ボディタイプは、2/2/2人の6人乗りと2/3/2人の7人乗りを用意し、パワートレインは2.2L SOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はボンネット内にエンジンを搭載したFFベースで、デュアルポンプ式4WDの選択も可能でした。
ボンネット内にエンジンを収めることによって、車高が低くても広々とした車室内空間が確保されたのです。
ミニバンの常識を覆した乗用車感覚の初代オデッセイは、1995年には販売台数12万台を超える空前の大ヒットを記録しました。
●一世を風靡したオデッセイもついに幕を下ろす
その後も、オデッセイはエスティマとともにミニバン市場を牽引、2003年に低床設計をさらに突き詰めて、全高を1550mmまで抑えた3代目が登場。これが、逆に裏目となって販売台数が徐々に低迷し始めます。
2010年を迎える頃には完全に風向きが変わり、低床にこだわらずにむしろ居住性を重視した全高を高めたミニバンが人気となり、背の低いミニバン人気は一気に低迷します。オデッセイも2013年の5代目でスライドドアのボクシーなスタイリングに変更しましたが、“時すでに遅し”で以前のような人気を取り戻すことはできませんでした。
その後も、商品力強化を図りますが、歯止めはかからず、結局2021年に生産を終了してしまいました。
オデッセイの生産終了は、まさに背の低いミニバンの終焉を意味しました。あれだけ人気があったのにと思いますが、軽のハイトワゴンが市場を席巻しているように、クルマがスタイリングよりも実用性が重視されるようになった表れではないでしょうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)