ルノー独自のフルハイブリッド「E-TECH HYBRID」が追加されたコンパクトSUV「キャプチャー」の走り

■F1譲りのドッグクラッチは、スムーズでしかもダイレクト感のある変速フィールを実現

以前お伝えしたように、ルノー キャプチャーにフルハイブリッド車の「E-TECH HYBRID」が追加されました。

ルノーの「E-TECH HYBRID」は、スムーズかつダイレクト感のある走りと低燃費を両立している独自のフルハイブリッドです。CセグメントのクロスオーバーSUVであるアルカナ、Bセグメントハッチバックのルーテシアに続き、Bセグメント級SUVのキャプチャーにも用意された形になります。

ルノー キャプチャー
キャプチャーに追加されたルノー独自のフルハイブリッド「E-TECH HYBRID」

アルカナは「E-TECH HYBRID」のみ、ルーテシア、キャプチャーは、純ガソリンエンジン仕様も引き続き設定されています。

同ハイブリッドをおさらいすると、メインモーターのE-モーター、交流同期電動機であるHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)に、1.6L直列4気筒ガソリンエンジン、これらをつなぐドッグクラッチマルチモードATからなります。

ルノー キャプチャー
1.6Lエンジンは、エンジンマッピング、ピストン、コネクティッドロッド、クランクシャフトなどが新設計された

F1譲りのドッグクラッチがキモで、クラッチやシンクロナイザーも廃止するという、従来の市販車にはない技術が投入されています。

トランスミッションは、エンジン側として4段、モーター側として2段の変速ギアを備えています。気になるのは、変速時のシフトショックや耐久性ですが、少なくても前者に関しては、今回の3台で初出とは思えないほどスムーズで、しかも適度なダイレクト感のある変速フィールを堪能できます。

ルノー キャプチャー
「E-TECH HYBRID」のシフトレバー

エンジンとトランスミッションの回転差を巧みに制御していて、よほど感覚を研ぎ澄ませていないと音や振動は伝わってきません。

クラッチとシンクロナイザーを廃止することで、軽量、コンパクト化とコスト削減が図られているのは間違いなさそうです。実際に、既存のガソリンエンジン車にも追加できているワケですから、バッテリーEVやPHEVなどだけでなく、CO2を減らす選択肢として有益なのは、トヨタのフルハイブリッド(THSII)の例からも分かります。

●タウンスピードや中間加速域のスムーズな走りが印象的

クラッチがないため、発進時や後退時はモーターが担い、タウンスピードなどの低速域では、そのままモーター走行の領域が大きく、高速域ではエンジンが頻繁に始動するものの、100km/hで巡航している際は、モーターのみで走行しているのがメーターのエネルギーフロー(表示は小さめ)で確認できます。

ルノー キャプチャー
キャプチャー「E-TECH HYBRID」のリヤビュー

タウンスピード、中間加速がスムーズであるのに対して、高速域では多少頭打ちという印象も残るものの、日本の高速道路での実用的な速度域では何ら不足はありません。

どこから踏んでも比較的トルク感があり、ストレスの少ない加速フィールが得られるのが特徴で、モーターならではの特性も実感できます。

1.6Lのエンジンスペックは、69kW(94PS)/5600rpm、148Nm/3600rpm。メインモーターは、36kW(49PS)/1677-6000rpm、205Nm/200-1677Nmとなっています。サブモーターのHSGは、15kW(20PS)/2865-10000rpm、50Nm/200-2865rpm。

ルノー キャプチャー
電動パーキングブレーキを備える

メインモーターの最高出力は、軽自動車のNAエンジン程度ではあるものの、最大トルクは分厚く、街中の大半をモーターでまかなうことも可能。もちろん、バッテリー残量や速度域、アクセルの踏み方などの状況によりエンジンはすぐに始動します。

回生はシフトポジションを「B」にすると強まり、減速エネルギーはもちろん、駆動用バッテリーに回収されます。パドルシフトはなく、回生具合を選択するには、「D」のままか、シフトポジションを「B」にして強めるという選択肢になります。

●ガソリンターボ車から110kg増も、乗り心地の面ではメリットも

また、キャプチャー「E-TECH HYBRID」は1420kgという車両重量で、1310kgの1.3L直噴ターボよりも110kg重くなっています。先述したように、低速域から中間加速でのスムーズな加速フィールは、ガソリンターボよりも上という感触が得られます。つまり、重量増のハンデはあまり抱かせません。

ルノー キャプチャー
基本的な造形やデザインは、純ガソリンエンジン車に準ずる

さらにアルカナと比べると、同じエンジン、モーターのスペックにもかかわらず、キャプチャーは50kg軽いこともあり、加速やハンドリング時のキレが若干鋭いのも印象的です。

また、キャプチャーも使っている「CMF-B」プラットフォームは、フランス車としては、足まわりがかなり硬めという印象でしたが、重量増は乗り心地の面では良い方向に作用しているようで、低速域で若干揺すぶられるようなシーンはあるものの、キャプチャーやルーテシアのガソリンエンジン車よりも角が取れたような乗り味を享受できるのも魅力でしょう。

ルノー キャプチャー
キャプチャー「E-TECH HYBRID」のフロントシート

なお、「E-TECH HYBRID」のWLTCモード燃費は22.8km/Lで、輸入車のSUVで燃費ナンバー1を誇っています。1.3Lガソリンターボは、同17.0km/Lで、5.8km/Lの差があり、ランニングコストを重視するのなら見逃せないポイントになっています。

そのほか、装備では、後退時に左右からの接近車両を知らせて安全性を向上させる「リヤクロストラフィックアラート」、10.2インチフルデジタルインストゥルメントパネルを標準化しているほか、運転席電動調整機能付レザーシートの「レザーパック」仕様も用意されています。

●価格
「ルノー キャプチャー E-TECH HYBRID」:374万円
「ルノー キャプチャー E-TECH HYBRID レザーパック」:389万円

(文・写真:塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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