同じシリーズハイブリッド「日産ノート」との走りの違いは?「直列」ハイブリッドの走りっぷり-その2- ダイハツ・ロッキー【モロズミ的クルマのティスティング実況&考察】

■スモールSUVの“常用域”への意識が伝わる「力」の仕込み

ロッキーe-HVその1」では、日本で今、味見できるシリーズ・ハイブリッドの代表選手、日産ノートの体感実況をお伝えしましたが、次はダイハツロッキーに加わったe-SMART HYBRIDについても同じようにその特性を“言語化”してみようと思います。

⚫︎電池の電力をどんな状況でどれだけ“投入”するか

ロッキーe-SMART HYBRIDのパワーパッケージと電池の配置
ロッキーe-SMART HYBRIDのパワーパッケージ(走行用モーターとエンジン+発電機)、その上にレイアウトされた電力制御ユニット、そこから強電系配線が後方の電池との間を結んでいる。

冷間状態からスタートボタンを押してパワーパッケージを目覚めさせると、まずはエンジンが始動。アイドリングよりちょっと高い回転を保って充電に入りました。電池残量を示すメーター内のバーグラフの、フル8セグメントのうち4セグメント前後をキープしようとしているようです。この始動直後の充電・エンジン運転では、ドライバー(私)がポジションを決め、動き出す準備をする程度の時間で6、7つ目のセグメントまで増えました。

ロッキーe-SMART HYBRIDの車体骨格とバッテリーパックの搭載場所
ロッキーe-SMART HYBRIDの車体骨格とバッテリーパックの搭載場所(リアシート座面直下。もともとは燃料タンクが占有していた空間)
ロッキーe-SMART HYBRIDのバッテリーパック
ロッキーe-SMART HYBRIDのバッテリーパック

そこでエンジンがいったん止まったので、そこから走り始めます。停止から押し出す瞬間はこのロッキーでもモーター駆動だけなのですが、動き出してすぐにエンジンが始動します。この「押し出し」の瞬間が、実走行の中で燃料消費量の増加、つまり燃費悪化にいちばん影響するところだけに、ここはもう少し電池からモーターへ送る電力だけで押すほうが良いはず、と思いますが、これだけ早めにエンジンを掛けて発電に入るということは、走行用電池の容量をかなり少なめに抑えたのだろうな、とこの最初の(クルマとの)対話だけでも推測できます。

⚫︎動力モードは「2ペダル」と「1ペダル」を使い分ける設定

ダッシュボード右下のスイッチ群にあるペダルモード切替スイッチ
ダッシュボード右下のスイッチ群にあるペダルモード切替スイッチ

ここで、電動駆動のモードの選択が若干わかりにくい。普通に走るのならセレクターの「D」と「B」の2つのレンジの使い分け。それとは別に、ダッシュボードの右側下に並ぶ正方形ボタンの中に「S-PDL」と表記されたスイッチがあり、これを押すと“ワンペダル・オペレーション”に。その状態では「Dレンジのみで走行してください」というメッセージがメーター内に出まる。

さらにこの状態では、ステアリングホイールの右側スポークにある「DRIVE」というボタンで「エコ」と「ノーマル」の走行モードが切り替わります。ただ、この「エコ」と「ノーマル」はアクセルペダルストロークとモーター投入電流の関係を変えるもので、例えば流れのいい幹線道路を40km/h程度で走りつつ、アクセルペダルをその位置に固定したまま「エコ」から「ノーマル」へスイッチングすると、一瞬「押される」=駆動力がステップ状に強まります。つまり、アクセルペダル位置に対するモーター駆動電流を増やしたわけです。

この「ノーマル」モードは、特にアクセルペダル・ストロークの最初のところだけ駆動力増加の立ち上がりが強め。電動モーター駆動ならではの初期トルクの強さを、「蹴り出し」的な加速感=駆動力増加にしたいという思いがあるような印象を受けましたが、いささかわざとらしいかな。

ちなみに、エコモードではアクセルオフ時の回生も強くしています。これは、電力収支からすれば基本だけれども。ただしこのクルマの場合、回生動作は、減速していって10km/hに至る手前、いくつかの条件の組み合わせ次第のようですが、15km/hを切るあたりからふわっと弱まり、そこからはメカニカルブレーキによる減速が必要になります。電動駆動系とメカニカルブレーキの間の「協調制御」が入っていないのかな、という印象。

その一方で、トヨタがプリウス最初期モデルで「キュッと止まる」という市場反響に苦労して、マイナーチェンジ時点で停止まで回生を続けるのを止めてしまい、まったくそのまま見直し無く継承しているのをお手本にしたのかもしれません。

やや余談ながら、初期のプリウスは某誌の長期テストでずいぶん走らせましたが、電動駆動で回生が持つ意味が十分にわかっているので、「いかに制御をリファインするか」だと当時から思っていて、今はそこをうまく仕上げ、止まるギリギリまで回生を効かせつつ、最後のところでメカニカルブレーキにハンドオーバーして止める、ができている車両・メーカーが現れています。ただし日本車以外、ですが。

⚫︎モーター直接駆動の中で別に働くエンジンをどう発電させるか

ロッキーe-SMART HYBRIDのコックピットエリア
ロッキーe-SMART HYBRIDのコックピットエリア

交差点からクルマの群れの中で流れに合わせてゆく程度のなめらかな発進・緩加速では、何とか電池→モーターだけで走っていき、30~35km/hあたりに達したところでエンジンが始動します。そこからはアクセルペダルの踏み込み(まだフルストロークに対して多くても3分の1程度ですが)に対して、最初の“押し出し”を強めに出すところで、まず電池が持っている電力を投入して駆動力を強める感触があり、それに合わせるようにエンジン回転と音が高まりつつ駆動力が強まります。

さらにもう少し速度が上がって走っている状況では、加速をイメージしたアクセルペダルの踏み込みから、そこで現れた加速度を感じつつ、足を止めてペダルポジション維持…、あるいは上り勾配で駆動力要求をアクセルペダル踏み込みで表現し、そこで一定ストロークで維持…、というような運転操作に対しては、エンジン回転が上がりつつ燃焼音が高まってから一定に。つまり、エンジンサウンド・振動が一定になったまま駆動力を保持する状態が継続します。

このあたり、エンジンの始動・回転変動、それを伝えてくる音・振動は、ノートよりも「エンジンが仕事をしている」ことを、より頻繁に伝えてきます。これは動き出しのところでも確認できたように、駆動用電池の容量が少なめで、走行に使う電力はエンジンが発電して供給する、という関係を基本に仕立ててあることを示しているのです。

その一方で、さらにアクセルストロークを深くしていったところでは「ゴォワー」とエンジン回転がさらに上昇し、そこで燃焼も高まって、それに合わせて駆動力も強まります。

ロッキーe-HVのメーターディスプレイ
カラーLEDのメーターパネルに表示される内容とパターン各種。どれもモーターにどのくらいのエネルギー(電力)を送り込んでいるか、あるいは回生しているか、がが主表示で瞬間燃費も(エンジン主動力のクルマとは変動がだいぶ異なる)。左端の表示スタイルではパワーメーターが回転する立体円盤になる。

モーター直結駆動とはいえ、シリーズハイブリッド方式ではエンジンの音・振動の高まりにはCVT車と同様のルーズさは多かれ少なかれ付きまとうのですが、ロッキーはアクセルペダル・ストロークとそこで(ドライバーが)欲求している駆動力の関係、その時の車速と走行負荷も含めて、エンジン回転が無段階に変化していきます。ここでエンジン回転が速度上昇に対して比較的緩やかに上昇するのと、その中で駆動力も強まっていくので、CVT独特の、エンジン回転と車速の関係がルーズになって駆動の実感に欠ける感覚、いわゆる「ラバーバンド・フィール」はかなり抑えられている、と言っていいでしょう。このあたりは、シリーズ・ハイブリットの使い方としては良い方向。

ノートでは、アクセルペダル踏み込みに対して、まずエンジン回転を上げて発電量を確保してから(?)駆動に移り、そこからはエンジン回転と負荷を感じさせる音・振動が一定になることが多い(特に負荷が大きめの状況では)ので、ドライバーにとってはよりルーズな反応に感じられます。

ちなみにこの印象、ノートではとくに前型で顕著だったが、新型は多少改善。しかしオーラは…というあたりはこの記事<その1>に記したとおり。

それはさておき…。

話をロッキーに戻すと、平坦路で車速を維持する状況では50~53、54km/hあたりまでは、あるいはもう少し上までは電池電力だけを使った電動駆動で走行が可能。そういう状況からアクセルペダルを少し押し込むと、最初の踏み出しは手持ちの電力を使ってモータートルクを強めにいくことが伝わってきて、その中からアクセルペダルを踏み込むストローク量に応じてエンジンの回転と音が伝わり、そして高まり、駆動力もそれに合わせて強まります。

ここでアクセルペダルをある程度ステップ状に(カクッと)踏み込んだ場合は、最初にモーターによる駆動力の増加がわずかに、あるいは少し入りつつ、エンジン回転と音がふわっと高まる。つまりこうした状況になると、ドライバーとしては右足の動きに対して駆動反応が遅れているという印象はほぼなくなります。

⚫︎アクセルペダルの動きを駆動力にどう「表現」するか

ダイハツ・ロッキーe-SMART HYBRID
ダイハツ・ロッキーe-SMART HYBRID

次にワンペダル・オペレーション(「S-PDL」オン)での反応を、まず「エコ」モードから。

このモードだと、アクセルペダル・ストロークの踏み始めから15mmくらいまでの駆動反応が若干ぼやけていて、それ以上踏み込んだ奥の位置で駆動力が「出てくる」感触。

もう少し細かく観察すると、アクセルペダルの「駆動ゼロ」位置が踏み始めよりもちょっと奥になり、「エコ」だとそこからさらにペダルを動かすゾーンで駆動力の立ち上がりが弱く、エンジン回転が上昇してからそれに合わせるように「力」が出てくるので、応答としては少しルーズな感触になるのです。

これだと一般のドライバーでは、アクセルペダルを踏み込んでも駆動力の増加が感じられないのでさらに踏み込み、遅れて駆動力が過剰に現れる。ここではエンジンの発電量を増やそうと多めの燃料を送り込んでしまって、そこで「加速した」と感じてアクセルペダルが戻され、そこまでに上乗せした燃料は無駄になる…ということが繰り返されるわけで、これが「エコ」モードかどうかは判断が難しいところです。

もちろん、右足を雑に動かしたのに対して、その最初のところはモーター駆動電流の立ち上がりを鈍くすれば電力消費を抑えることにつながる、という面はあるけれど、でももう少しプログレッシブな反応をしたほうがコントロール性が良く、それを体感することでドライバーの習熟が進めば、「必要なだけ踏んで、足を止める」操作が身に付いてゆくはずで、そのほうがずっと「エコ」につながります。

ダイハツ・ロッキーe-SMART HYBRID
ダイハツ・ロッキーe-SMART HYBRID

一方、ワンペダル・オペレーションにおける駆動ゼロから減速方向へ、そこでの回生については、ペダルの戻しの最初のところはかなり弱く、駆動ゼロ位置からアクセルペダル・ストロークの最初の「遊び」の手前まで、1cmあるかないかの戻しストロークの中で、減速度がどう出るか、それを感知・コントロールするのは私でもけっこう難しい。右足を戻してある程度はっきりとした減速度が現れると、そこからフルオフまで戻しても減速はほとんど変わりません。

回生減速を強めにしている「S-PDL+エコ」モードでも、例えば70、80km/hからアクセルペダルをフルオフにしても、それほど強い減速度は現れません。ここではもう少しメリハリのある減速感があっても、ワンペダル・オペレーション、あるいはBモードでは好ましいと思います。

そのままずっと減速を続けていってみると60km/h前後、さらに50km/hを切るあたりから、と何段階かに分かれてステップ状に、回生による減速度が強まっていきます。そして最も強くなるのが40km/hあたりから下。30~20km/hあたりではある種の(磁力)吸い付き感もあるのですが、その先さらに速度が落ちると、前述のように回生による減速が「スイッチを切る」ように抜ける現象が起こります。

こうした現状の作り込みでは、柔らかい駆動→駆動ゼロ→回生減速をアクセルペダルで柔らかく、かつ瞬時にコントロールする右足ワンペダル・ドライビングは、なかなかきれいにはできないな、というのが私の実感。

ダイハツ・ロッキーのカットモデル
バッテリーパックはリヤシート座面下
バッテリーパックはリヤシート座面下に搭載

またこれは駆動方向・回生減速方向ともに言えることですが、このロッキーのシリーズ・ハイブリッドも、そして日産シリーズ・ハイブリッド各モデルも、制御の構築がきわめて日本的。私が日本的と表現するのは、アクセルペダル・ストローク、つまりペダル・ポジションだけを基本に、それに車速を組み合わせる程度で、モーターへの電力投入量、さらにはエンジンの回し方・使い方・発電量を制御している、だけ、という意味です。

欧州勢が、最近の体験で言えばドイツ各社に加えてフランス、イタリア勢も、アクセルペダルの「動き」に運転者の意図がどのように表現されているかを、現実の運転の中で把握し、分析し、動力源としてはそれにどう反応するのが「クルマを走らせる」のに良いかを(駆動・減速の両方で)考え、織り込んだ制御を組み立て、実現してきています。そして、そこにもそれぞれのテイストの違い、ブランドとしての味付けまで織り込んできています。

「日本勢」は、それらとの間に「技術的な仕立て」においてちょっと差が開いてしまっています。この話、掘り下げると「深い」ので、また改めて。

⚫︎まとめると…

とはいえこのロッキー、シリーズ・ハイブリットとして、内燃機関で発電した電力をモーターに送り込んで、その時その時の駆動力要求に応える、という基本の部分と、エンジンを止めた状態でかなりの走行パターン、例えば日本の市街地~郊外の道とクルマの流れ、欧米であれば市街地の常用域の多くをカバーできる駆動力を発生するパワーパッケージが形作られていることは確認できました。その特質を活かすように実際の走行特性を仕込んであり、それなりに良い燃費とまずまずのドライバビリティを得ている、と言えるでしょう。

ダイハツのシリーズハイブリッドの名称は「e-SMART HYBRID」
ダイハツのシリーズハイブリッドの名称は「e-SMART HYBRID」

しかし「シリーズ・ハイブリッド」という動力形態そのものが、理屈として、内燃機関で燃料の熱エネルギーから得た仕事を発電に使い、発電した電力をモーターと電池に分ける、かつ電池からも時々電力を引き出すというやり方をした場合、複数回のエネルギー形態転換を行うわけで、トータルのエネルギー効率は決して良くはない、と考えられます。

また、モーターという原動機の特質をちゃんと使いこなすことで、駆動・回生ともにもっと走らせやすい、人間にとって走らせる実感が高い、そういうクルマができるはず。これは今回の2車に限らず、日本のメーカーが送り出している「電動」車両のほぼ全てに感じていることなのだけれど…。

この話、自動車づくりの本質に関わる領域なので、今後もさまざまに語ってゆくことになると思います。

その1:日産ノートe-POWER編>はこちら。

(文:両角 岳彦/写真:ダイハツ,小林和久)

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この記事の著者

両角岳彦

両角岳彦 近影
自動車・科学技術評論家。1951年長野県松本市生まれ。日本大学大学院・理工学研究科・機械工学専攻・修士課程修了。研究室時代から『モーターファン』誌ロードテストの実験を担当し、同誌編集部に就職。独立後、フリーの取材記者、自動車評価者、編集者、評論家として活動、物理や工学に基づく理論的な原稿には定評がある。著書に『ハイブリッドカーは本当にエコなのか?』(宝島社新書)、『図解 自動車のテクノロジー』(三栄)など多数。