ホンダ・フィットが渋滞での運転支援を進化。ハイブリッドもパワーアップ【週刊クルマのミライ】

■5つの個性がさらに強調されたマイナーチェンジ

ホンダのコンパクトカーとして定番モデルとなっている「フィット」が、2022年秋のマイナーチェンジを宣言。

ティザーサイトにおいて、スタイリングのリフレッシュやメカニズムの進化、そして新グレード「RS」の登場をアナウンスしています。

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公開された画像ではバンパー開口部も大きくなっているように見える(画像はLUXE)

スタイリングの変化としては、注目したいのはフロントバンパーの変更が確認できるところでしょう。

柴犬をモチーフにしたという基本的なスタイリングは維持しながら、フロント開口部のメッキ加飾をより効果的なレイアウトとすることで、グリルの存在感を増しているのはイメージを大きく変えるディテールアップといえます。

こうした変更は、グレード構成による違いを明確にしているという効果もありそうです。

BASIC・HOME・LUXEという従来からある各グレードは、ともすれば標準スタイルの松竹梅のような印象もありましたが、それぞれのグレードによる個性の違いが明確になった印象があります。

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SUVテイストのCROSSTAR(クロスター)。公開された画像にはマイナーチェンジ前はメーカーオプションのルーフレールが備わっている

さらにクロスオーバーSUVテイストのCROSSTARは、バンパー下部にシルバー加飾を追加することでアンダーガード的な意匠を入れ込んでいたり、ドアミラーをブラックにしたりといった変更によりSUVキャラクターを強めているといえそうです。

ティザーサイトで公開されているCROSSTARの画像では、従来モデルでメーカーオプションだったルーフレールが備わっているのも、SUVテイストの強化を感じさせます。

さて、ここまでは従来からあるグレードの進化ですが、NESSというスポーティグレードはマイナーチェンジによって消滅する模様です。

しかしフィットはスポーティ性を諦めるわけではありません。むしろ、よりダイレクトにスポーツを表現する新グレードとして、「RS」が帰ってくることが宣言されました。

初代フィットの途中で追加されて以来、ホンダスポーツの入門モデルとして、ホットハッチ的なポジションとなっていた伝説的グレードの復活です。

●ガソリンエンジンのRSも用意されるが…

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新設されるRSには、現行フィットとして初めて減速セレクター(パドル)を備える

フィットRSの復活に合わせてか、フィット全体としてe:HEV(2モーターハイブリッド)のモーター出力が向上されることも発表されました。

どの程度のパワーアップになるのかは不明ですが、アクセルの応答性向上と合わせて、駆動力と加速力を高めているといった内容がティザーサイトには書かれています。

加速感ではなく、加速力の向上ということは数字で表現できるようなパフォーマンスアップをしていることが期待できます。

さらに、RSグレードのハイブリッドにはドライブモード(スポーツ/ノーマル/ECON)が備わることも発表されています。

ホンダのハイブリッド「e:HEV」のスポーツモードといえば、シビックe:HEVにも採用されています。モーター主体で走行するハイブリッドシステムながら、シビックではエンジンサウンドの演出も含めてエンジン主体で走っているかのようなフィーリングが味わえるようになっています。

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スポーティなRSが新設定されたのが最大のニュース

さらにパドルによって回生ブレーキの強弱をコントロールする減速セレクターも備わります。走りに特化したフィットRSがどのような刺激を与えてくれるのか、ファンならずとも興味津々といったところではないでしょうか。

メッシュ形状のフロントグリル、バンパー部分のアンダーグリルに輝く「RS」のロゴなど非常にスポーティな演出の感じられるフィットRSは、スポーツドライビングの楽しめるハイブリッドカーとして新しい世界を開いてくれるかもしれません。

ひそかに注目したいのは、ガソリンエンジン車にもRSグレードが設定されるということです。

ホンダのe:HEVは、MTとの組み合わせは考えられないメカニズムなのですが、エンジン車にもRSがあるとすればMTとの組み合わせが不可能とはいえません。

現時点ではMTの設定については何も発表されていませんが、フィットにRSグレードが復活することで将来に向けて様々な期待が高まりそうな気配です。

●渋滞時の車線維持機能も新設定

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グリス部のメッキ縁の位置を上にすることでオーソドックスな雰囲気に変身した(画像はHOME)

新しくなるフィットのボディカラーは、モノトーンが10色、CROSSTARのみに設定される2トーンが3色となっています。新色としては「スレートグレー・パール」が追加され、同色とブラックルーフの2トーンも新設定されました。

なお、全グレードに共通して用意されるボディカラーは、プラチナホワイト・パールとクリスタルブラック・パールの2色だけ。それ以外のカラーは、グレードの個性に合わせて選べるようになっています。

ちなみに、新グレードであるRSに用意されるボディカラーは、プラチナホワイト・パール/プレミアムサンライトホワイト・パール/スレートグレー・パール/メテオロイドグレー・メタリック/クリスタルブラック・パール/プレミアムクリスタルレッド・メタリックの6色となっています。

ホンダのスポーティモデルというと、ホワイトパール系を選びたいところですが、RSというロゴにはレッドやブラックも似合いそうです。

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上級バージョンといえるLUXEもグリルを強調する顔となってイメージチェンジ

ホンダの誇る先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」は全グレードに標準装備されますが、ホンダセンシング自体も進化しています。

とくに運転支援でいえば、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)を採用したのが注目ポイントでしょう。トラフィックジャムアシストとは、車線と前走車を検知することで渋滞での低速走行時に車線の中央付近を維持する機能のこと。

現行型にフルモデルチェンジした際に、フィットはハイスピード領域でのスタビリティを増すなど、高速道路が気持ちよいコンパクトカーとなっていましたが、今回のマイナーチェンジで先進運転支援システムが進化したことで、より遠くまで行きたくなるコンパクトカーに進化していることが期待できそうです。

あとはライバルに遅れをとる燃費性能が改善されればウィークポイントは解消され、フィットがグッと輝きを増すかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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