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■まさかの時のパンク応急修理キットを検証
最近のタイヤはパンクしにくいイメージがありますが、JAF(日本自動車連盟)が2021年度(2021年4月1日〜2022年3月31日)に実施したロードサービスのうち、タイヤに関するトラブルは40万1290件。全体の救援理由で2番目に多い件数(構成比18.59%)だったそうです。
意外に多いタイヤのパンクですが、最近のクルマでは、まさかの時に応急処置をする装備としては「パンク応急修理キット」が一般的です。
ひと昔前のスペアタイヤやテンパータイヤと比べ、省スペース化ができ、タイヤ脱着などの力作業も少ないことがメリットですが、実際に、パンクをしたときにきちんと処置ができ、走行は可能になるのでしょうか?
そうした疑問を解消するため、前出のJAFでは、穴の大きさや異物の種類の違いなど、さまざまな条件でパンクしたタイヤを応急修理することができるのかを検証。
また、パンク応急修理キットを使用したことがないドライバーでも応急修理ができるのかについてもテストし、その結果を公表しました。
●パンク応急修理キットは初めてでもできるか?
パンク応急修理キットとは、一般的に、パンク修理剤とエアコンプレッサーがセットになったものです。コンプレッサーでパンクしたタイヤに空気を入れ、エアバルブからパンク修理剤を入れるタイプや、コンプレッサーで空気を入れながら、同時にパンク修理剤を注入するタイプなどがあります。
前述の通り、最近のクルマでは、スペアタイヤやテンパータイヤの代わりにリヤラゲッジ下などに装備されていますから、使ったことがない人でも見たことがある人も多いでしょう。
そして、JAFのテスト。まず、パンク応急修理キットを使用したことがないモニター3名に、取り扱い説明書を見ながら、実際に4mmの釘が刺さった状態でパンクしたタイヤの応急修理をやってもらっています。
ちなみに、参加したモニターは、ペーパードライバーのAさん、運転する機会が多くクルマやバイクが趣味のBさん、運転する機会が多くクルマの知識も豊富なCさんです。
テストは、これら3名に応急修理後、約5km走行した後、再度空気圧を調べ、完全に応急修理ができていることを確認するまでの時間を計測しています。
結果は、完了するまでの時間に多少個人差はありましたが、パンク応急修理キットを使用したことがない人でも、取扱説明書を見ながらであれば、パンクの応急修理を行うことができたことが判明。
ただし、モニターの中には「落ち着いた環境で作業できるとは限らないため外出先では不安」という声もあったそうです。
●応急処置が難しい異物の大きさや種類がある
次に、テストでは、刺さった異物の大きさや違う種類など、さまざまな条件でパンクした状態のタイヤを8種類用意し、それぞれパンク応急修理キットで穴をふさげるかを検証しました。
これは、タイヤのパンクした状態によっては、パンク応急修理キットを使用できない場合もあるためです。なお、タイヤはすべて新品で、銘柄やサイズも揃えています。
結果は、まず、くぎやねじ、ボルトなどは、タイヤのトレッド面に刺さったままであれば、一応は応急処置ができたそうです。
ただし、ささった異物の太さが4mm以上の場合、傷から補修液の漏れなどがあり、完全には応急修理できない可能性があることも判明しました。
また、異物を抜いた場合は補修液が漏れてしまい、太さ4mmのくぎでも穴が下にあると補修液が漏れ、6mmや8mmのねじやボルトでは応急修理自体できなかったといいます。
加えて、金属片などによる裂傷の場合、異物が小さければ補修液の漏れはあっても一応は応急処置ができたそうですが、金属片などが大きいケースでは、装填中に補修液が漏れ出し、応急修理はできなかったそうです。
さらに、タイヤ側面の傷の場合は、やはり装填中に補修液が漏れ出し、こちらも応急修理は不可能という結果になったといいます。
●応急修理キットを使うとタイヤ交換の可能性が高い
このように、パンク応急修理キットは、初めて利用する人でもパンクの応急修理が可能なほど使いやすいことが判明。ただし、実際の交通場面で突然パンクした場合、傷の大きさや刺さった異物などによっては、適切に対応することが難しいケースがあることも分かりました。
ちなみにパンク応急修理キットは、あくまで緊急時にとりあえず走行するためのもの。その後は、かならず自動車工場やディーラーなどで修理してもらう必要があります。
そして、もうひとつ気をつけなければならないのが、タイヤの内部に補修液を入れてしまうと、パッチを貼るなどのパンク修理ができない場合も多く、結局はタイヤ自体を交換しなければならないケースも多いことです。補修液を入れなければ、傷の大きさによっては補修できるタイヤでも、パンク応急修理キットを使用したがために、使えなくなることも多いのです。
また、補修液はホイールにも付着するので、その清掃もしなければなりません。そう考えると、パンクした場所の近所にパンク修理をしてくれそうなディーラーや自動車工場、カー用品店やガソリンスタンドなどがあれば、JAFなどに救護要請をし、レッカー移動してもらうのも手です。
また、最近は自動車保険の付帯サービスでレッカーサービスが付いている場合もあるので、それを使う手もあります。
いずれにしろ、パンク応急修理キットは後々タイヤ交換などの痛い出費がかかることを頭に入れ、本当に最後の手段として使うつもりでいた方がいいでしょう。もし高速道路や自動車専用道路でパンクした場合、応急修理などの作業は危険なので、同じくレッカーなどの救援を要請するようにしましょう。
(文:平塚 直樹)
【関連リンク】
JAFユーザーテスト 資料編
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/tire/emergency-repair
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