モンスター田嶋がスズキ車でパイクスピーク総合優勝。世界記録も樹立【今日は何の日?7月21日】

■パイクスピーク3回目の優勝を世界記録で成し遂げる

2007(平成19)年7月21日、田嶋伸博選手が米国コロラド州で開催された山岳レース「パイクスピーク(パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム)」で3回目の優勝を果たしました。1回目と2回目は、いずれも天候不良のため短縮となったコースでの優勝、3回目の2007年はフルコースでの優勝であり、しかも世界記録を樹立するという歴史的快挙の優勝でした。

2007年優勝を果たしたスズキスポーツ・XL7・ヒルクライムスペシャル (C)Creative Commons
2007年優勝を果たしたスズキスポーツ・XL7・ヒルクライムスペシャル (C)Creative Commons

●パイクスピークは、米国の歴史ある人気山岳レース

パイクスピークは、米国コロラド州ロッキー山脈に位置する標高4301mの山(パイクスピーク)で毎年アメリカ独立記念日前後に開催される山岳レース(ヒルクライム)です。初めて開催されたのは1916年で、米国ではインディ500に次ぐ歴史あるレースで、標高2862m地点をスタートし、頂上までの標高差1439mを一気に駆け上がります。距離は19.87kmでコーナーの数156、平均勾配は7%、全コース舗装路ですが、ガードレールがない部分が多く、危険を伴うレースです。

スタート地点とゴール地点の標高差が大きいため、自然との闘いのレースと言われています。天候(気温や雨風)の変化や気圧、酸素濃度の変化が大きく、マシンとエンジンには特別なチューニングが必要です。

●レーサー活動と並行してモータースポーツ事業にも尽力

田嶋伸博氏は、1950年に石川県で生まれて1968年にレースデビューし、1990年代から2000年代にかけて「全日本ダートトライアル選手権」で9回のチャンピオンに輝くなど、国内外のダートトライアルやラリーで活躍。その果敢な走りから「モンスター田嶋」と呼ばれますが、このニックネームは1979年のサザンクロスラリーに参加した際に日本からモンスターがやってきたと紹介されたことに由来するとされています。

レーサーとしての活躍以外にも、1983年に「モンスターインターナショナル」を創業。また、1986年にはスズキと提携して「スズキスポーツ」を設立し、実質的にスズキのワークスチームの監督として指揮を取りました。現在は、自動車販売や開発、用品の販売など、また再生可能エネルギーの研究やEVの普及に尽力するなど実業家としての活動も多岐にわたります。

●1000PS超のモンスターマシン「XL7・ヒルクライムスペシャル」で世界記録樹立

モンスター田嶋が、初めてパイクスピークに参戦したのは1988年のこと。以降、毎年「モンスタースポーツ」を率いて参戦し、1995年にスズキスポーツ「ツインエンジン・エスクード」で天候不良による短縮コースで初の総合優勝、2006年にも同じく天候不良による短縮コースで「エスクード・ヒルクライムスペシャル」で2回目の総合優勝を飾ります。

スズキスポーツ・XL7・ヒルクライムスペシャルの走行風景 (C)Creative Commons
スズキスポーツ・XL7・ヒルクライムスペシャルの走行風景 (C)Creative Commons
スズキスポーツ「エスクード・ヒルクライムスペシャル」の走行風景 (C)Creative Commons
スズキスポーツ「エスクード・ヒルクライムスペシャル」の走行風景 (C)Creative Commons

そして迎えた2007年のこの日、スズキスポーツ「XL7・ヒルクライムスペシャル」を駆けて、フルコースでの当時の世界記録10分04秒06で、3回目の総合優勝を果たします。ベース車「XL7」は米国で発売されているスズキのSUVですが、レース用にパイプフレームで構成された軽量なシャシーに、3.6L V6 ツインターボエンジンをミッドシップに搭載。ハイチューニングされた4WDマシンは、最高出力1007PSを発揮する、まさしくモンスターマシンでした。

その後も参戦を続け、2011年まで7連勝、2011年には世界で初めて10分の壁を破る快挙を成し遂げました。これらの功績が認められ、2016年に日本人として初めてパイクスピークの殿堂「ホール・オブ・フェイム」入りの栄誉が与えられています。


レーサーとしてモンスターと呼ばれるにふさわしい実績をもつ田嶋氏ですが、一方モータースポーツに関わる様々な支援活動に尽力し、最近ではEVベンチャー事業でも活躍するモンスター実業家でもあるのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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