姿を消す走り屋の聖地「ランド坂」のヘアピンカーブ

■ヘアピンカーブは2021年9月に廃止

東京都道・神奈川県道124号読売ランド停車場線は、東京都稲城市の榎戸交差点から神奈川県川崎市麻生区の高石歩道橋交差点に至る約3.8kmという短い都道・県道です。よみうりランドの入口前を通るのでランド通りとも呼ばれています。

Google ストリートビューではヘアピンカーブをまだ見ることができます

よみうりランドは丘陵の上にあるため、このランド通りはよみうりランドを頂点とした勾配区間となっています。このうち京王読売ランド駅付近からよみうりランドに至る区間には、かつて住宅がないワインディングロードがありました。

途中にはヘアピンカーブもあって、ランド坂と呼ばれる4輪、2輪の走り屋スポットとして人気でした。

しかし2021年9月27日に、ランド坂付近の大部分が付け替えられて、ヘアピンカーブが廃止されました。この記事を書いた2022年7月10日の時点ではまだGoogle ストリートビューでもヘアピンカーブを見ることができますが、いずれ更新されて見られなくなることでしょう。

●新道は巨大なループ線

稲城よみうりランド坂トンネルの入口付近にある歩行者・自転車案内図

付け替えられたランド通りは、大きなループ線となっています。 ループ線は急勾配を緩和しながら短距離で高度を稼ぐために、らせん状に道路を敷設する方法です。国内では東京都道11号線のレインボーブリッジ西側や、静岡県にある天城峠の七滝高架橋が特に有名です。

ランド通りのループ線はランド坂の途中から右に大きくカーブしています。しかし、ループ線によく見られるような円形ではなく、途中に直角コーナーや直線があるなど、かなりいびつな形をしています。その様子は、地図でも確認できますし、稲城よみうりランド坂トンネル付近に設置されている歩行者・自転車案内図でもよく分かります。

●新旧のランド通りを比べてみました

拡幅に備えて切り拓かれた現行のランド通り

では、新しいランド通りをGoogleストリートビューの旧道と比べてみましょう。 実は新道と旧道が分岐する手前の京王読売ランド駅付近から道路の拡幅を行うほか、新たな道路が分岐する予定となっています。そのため周辺の住宅が立ち退いていて、雰囲気がかなり変わっています。

新道と旧道の分岐点は、よみうりランド坂下バス停付近です。新道は右にカーブしながら稲城よみうりランド坂トンネルに入っていきます。そのため丘陵を切り拓きました。旧道は左にカーブしていきますが、事実上、住宅数件分の道となっていて、その先は盛土により消滅しました。

●ループ部分は今後造成

ループ部分の上下は、稲城よみうりランド坂トンネルで交差しています。緩い右カーブで勾配を登りながらトンネル・掘割を抜けると、T字交差点の標識が見えてきます。ループ線は稲城駅方面からの道路に突き当たる形になる予定ですが、現時点では右直角コーナーとなっています。

直角コーナーの先にある緩い右カーブを通過すると直線区間に入ります。直線は稲城よみうりランド坂トンネルの真上付近で終わって、この先は暫定区間です。 暫定区間カーブしながらの下り坂となり、旧ヘアピンカーブに繋がっています。

●ヘアピンカーブの今と今後は?

暫定区間が繋がる旧ヘアピンカーブは直角コーナーとなっています。つまり、ヘアピンカーブの一部は今でも走ることができるわけです。旧ヘアピンカーブからは、よみうりランド手前までは従来通りの坂道となっています。 廃道となった区間は谷間に僅かに残っています。この谷は盛土によって整地され、ループ線の直線とよみうりランドの手前が真っ直ぐ繋がる予定です。

今後、ヘアピンカーブ付近と廃道、暫定区間は完全に姿を消すことになります。

多摩丘陵にはいくつものワインディングロードがありましたが、近年、造成によって姿を消しつつあります。ランド坂もすでに多くの部分が消えましたが、完全に消滅する日も近づいてきています。

ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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